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【短編】六番目の男

栗栖川数子は今日もファミマの前に立っていた。
SNSで知り合ったお友達と会うためだ。
決して浮気なんかじゃない。
SNSで同じ趣味を持つ仲間と、オフ会で語り合うことが楽しいのだ。
数子はスイーツが好きだし、花の写真を撮るのも好きだし、野菜の菜園も好きだし、神社仏閣の写真を撮るのも好きだ。

そんな共通の趣味を持つ仲間たちに会って、お茶をしながら趣味の話を語り合いたいのだ。

でも、今日これから会うのは男性。少しだけいつもより脈拍が上がっている自分に気づく。
HNは『六助』さんと云う。

不意に肩を叩かれた。

「トリスさん、待った?」

「いえ?!待ってません。あ、それに言ってませんでしたが、トリスは私の娘の名前です。私は栗栖川数子と申します。旧姓は天井数子。今まで黙っていてごめんなさい」

「やはりそうでしたか。なんとなく気づいてましたよ。僕はアイコンのまんまで『六助』、御手洗六助です」
そういうと六助はいきなり数子の手を握った。
「きゃっ」と数子は小さな声を出す。
ハズキルーペをお尻で踏んづけた時のような小さな『きゃっ』だ。
六助の手から僅かな電流が流れたのだ。

「六助さん、いったい何をするの?」

「トリス...いや、数子さん。あなたはSNSのある企画で好きなフォロワーを五人選んでいたが、そこに僕は入っていなかった。僕がコメントするとあなたは六番目だと言われたけど、僕は調べたんだ。『残念ながらあなたは六番目です』と言われた人は他に三人居たよ。僕は悔しくて朝まで眠れなかったんだ。そして、僕は怒ると身体から電流を流すことができるんだ」

そういうと六助はまた数子の手を握った。

「きゃっ」
電池仕掛けのビックリ箱くらいの電流が流れる。慣れるとむしろ心地良いくらいの微電流だ。静電気のドアノブの方がよっぽど怖い。
「ごめんなさい。少し配慮が足りませんでした。でも、もう気が済みましたか?」

「いや、僕は今度、特殊能力選手権に出る予定だ。トリスさんも出場すると聞いている。そこで次は娘さんを倒してやるよ」
そう言うと六助は颯爽と立ち去った。

数子は少し申し訳ないことをしたと思いつつ、蚊に刺されたような気分であった。


(ぱひゅん)


BGM



また今度!



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