見出し画像

平べったい顔のお義母さん。

6月15日より、フランスでは、コロナ禍によるロックダウンの解除第3段階に入ったもよう。パリでは、22日の予定だったのが少し早まって、飲食店の通常営業も再開されました。幼・小・中学校も、22日から全員通学。

ということは、小学生のエマとリリーは晴れて、学期最後の1週間のみ、学友たちと一緒に過ごすことができるように。本人たちにとっては、うれしいような面倒くさいような、複雑な心境のよう。とはいえ、お友達に学校で会えるのはとてもうれしいと、よろこんでいます。

けれど、そうなるのはまだ数日あとから。今週はまだ週に2回、時間短縮での登校です。いつもはパパ、マキシムが、朝8時15分に家を出て、夕方16時20分に学校へお迎えに行きます。ただ今日明日と明後日は、テレワークとはいえ、マキシムがお仕事で席を外せない…となり、普段、あまりこういったお世話はしないイチコが、やむなくお迎えにあがることとなりました。

とはいえ、ちょくちょく学校へのお迎えに付いて行くこともあるイチコ。学校へは難なく到着。お姉ちゃんエマとともに、リリーの教室のドアの前で待っていました。と、ドア越しにリリーの顔がチラリと見えて、「リリー!」と手を振るとリリーもこちらへ手を振る。そのまま近づいて行こうとしたところ、先生のひとことで一時停止。

「あのー、えっと、リリーちゃんですか?お迎えのお名前登録はされていますか?」

そう、いつもお迎えに来るのはパパかママンなので、先生にイチコの顔を覚えられているわけもなく、しかも子どもとは似ても似つかない、平べったい顔の人が来たものだから、本当に引き渡しても良いのかどうか確かめられたのでした。正直、イチコはその辺どうなってるのか全然わからない。と、すかさずエマ、

「登録されてるかどうかはわからないけど、彼女はリリーのお義母さんだから問題ないよ!」

イチコもあわてて、

「彼女のパパと一緒に、たまにお迎えにきています」

と応えると、先生は

「…なら、問題ないですね。リリーちゃんおいでー!よい1日を」
「ありがとうございます。よい1日を」

と、イチコも応えて、ホッと胸を撫で下ろす。またもやエマに助けられながら、無事にお迎えの使命を終えることができたのでした。

後からマキシムに確認すると、イチコの名前はすでにお迎えに来る人のひとりとして登録済みだとのこと。そうだったのか、知らぬ間に。あ、いや、名前を書く際にひとこと言われたのかもしれないけれど、イチコはすっかり忘れていました。無頓着すぎるイチコ。というか、私たちにおける義母とはなんぞや、と自問するイチコ。とまあ、それは置いておいて、なんだか今日は、子ども誘拐犯になったような気分を味わってしまった。

その辺はリリーも無頓着のようで、イチコがホッと胸を撫で下ろしながら「学校楽しかった?」と聞くと、「うん!楽しかった!」と無邪気に、アリをたくさん捕まえてポケットに入れてあるという話をはじめ、イチコはまたギョッとする。家に着いてポケットを確認すると、リリーは

「アリ、全部死んでるー!」

と言いながら、昨日からタッパーの中で飼っている庭にいたなんだかよくわからないそのへんの虫に、エサとしてアリをあたえておりました。あれ、昨日、アリさんかわいいー!とやたら言っていたような気がするが、あの光景はまぼろしだったか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?