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お誕生日おめでとう、パパ。

コロナウイルスで外出規制がまだまだ続く中、イチコのパートナー、マキシムのお誕生日が今年もやってきました。今回は、子どもたちも一緒にその日を過ごすことができるとあって、どのようにお祝いをするか、子どもたちはここぞとばかりにはりきっています。

イチコは、基本的に、お祝い事などは過剰にせず、ささやかに、気持ちさえあればそれで良い人(単に面倒くさがりとも言う)。であるからして、パパの誕生日にかける、子どもたちの煮えたぎる情熱を目の当たりにして、正直なところ「パパおめでとう」だけでええやんタイソウな、と思うのだけれども、イチコ、それだけは口が裂けても言えない。だって、彼女たちはパパが大好き。その一心なのだから。

さて、時は1ヶ月(もしくは2ヶ月?前すぎてイチコは覚えていない)前にさかのぼる。妹リリーを習い事に送り出し、それが終わるのを待っている時に、お姉ちゃんエマが切り出したことに、ミッションは始まる。パパはその時、リリーに付いているのでその場にいたのはイチコとエマのふたりだけ。

「パパの誕生日プレゼントどうする?」

1時間半の待ち時間ぶっ通しで《今、パパに必要なものは一体なんであるか》をふたりで議論し合い、Amazonで検索をしまくった。イチコは、エマの意見を聞きながら、頭の中で予算の計算もしながら(これ大事)、誕生日プレゼントの大方の見当をつけることに成功する。

その2週間後、パパがテレビに夢中になっている隙に、今度はリリーが、別の部屋に一緒に来るよう、イチコに手招きをした。

「パパの誕生日プレゼント、なにがいいかわからないよ。一緒に考えて!」

そこから約1〜2時間、部屋の隅でコソコソひそひそ…。リリーは自分のこだわりを強く持っている子。最初はイチコの提案をことごとく否定されて骨が折れたが、最終的には、リリーのやりたい事を引き出すことに成功。あとは、持ち前の想像力と行動力で、彼女は自由に表現できる。大好きなパパのための手づくりプレゼント。

その後も、エマの手づくりプレゼントに必要なパパの写真入手、リリーと重ねるプレゼントの創作会議、また、どんなケーキを作ろう、誕生日当日の進行は、などなど…。お祝い計画は秘密裏に進む。

あ、もうお気づきかもしれないが、イチコ自身はマキシムに対して特別なものはなにも準備していない。Amazonでポチッとな、エマとの議論を経て決めたプレゼントを注文しただけである。コロナウイルスの影響で、無事家までそれが届けられるか少し心配したけれど、きちんと予定通り届きました。

そんなこんなで、誕生日当日前夜。明日の朝からケーキの仕上げを一緒にやろう、と子どもたちと約束をして、おやすみを言った後、イチコはケーキの下準備。ミルクレープとかゆう、クレープを何十枚も焼かないといけないケーキ、なんでこんなものを選んだのだろうと少し後悔しつつも、まあ、そう何度もあることじゃないし、と根気よく焼き続ける。マキシムはその横で、イチコの好きなチーズケーキをちゃっちゃっと作り終えてから、コメディ番組を楽しんでいるふりをして、まだケーキ作りに勤しんでいるイチコを気にかけていた。マキシムは、イチコなんかよりもケーキを作るのがとても上手なのだ。なんなら、このミルクレープもお願い!と、言いそうになったがそれはやめておいた。

そして翌朝8時半。

まずは子どもたちが一番に起きて、お祝い準備を始める前に、学校の課題をやっつけていた。コロナウイルスで学校休校とは言えど、バカンスではありません。「ケーキの仕上げ作業の前に学校の課題を済ませておくね!」と、彼女ら自身で決めてやってのけている。いつも思っているけれど、しっかりしておりますね、あなたがた。

その後9時半になってからイチコはこそっとベッドを抜け出し、ケーキの仕上げ作業に向かう。カスタードクリームを作って、クレープ→クリーム→クレープ→クリーム…を、エマと協力してひたすら重ねる。最後に、Nuteraで「Papa M(マキシムの頭文字)」を書いて、エマとリリーそれぞれ「❤︎」も描き加える。はい、できあがり。

そのあとは、お昼12時に起きてくるパパを盛大に迎い入れるべく(12時まではしっかり寝ててね、と子どもたちに昨夜念押しされたパパ)、部屋を飾って、お手製紙吹雪を作り終えたら、食卓テーブルに特別のテーブルクロスを敷く。ハート型のナプキンをがんばって4つ折ったら、きれいに並べた食器の横に添えて。音楽も♪ハッピーバースデーがすぐに流せるようにセッティング。プレゼントたちは、食後のデザートの時にすぐパパに渡せるように、テーブルのそばに置いておく。あとは、パパを待つのみだ!

ギシッ、ギシッ、ギシッ…

お昼12時。リリーが起こしに行って、ゆっくりゆっくり、パパが階段を降りてきた。

ギシッ、ギシッ…。

子どもたち「ジャジャーン!」
♪ハッピバースデ〜トゥ〜ユ〜ハッピバースデ〜トゥ〜ユ〜
(なぜか英語バージョン)

マキシムの顔はすでに赤く、目は涙でゆらゆら揺れている。

子どもたち「Joyeux anniversaire papa !(お誕生日おめでとうパパ!)」
♪ハッピバースデ〜トゥ〜ユ〜ハッピバースデ〜トゥ〜ユ〜

キャッキャと大はしゃぎで、自作の紙吹雪を盛大にパパに投げかける子どもたち。と、彼らの写真を撮るイチコ。リリーはあまりにはしゃぎすぎて、すべての写真で、彼女は残像しか写っていなかった。
♪ハッピバースデ〜ディアパパ〜ハッピバースデ〜トゥ〜ユ〜


その後、お昼ごはんを食べた後に、ミルクレープにのっけたロウソクをパパが吹き消して、娘たちの心のこもったプレゼントにまた目を潤わせる。エマからは、パパとエマとリリーの写真をきれいに貼ったお手製音楽ノート、心のこもったメッセージ付き。リリーからは、リリー作の絵本。イチコからは、エマと厳選した小型マッサージ機。「ありがとう」と、3人にキスをするマキシム。

あとは、みんなでボードゲームや映画を見たりしてのんびりと過ごした。夜は、マキシムが作ったチーズケーキを食べた。おいしかった。

いっぱいパパと遊んだその日、寝る前のビズをする時に「Tu étais content ?(うれしかった?)」とパパに聞くエマ。「とてもうれしかったよ」というパパの返事に、エマもリリーもとてもうれしそうでした。今日はとても良い夢が見られるね。


さてイチコはというと、この数日の子どもたちの情熱にやられて大変疲れてしまいました。慣れないことはするもんじゃない。でも、マキシムがあまりにうれしそうだったので、良しとする。寝る前に「いっぱいいろいろとしてくれてありがとうイチコ」とマキシムが言うので、「私はなんにもしてないよ、子どもたちにありがとうだよ」とイチコ。そしたらまた、涙目になるマキシム。まったく、こんな娘たちを持ってあなたはホントにしあわせものだよ。それに泣きすぎだよ。でも許すよ。

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