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重大なプレゼンの影で勃発、よくある事件。

イチコはフリーランス。であるからして、お家が事務所。デスクも正味どこだっていいのです。なので今日も、食卓テーブルでお仕事をしています。太陽のやさしい光が届くこのスペースは、家の中でいちばん、気持ちよくいろんなものと向き合えるのです。子どもたちがいる日は、お昼ごはんのためにその都度片付けないといけなかったけれど、マキシムによる「平日はキッチンの小さいテーブルで食べようよ。その方がめんどうじゃないでしょ」というナイスな提案により、より気楽に使えるようになりました。

たまにはどこかのカフェでもいいのだけれど、このコロナウイルスご時世、それは叶いません。外出規制もさらに厳しくなったしね。もしくは、食卓から見える小さな庭に出てみるか…いやあ、これがまだ、外で長居するには、寒いんだよなあ。

いつか、お家のリノベーションができる日がきたら、イチコの小さなお仕事デスクを設けられたらいいな、と思うけれど、それはまだまだ先のこと。パリより少し郊外とは言えど、ここの工事費は高いのです。

この間も、嵐のせいで家の雨どいが一部、落ちてしまったのだけれど、直してもらうよう業者に見積もりを依頼したら、なんと。1600€HTだって。落ちた雨どいを付け直してくれ、ただそれだけなんだけどね。なんだか、設置作業以外にも、あれも必要これも必要、とか言っていろいろと付け足して、この価格のようなのです。マキシムと「この修理のためにこれはさすがにね」と、言いつつも、とりあえず保険会社に問い合わせてみて、「嵐のせいやから保険おりまっせー」ということになれば、修理をお願いしようか、ということに。業者も、保険を見越しての見積もりなんだろうけれど、それにしても、この価格を見たときは目ん玉飛び出たよ。

ただ、その保険会社からの返事は、おとといにくれるはずなんだけれども、まだない。フランスにいると、何かにつけてよく起こることではあるのだけれど、例のごとく、こちらからまた催促の連絡をしなければならないのかな。まー、今日も晴れだから、まあいいか。

と、思うやいなや、お姉ちゃんのエマが「ちょっと庭に遊びに行ってくるー!A tout de suite ! 」と言って、ひとりで庭に出て行きました。あれ、ついさっきまで姉妹仲よく、部屋で何かしていたのになー。妹のリリーは一緒に遊ばないのかなー。

というのも、よくあること。ケンカをしたのでした。さて、エマの話によると、今回のケンカは次のとおり。

もう使っていないたくさんあるおもちゃを、私たちより歳の小さい、いとこへあげるために仕分けをしてたの。で、私がこれもいらない、これももう使わないって、リリーのために仕分けてたら、リリーが、カンシャクを起こしはじめちゃった。もう私たちには小さすぎるおもちゃなんだよ?しかも部屋にいっぱいあふれてるのに!でも、ついにリリーが怒って手をつけられなくなったから、片付けはやめて、部屋から出てきちゃった。こういう時は、何もせずにそっとしておいた方が身のためだから。いつものようにね!今、リリーは部屋でひとり、怒ってるよ。(エマ談)

なるほど。一緒に片付けとは、えらいなあ。でも、もう小さすぎるおもちゃかもしれないけれど、リリーにとっては、まだたくさん思い入れのあるおもちゃたちだったのかもしれないね。

しかしどうりで、彼女らの部屋がある屋根裏から、床をドン!ドンドン!!と踏みならす大きな音が聞こえておりました。そのすぐ下の部屋で、スカイプによる重大なプレゼン中の、パパ。邪魔になっていなかったらよいのだけれど。この午前中、プレゼンへのストレスで、パパの手はとても冷たくなっていたんだよ。「緊張するー!」って言って、これまで長い時間と労力をかけて準備してきたプレゼンのことで、彼の頭はいっぱいだったんだよ。まあでもそんなこと、子どもたちにとっては知ったこっちゃない。

ひとり、部屋にこもっているご立腹のリリーが少し気になるけれど、エマの教えどおり、今はそっとしておきます。でなければどうなるか、もうすでに身を持って幾度も経験をしているイチコ。先輩のことばには、したがっておいて損はないのである。

はてさて、そんな午後を過ごしたイチコに、重大なプレゼンを終えたマキシムは晴れやかな笑顔を見せてくれるでしょうか。まだ部屋でひとりこもっているリリーのゆくえは? そして、落ちたままの雨どいの運命は。

それはまた、つぎのおはなし。

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