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産地とは何か?生産者から考える - 移住・新規就農(3/3)

まず、簡単にまとめる。

より有利な販売を求めて流通を強化していった結果、集約され組織化されたもの。

生産者にとっての産地とは、自治体や組合などの周辺組織と共に選択と集中を行った結果に行き着くものである。
有利な販売を目指すうえで、最も重要なのが輸送の効率化で、これは消費地から離れている地域ほど強く表れる。
産地の作目は気候風土などで特徴が出やすい。ただし最近は、売上や育てやすさを基準にする傾向が強い。

では、解説に入ります。



産地と組織化はほとんど同じ意味

一般に産地というと、ある品目を盛んに作っている生産量の多い地域を指している。
生産量が多くなることで流通がしやすくなり、販売が強化できる。販売が強化できると、地域としての収益が強化される。地域の収益が強化されると、地域の生活が向上して税収が上がる。

こういった一連の流れから、産地化が進む過程で行政との一体化が進む。
行政は産地化された品目を支援するようになるが、支援する先が個々に分かれていると支援の効率が悪い。その為、農協のような組織化されているところと連携がすすむ。
結果、組織に属すことでの恩恵が増えて組織化が一層進むことになる。

行政は出来るだけ多くの人々を支援しようとするので、小規模農家が集まっている組合のような組織と相性がいい。その為、支援自体は広く一般に間口を開いていても、手続きの取りまとめや情報の伝達で組織側が有利になっている。

最近では産地化は行政主導で行われることがほとんどなので、こういった連携は促進(普及)の手段にもなっている。


生産・販売にとって輸送が一番重要

農作物のような手に取りやすい価格帯の販売にとって、一番重要なのは流通で、その要が輸送である。
売価が安い分、輸送費の負担が大きい。

特に輸送が発展した現在では、生産地と消費地に距離がある。
発展した都市部周辺の農地は商業地や住宅地、工場などに姿を変えていき、仕事が増え、移住が進み、人口が過密になっていく。
収入面や労働環境でも農業従事者より勤め人の方が好まれ、農業人口が減っていく。

現在、農業が残っている地域は、こういった都市化に取り残されたところがほとんどだ。
つまり、農業を振興している地域には消費者が少ないのである。

したがって、農業地域は地元では消費できない過剰な生産を行って、それを都市部に供給することになる。
輸送ができなくなれば、販売先を失うことになる。

輸送コストを下げるためには、専用の輸送用トラックを手配して、それに満載の商品を詰め込み、できるだけ効率的に目的地に運ぶ必要がある。
また、その輸送トラックと出来るだけ長期間の契約を結び、遊ばせないことも重要だ。

これを成立させるには、とにかく生産量が必要になる。
産地化は地方の必然的な流れなのだ。

産地化が進み輸送が発展すると、相乗りでコスト削減できるため、周辺作物も発展する。
例えば、夏に出荷する産地では、冬の輸送を何かで確保できると年間を通して契約できるので、コスト削減につながるといったこともできる。

組織的な連携が必要になるが、中心となる作物があるというのはその作物以外にもメリットがある。
繰り返しになるが、産地と組織化は密接にかかわっている。

また、日本は南北に長い領土なので、地域による気候のずれが大きい。
輸送距離を長くできるほどに、この気候のずれを利用できるようにもなる。
例えば、雪が降って生産ができない地域に南国から輸送するといえば、理解しやすいのではないだろうか。


最近の産地化品目は売上で選択されている

農業従事者の所得向上が叫ばれている。
農業者が増加しないのは、所得が低いからで、所得の向上すれば仕事の選択肢に入れてもらうことができ、農業者が増えるという理屈である。
実際には、自営業者とサラリーマンでは所得の計算方法がそもそも異なるので、申告している所得と生活水準は必ずしも一致しない。

それはさておき、所得の向上を目指す一環で、行政主導の産地化は所得の上がりやすい品目を推進する傾向がある。

また効率化による収益向上を目指すという観点から、旬に関係なく、出来るだけ長い期間同じ品目を作り続けるという傾向も強い。
キャベツのような、一つの苗から一つの成果物を収穫する品目でも、品種構成を工夫して収穫時期をできるだけ分けて長く収穫しようとする。

これらは栽培技術、生産効率、輸送効率などを含めて、総合的に収益効率が上がりやすいため、一般的な産地化の流れになっている。

他にも、同じ栽培面積の場合、最も単位面積当たりの売り上げが高い品目に人気がある。
例えばトマトは他の品目に比べてもダントツで売り上がる。トマトの産地が増えているのはその為だ。
儲かるかと言われると別の問題だが、売り上げが高いのである。

売上は税収(具体的には消費税)と連動するし、手数料ビジネスをしている中間業者にとっても利益に直結する。
農業の関連組織にとっては最も重要な項目である。

話は変わるが、産地化が進むと消費が少ない野菜類の生産は減少、または消滅する傾向にある。
一方で京野菜を代表するような観光消費を目指すような限定品目も出てきているが、これは歴史的な背景がない地域では発展が難しいし、消費量も少ないのでほとんどの農業者にとっては無縁だ。



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