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カナダで出会った、農家という言葉で表現しきれない人たち

日本を出国したのが7月18日。1ヶ月がちょうど経った。いろんな非日常を経験している。忘れっぽい性質なので、吸い込んだ分だけ吐き出して咀嚼していかないとと思った。パートナーとのラジオも始めた。日記的なメモも残しておく。

旅に出ることに決めた背景など、はじめに書いた方が良いだろうことは色々と思いつくのだけど、それをし出すと書きたいことに行き着く前に息切れしそうなので、いまはやめておく。淡々と書きたいことを書く。

一カ国目 カナダ

一軒目のWWOOF先。Tethis islandという小さな島。
バンクーバーからフェリーでバンクーバーアイランドに渡り、さらにフェリーを乗り換えて40分ほど渡ったところにある。瀬戸内海に浮かぶ小さな島々のイメージが近いか。
人口500人ほど。バンクーバーに住む人たちに言ってもほとんどの人が「聞いたことないわ…」という反応。

コミュニティセンターに貼ってあった手書きの地図

なぜそこを滞在先に選んだか。一つは、WWOOFホストのプロフィール欄に「CSA(Community Supported Agriculture)」というキーワードがあったこと。もう一つはYoutubeの動画で農場の雰囲気が伝わってきたのと、Instagramで色鮮やかな野菜の写真を投稿していたこと。趣味でなく仕事としてやっている感じが好印象だった。
カナダの地形も交通事情もよく分かっていない段階だったので、アクセスのしやすさは考慮していなかった。というかそこまで調べる気力がなかった。蓋を開ければかなり行きにくい場所にあって、現地に暮らして長いアルフレッド(パートナーのダンス仲間)のサポートがなければ行き着けなかったかもしれない。乗り継ぎのためにタクシーに100ドル払った。

農場でガッツリ働いて色々学びたい!と前のめりな私に対し、パートナーのヒロさんは「のんびりしたいなぁ。あんまり働きたくないんだけど…」と、当初やや引き気味だった。
12日間の滞在を終える頃には(正確には3日目くらいの時点で)、ヒロさんの方が「もっとここにいたい!帰りたくない!」と、すっかり気に入ってしまった。

猫のジェイクとじゃれるのが日課


肉を食べない生活

滞在先は、推定50代前半の夫婦と22歳の息子の3人家族。エリザベス(母)は時々は肉も食べるゆるめのベジタリアン。ただし玉ねぎはキライ。ノア(父)はほぼビーガン。3年ほど前から体調を考慮してビーガンになったと言うが、パスタが好きだし隙間時間にチップスをつまんでエリザベスからよく睨まれている。息子のフィンが最もストイックなビーガン。朝5時起きで筋トレをし、一日中畑仕事をこなす。日差しのキツい西海岸で帽子も被らず、ほぼ上裸(筋肉バキバキ)。

夜は家族と一緒に食事をとる。調理は当番制。一緒に食べるので自然と我々もビーガンな食事になる。朝と昼は「冷蔵庫や畑から好きに食材を使って構わない」と言ってくれるのだけど、当然冷蔵庫の中に肉はない。この小さな島にスーパーはない。道の駅のような無人販売所があるけど、冷凍肉が高すぎて買う気にならない。

使い慣れている調味料もないし、唯一持ってきただしパックも使えない。それなりに料理好きを自負していたが、肉、魚、玉ねぎ、卵、味噌、みりん、酒がなければ私の戦闘力は圧倒的に弱いことに気づく。
ホストたちと食事をしながら、なるほどこういう料理ができるのかと理解していった。

ノアの生春巻き、超絶美味しかった。シラチャソースとピーナッツバターを混ぜたソースで
20年ほど前にインドに暮らした経験のあるエリザベスのカレーは絶品だった
忙しい日の夕食。ぱぱっと作ってくれた

何より体調がいい。猛暑(と言っても乾燥地帯なので日本のように息苦しい暑さではない)のなか外にいるのでカロリー消費が激しく、朝・昼・夜とたくさん食べるのだけど、お腹がスッキリしている。消化が早いのがよく分かる。コンブチャも美味しくてガブ飲みした。
ベジタリアン、いい。

我々作のロールキャベツ(タネはニンジン・インゲン・カリフラワー)と焼きおにぎり。好評で安堵


犬と猫が超絶かわいい

日本に戻ったら鶏のいる生活をしたい。その世話の仕方を学べたらいいな。と思っていた。Jollity Farmに20羽ほどの鶏がいてとっても可愛らしいのだけど、それ以上に犬と猫がかわいすぎた。うまく言葉で説明できないけど、かわいすぎた。なんというか、心が通じている感覚がある。とりあえず毎日もふもふした。朝のニュース番組でよくある「今日のニャンコ」みたいな視聴者投稿コーナーにも、インスタで時々流れてくる動物の動画にも全く興味がなかったのだけど、今なら分かる。

