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時間と特別感と価値について考えた話 〜思い出を添えて〜

この間、ちょっとした雑談の中で「塾や予備校へは行くべきか?」的な話になったのですよ。で、その時予備校って高いよねーとなったのです。

僕は高校生の頃、予備校に通わせてもらったのと、その予備校でチューターもやり、更にその時チューターながらに新しい企画の立ち上げに関わったこともあり、予備校において「どの部分の値段が本当に価値があるのか?」みたいなことは結構わかっているつもりです。僕自身の淡い体験(笑)と、僕自身が巡り巡って体験した、「価値が生まれた瞬間」を踏まえて、思うことを綴ります。


【癒しは価値だと体感した思い出】

僕が高校2年の途中から予備校に通い始めた頃のこと。当時通っていた予備校には、講師の先生や社員の方とは別に「チューター」と呼ばれる大学生のアルバイトの方いました。年齢的には1〜3歳くらいしか違わない方が殆どです。が、皆憧れの大学に通う大学生。聡明で、キラキラして(いるように見えた)、何より受講生である僕らに対してめっちゃ親身になってくれるんですよね。

予備校なので、素晴らしい教材とカリキュラムと講師陣がいれば事欠かない…はずなのですが、このチューターの存在がとてもデカかったんですよね。質問にも答えてくれる。愚痴や相談も聞いてくれる。だらけている時は励ましや適度な叱責もくれる。まあ頑張りますよね。

僕が高2の頃、予備校の1号館4階受付か5階の自習スペースには、週に2〜3日くらい小林美穂さん(通称こばみさん)という、某有名女子大に通うチューターの方がいらっしゃいました。僕がいつも自習室入ろうとすると、

こばみ「お、ソガ君こんにちはー。今日も自習室使うの?」
ソガ氏「はーい、授業まで1時間半くらい」
こばみ「お、えらいねー。頑張ってね!」

みたいな会話が繰り広げられていました。
何気ない会話ですが、田舎高校のぎこちない高2くらいの野郎からすれば、十分テンションが上がる会話です(笑)。

実際、僕はこのこばみさんにめっちゃ癒されていました。普通に好きでしたね。故に、まだ大して勉強に本腰入れきれていない時期はしょっちゅう自習室から出てきて、こばみさんとの雑談を狙っていました。

今も思えば、こばみさんも普通の大学生な訳ですから、「勉強しなよー」とか言いつつも、雑談でアルバイトの時間が過ぎるのはそんなに悪い感じでも無いわけです。勉強とは関係ないですが予備校に行って勉強するモチベーションの一つになっていたことは間違いない(笑)


【特別感も価値だと気づいた体験】

そんなこばみさんがある日、いつものように自習室で勉強した後に休憩兼ねて雑談しにきた僕に向かって衝撃的な言葉を投げかけてきたのです。

こばみ「あのね?多分もうすぐチューターやめるんだよね」
ソガ氏「え?それ、マジで言ってますか??」

どうやらマジらしい。。。
おそらく大学4年になるこばみさんは、就職活動もあるだろうから、時間的に厳しくなることを懸念してアルバイトを辞める・・・と、まあ今思えばごく当たり前なことが目の前で発生しただけのことなのです。

ただ、僕としては結構な大事件です。
勉強のモチベーション、癒しの時間と空間が無くなる・・・ヤバい。

当時は時代的に結構緩かったですが、それでも受講生とチューターがご飯に行くなど、しかも二人っきりで行くなど禁止でした。流石に二人ではないにせよ、最後に思い出くらい欲しいよね・・・ということで鬼のようにご飯なりお茶なり誘いましたね(笑)

まあお決まりのように最初は断られまするのですが、何であんなにパワーがあったか分からないくらいめげないのですよ。最後は根負けして、休憩時間の1時間を使って、しかも二人っきりで予備校近くの喫茶店に連れて行ってくれたのは忘れられない思い出です。更に・・・当時はチューター用の名刺もあったのですが、その名刺を僕にくれたわけですよ。しかもその名刺の裏に、自分の実家の住所と電話番号を手書きで添えてくれて!

本来ならばめっちゃテンションが上がり次のステップへ・・・とかなりそうですが、そこは僕の詰めの甘さというか(笑)、名刺をもらえただけでテンション爆上がりで「これは宝物として取っておこう!」とか思ってお財布に丁寧に閉まってしまいました。今でも実家にあるのかなぁ・・・?


