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経営戦略のプロが「マズローの欲求5段階説」で説く! 危機時に伸びたビジネス&今から伸びるビジネス

多くの業界からたくさんのものを奪った、新型コロナウィルス。

私たちの生存も生活も脅かされるような「危機時に伸びるサービス」に共通点はあるのでしょうか?

ビジネススクール「グロービス経営大学院」の教員として、マーケティング、経営戦略、管理会計などの分野で教鞭をとる嶋田毅さんへ寄稿していただきました。

嶋田先生は、人間性心理学で有名なマズローによる「マズローの欲求5段階説」に当てはめて解説してくださいました。「危機時に伸びるビジネス」には、再現性あるものがいくつもありそうです。

「マズローの欲求5段階説」で、コロナ時代にこれから躍進する意外なサービスの予想もしてくださっています。

嶋田 毅(しまだ・つよし)
東京大学理学部卒業、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計160万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」のプロデューサーも務める。また、グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、ビジネスプラン、管理会計、自社課題などの講師を務める。著書に、『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『MBA心理戦術101』 などがある。
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新型コロナウィルスは、多くの業界に好ましくない混乱と影響を与えました。特に、営業自粛を余儀なくされた飲食店やライブハウス、あるいは人々の移動が減ったことで需要減に陥った旅館などは売上げが一気にゼロ近くになるところも。

特に中小企業では、倒産に追い込まれたところも少なくありません。帝国データバンクの調べによると、新型コロナウイルス関連倒産は全国で253件判明(6月16日現在)しており、そのうちホテル・旅館が41件、飲食店が34件と、この2業界だけで3割程度を占めています。

日本ではまだ倒産は出ていませんが、海外では英国の大手航空会社フライビーはじめ国を代表する航空会社が倒産した例もあります。経済の先行き見込みの不安から、トヨタを筆頭に自動車各社なども一気に業績を悪化させました。

逆に、今回のコロナ禍で業績や株価を伸ばした企業もあります。その違いは何なのか。危機時に伸びるビジネスとはどういうものか。振り返りましょう。

ドラッグストアの業績に明暗

1-3月期の業績についてはまだでそろっていない部分もあるので、今回は株価の変動を参考に「伸びた業種」を見てみます(5月中盤くらいまでの緊急事態宣言下における株価の動向を参考にします)。同じ業種であっても企業による濃淡はありますが、コロナ禍でも株価が順調に伸びた業種としては以下が指摘できるでしょう。

《コロナ禍でも株価が順調に伸びた業界》
・ドラックストア
・製薬・衛生用品
・食品・フードデリバリー
・物流
・通信
・IT
・ゲーム

たとえばドラッグストアでは、特にウエルシアホールディングスがコロナ禍においても株価を伸ばしました。特に4月の緊急事態宣言下における株価上昇は目を見張るものがありました。

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ドラッグストアで売られている製品のメーカーなども順調な企業が目立ちました。たとえばユニ・チャームは、マスクの需要が好調だったことに加え、メインビジネスである使い捨ておむつや生理用品が順調で、過去最高株価を更新。使い捨ておむつや生理用品は生活必需品であり、それらが底堅い需要を持っていたことがマスクによるさらなる業績アップを支えた構図です。

一方で、マツモトキヨシホールディングスなどは今年に入って株価を一気に下げています。これはマツモトキヨシが調剤薬局の比率が低く化粧品などを多く扱っていること。海外からのインバウンド需要に売上げの多くを頼っていたことによります。

KDDIやソフトバンクは過去最高益を更新

さて。結局のところ、危機時において伸びるビジネスとはどのようなビジネスなのでしょうか? 危機時といっても今回のようなパンデミックと、大地震や金融恐慌では多少異なってきますが、ある程度共通する部分はあります。 

1つは、生活必需品やライフラインに近いビジネス・サービスであるということです。例えば通信や物流が途絶えてしまうと生活が成り立ちません。NTTはコロナの影響は軽微でしたし、KDDIやソフトバンクは過去最高益を更新しました。

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海外では、オンラインミーティングで有名なZoomが一気に業績を伸ばし、株価も数倍になりました。こちらは個人というよりも主に企業のコミュニケーションを支えるサービスですが、企業にとってもコミュニケーション手段は非常に重要なのです。

「マズローの欲求5段階説」で語れる「Zoom飲み」

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ここで1つ、有名なフレームワークをご紹介しましょう。

人間性心理学の産みの親であるアブラハム・マズローが、人間の欲求を5つの階層で示した「マズローの欲求5段階説」です。これは「人間は下位の欲求が満たされるとより上位の欲求を満たしたいと思うようになる」という説ですが、マーケティング的な用途に応用することもできます。

まず、最も下位の欲求は生理的欲求です。これは生命維持のために最低限の衣食住や睡眠などを確保したいという欲求です。途上国などではこのニーズが非常に強くなります。

下から2つ目の安全欲求は、身体的な安全や、経済的な安全を求めるものです。病気にかかったときに医療にアクセスしやすいなどもこの欲求に含まれます。先進国でもアメリカなどは、保険制度の関係で病気にかかった時でも医療へのアクセスができない人がいたり、銃や人種差別(米ミネアポリスで警察に拘束された黒人男性が死亡した事件はその典型です)といった恐怖があるなど、一部の人はこの欲求を満たせていません。

3つ目の所属と愛の欲求は、組織やコミュニティに属し、安心感を得たいというものです。人間という社会的な動物は孤独を嫌い、仲間とつながっていたいというニーズを持つのです。

4つ目の承認欲求は、人から認められたい、さらには自分の存在意義を肯定的に感じたいというものです。社会的に評価の高い仕事に就きたいといったニーズなどもここに含まれます。

最後は自己実現の欲求です。これは自分の持つ可能性を最大限に発揮し、ありたい姿に近づきたいというものです。本来は部下の動機づけなどに用いられるこの理論ですが、ほかのビジネスシーンでも用いることができます。

その一例が、今後どんなビジネスが求められるかというニーズの予測です。

海外のある国の成長ステージを見ることで、「今後はこの欲求を満たす(あるいはそれを支援する)ビジネスが伸びるだろう」ということが推測できるのです。「安全欲求まではかなり満たされているから、今後は人々のつながりを促進したり、そこで生じるトラブルを解消して安心を得たりするビジネスが必要とされるだろう」といった具合です。

今回のような危機のケースでは、先進国であっても、通常は意識しないような低次のニーズの需要が高まるといえそうです。特に、生理的欲求(1次)、安全欲求(2次)から所属と愛の欲求(3次)までの相対的重要度は上がります。

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