ジェイクは自分の可愛さを分かってる節がある。行動がいちいちあざとい
絶対わかっててやってる
ジョーとリップはよく二匹で一緒に行動している。家族のことが大好きでたまらん様子
リップ(♂)がベタ惚れしている、ご近所のナラ(♀)。ヒロさんも虜になった


コミュニティを支える農家

週に一度、宅配業務がある。ノアに島案内を兼ねて連れて行ってもらった。自分たちのプロダクトだけでなく、提携しているファームの牛乳、普通のスーパーで買ったと思しきトイレットペーパーやアイスクリームなどもある。

道沿いにボックスが置いてあるのでそこに入れる

ここしばらくはお年寄りや外出が難しい世帯に限り、動ける人たちには直接取りに来てもらっているそう。なるほど、だからこの家には毎日のようにいろんな人が出入りしているのか、と合点がいった。この家では人の笑い声がよく聞こえる。

さらに毎週土曜日は敷地内でマーケットを開く。先述の無人販売所でもいくつかの野菜は購入できるが、島外から運んだであろうアボカドやリンゴなど品数は少ない。島の人たちにとって貴重な買い物の場所だろう。

10時のオープンまでに急いで準備をする

CSA自体は詳しくないが、一般的に地域支援型農業と訳され、コミュニティで事前に会費を出して農家の所得を支えながら農産物を受け取る仕組みのはず。つまりリスクの高い農業を営む農家を地域で支えようという趣旨だと理解している。ここでは逆だ。農家がコミュニティを支えていた。

遊びながら暮らす

私たちが滞在していた時に、フランス人男性と日本人女性のカップルがトレーラーハウスでJollity Farmに越してきた。

まだ完成していない手作りとレーラーハウス。休日にトンカントンカンやっていた

私たちの住まいは家の1階の空き部屋。夫妻は2階に自室があるとは言え、限りなく生活が近い。私たちが離れた翌日には次のWWOOFerが来るらしい。さらにトレーラーハウスの二人もいる。人を受け入れ続けて疲れないんだろうか?

ノアは水を引いている場所を「プールにするんだ、ボートを浮かべたら面白いだろう?」(ウィンク⭐︎)と言いながら溜まった砂をかき出し始めるし(手伝った)、エリザベスはエリザベスで経理全般を担っていて補助金の書類作成やらで忙しそうなのだけど合間にパンを焼くし自宅用コンブチャの管理に手を抜かない。お風呂の改修もこの冬には進めるんだと言う。二人とも、なんだかずっと楽しそうに何かをつくっている。

はたから見ればもうちょっと効率化できる気もするし(発注書がアナログすぎて笑った)、「農業一本じゃ食っていけねぇのよ」という割には悲壮感がない。毎日ドタバタやってるんだろうな。それがいいな。ずっと続いていくものだから、急がない方がいい。

WWOOFは農家の手伝いと食事・寝床の提供を交換することを基本とした交流プログラムだ。野菜の収穫(ニンニク、ケール、ジャガイモ、ラディッシュ、インゲンなど)、草抜き、ピクルスづくり、サラダセットの包装、鶏小屋のネット張りなどなど、いろんな経験をさせてもらった。2週間ほどしか滞在しない人間に対して仕事を教えるのはよほど労力がかかるだろうと思う。それでもあえて同じ仕事を繰り返させず、いろんな体験をさせてくれた。そこに彼らの在り方がまるっと表れている。
日中は暑すぎるから、と休憩時間を長くとってオススメのビーチに連れていってくれたり、島民たちとの交流の場にも混ぜてくれたり。彼らの全く自然体なホスピタリティは一体どこから湧き上がってくるのだろう。某I丸邸に滞在する娘たちもきっとこういう気持ちだろう。

ここに来れてよかった。

入口。人が入ってくるとリップたちが超吠える
平日の真っ昼間から泳いだビーチ。牡蠣殻で溢れていた
海賊船のような乗り物で旅するサーカス団によるOPEN  DAY
火傷をしたら「アロエ塗っとき!」と切ってくれた。これがまたよく効いた
突如始まるブレイクダンス講座。シェアできることがあるのは羨ましいな
島に住んでいるANNの著書。島民向けにお話会を開いていた
我々の開発したJollityサンド。美味しすぎて後半の昼食はほぼこれ


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