【僕という人間が他者にとっての特別になった日】

僕は予備校が好き過ぎて、チューターもお世話になった先生も好き過ぎて、大学生になれることが確定した瞬間から、お世話になった予備校でチューターをやりたいとずっと心に決めていました。ていうか、何なら予備校在学中からずっと心に決めていました(笑)

アルバイトがしたいのではありません。
チューターがやりたい。鬼のような熱量で(笑)
どうしても、自分の辛かった体験を誰かのために使いたい。
どうしても、勉強できなくて悩んでいる人に「大丈夫だよ!」と言ってあげたい。
「俺みたいなバカでもサボり魔でもできたから大丈夫!」と言ってあげたい。
そんな理由と動機が、僕の頭の中に渦巻いていました。

で、無事にチューターになれたんですよ。
しかも最初の年に、新しい企画の立ち上げにも関わらせてもらったんです。富士の休暇村での2泊3日の年越し合宿!12/31〜1/2で実施して、お昼過ぎに富士休暇村について、そこから12時間ノンストップ英語講義して、年越しに受験生とスタッフみんなでリポビタンDで乾杯するとかいう、なかなか狂った企画になった記憶があります😂

企画立ち上げなど当然人生初で、予備校本部の会議室(半沢直樹で出てきそうなイメージ)にも初めて訪れ、本部長と共に一学生が会議に出たのを覚えています。めっちゃ緊張もしたけど、とにかく受験生のためになりそうなことをやりたい!というある種の中毒症状が出ていたので、この企画にフルコミットしまくりでした。この企画中の3日間の合計睡眠時間が1時間であったことも忘れられない思い出です😂

この企画の最終日、閉会式をやったんですよね。
3日間必死で頑張った受験生たちが、互いの健闘を讃えあい、鉢巻やテキストに寄せ書きをしていく。合格してからの再会を祈り、先生にもコメントをもらいにいく。

僕はスタッフだったので、その様子を会場の端っこから遠巻きに眺めていたんですよ。で、ここで人生初の体験が訪れたのです。

受験生A「曽我さん!僕、絶対頑張って曽我さんの後輩になります!」
ソガ氏「おう!頑張ってね。絶対できる!応援してる!」
受験生A「はい!頑張るので!握手してください!」
ソガ氏「え・・・?お、おう!頑張って」
受験生B「(駆け寄ってきて)あー、いいなぁ!私も!サインもしてください!」
ソガ氏「えーと、サインね。うん。サイン。。わっっかりましたー」

ただの鈍臭い大学生ですから。
二十歳そこそこで、自分のサインなんて考えているわけありません😂
イベントが終わりに近づき、心地よい疲労感に包まれていたのですが、一気に体温と心拍数が上がったのは言うまでもありません。だってシャイでしたから(笑)

でも、冷静に考えたらすごい体験だったのです。僕にとって。
だって、自分のような人間が、一瞬でも誰かにとっての特別になれた気がした訳ですから。たとえ一瞬かもしれずとも、たとえ勘違いだとしても、当時の僕に大きなインパクトを残す体験となったのです。


【積み重ねる時間と特別感に価値が宿る。ワインの如し】

僕は民間教育にどっぷりの人間なので、よく質問されるのが、例えば文系理系どっちが良い?とか、どの学部に行くのが良いのか?みたいな質問です。

算数・数学ってやはりできた方が有利ですよね?
英語は小学生からやっていた方が良いですか?
プログラミングってやっておくと違うんですか?
これからは海外の学校ですかね?
アクティブラーニングって大事ですよね?
不確実な世界ならば農学部って良い線いってません?
情報工学ってどうなんですか?

まあ、どれでも変わりませんし、変わる人は変わりますし。手段・戦術にこだわりすぎるとあまり良いことありませんよ?と。だって変化が激しいので。すぐまた新しいもの出てきますって😂

でも多分、変化が激しく不確実性が強い時代だからこそ、積み重ねる時間とか、その時間からジンワリと醸し出される特別感がすごく大事になってきたな、と思います。それが分かっていれば、何やっても価値は出てきます。

「満足よりも感動を!感動よりも感激を!!」

みたいなことをサービスとして良しとする風潮も分からなくはないのですが、そういう「脳汁出ちゃう系」って刺激物ですし、消費感が強いですし、本質的な価値は宿りづらくなったな、とも思います。これは時代背景による影響も含めて。

多分「小さなWow!」で良いのだと思います。華やかすぎず、刺激が強過ぎず、でも真剣で、積み重ねた時間のぶん醸成されていく。結果、そこはかとなく特別感を感じさせてくれる。その様はワインの如く。

ワインと同様、人と人の関係もまた経年価値があるからこそ、それらを意識的に生み出せて、育てている教育ソリューションには価値が宿るのだと思います。そう思うと、プライベートレッスンとか徒弟制度は確かに理にかなっているのかも・・・。ただ、当然時間をかけて育まれる分、先が読めない不安もあるのだろうなぁ…とも。ワインも寝かせたらといって全部OKにはなりませんからね。


嫌ならば辞めても良いんだ!
好きなもので生きていこう!
VUCA時代は行動が大事だ!
変化に対応できる奴が勝つ!

こういうことが叫ばれて久しい時にこそ、あえて時間をかけて育める何かや誰かと向き合う。時間をかけることで育まれる特別感の価値に思いを馳せてみる。自分なりに歴史と文化を、誰かと紡いでみる。

これ、結構ライフハックな気もしますぜ?😏

あなたにとっての経年価値は何ですか?

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