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【大西一郎 ある視点】第24回「くりりん」

月刊サウナデジタル

横浜市鶴見区・ファンタジーサウナ&スパおふろの国のリラクゼーションコーナー「ケアケア」店長・大西一郎がカウンターの中から繰り広げる視座の世界。

「手に職を付けたい。」と言って、OFR48くりりんこと栗原がケアケアにやって来たのは4年前。おふろの国からの紹介だった。

そのもっと前、私がおふろの国に来るよりも、おふろの国にケアケアができるよりも前に、おふろの国の清掃スタッフとして働いていたくりりんは、おふろの国の中の多くの人達と顔なじみで、「くりちゃん」と親しまれていた。

私がくりりんに初めて会ったときの印象は、今、OFR48として歌って踊るはつらつとした印象とはちょっと違っていた。「こういう子が居るんだけど。」と呼び出されて、事務所に入るとくりりんがいた。

私はその人の人柄がどうこうと言うことよりも、条件面の心配をした。

昔、この人と同じような条件でこのリラクゼーション業界で働く人達は多く、皆「昼間でこれだけ稼げる仕事ないもんね。」と言った。

くりりん自身も、おふろの国が一番景気の良かった時代を知っていたのだろう。今はすっかり時代が変わってしまったので、「期待ほどお金にならないかもしれない。」と、この仕事に対して、激しくおすすめはしなかった。

それに応えてくりりんが、「私、何でもやりますよ。」と言い放ったことを覚えている。

それは、私やる気満々です!希望に燃えています!と目をキラキラ輝かせて言ったというより、どこかやけくそ、もうどうにでもなれ、煮るなり焼くなり好きにしろ、と、はたして本人がそう思っていたかどうかはわからないけれど、とにかくそんな印象を私は受けた。

ちょっとぶっきらぼうで、どこか人生に対してすねているようなかんじで、目が死んでいた。私はどちらかと言うと、目をキラキラ輝かせて頑張ります!とがつがつ迫ってくる人よりも、ちょっと目が死んでるぐらいの人の方が好きなので、逆に気に入って、この人来てくれたらいいなと思った。

しばらくして、栗原は実際にケアケアで働くことになった。初めて会った時のような死んだ目は、あの日以来見せてくれなかった。(良い事です。)だけど、栗原の条件、平日の昼間という時間帯は、やはり完全歩合のサービス業としては不利だった。

栗原は「私、何でもやりますよ。」と覚悟を見せたのだから、私も店長として、それに応えて栗原のために何とか対策を講じなければと思った、と言えば聞こえが良いが、彼女はとにかく見ての通り、容貌がとても優れてかわいかったので、ポスターにしたいと思った。

何もよそのモデルを頼んだり、フリー素材を探さなくても、この子を広告塔にして、平日の昼間の集客につながるように、時間帯を限定して、いっそのこと担当スタッフを栗原に限定して……。

ということで、うちの会社では初めて、よそでも私が知る限りでは見たことのない、スタッフ一個人の名前と顔写真をでかでかとポスターに載せた、担当者を限定したキャンペーンを実施することにした。

その名もまんま、「栗原スペシャル」。

栗原がいる時間、栗原の予約が空いている場合に限り、栗原しか承れない、バリニーズオイルトリートメント60分¥4,900。スーパー銭湯でオイル60分が¥4,900は破格だ。

栗原は戸惑いつつも了承した。店の中で、ポスターにする写真を、ああでもないこうでもないと言いながら、色々なポーズ、色々な表情で何枚も撮った。その中から私は、物憂げな表情をした写真を一枚、儚いかんじが良いと思って、これでどうかと言った。本人はあまり気に入っていなかったが、それで承諾した。

こうして準備も整い、「栗原スペシャル」は華々しくスタートした。

完成したポスター用の画像を早速ツイッターに投稿したところ、オフロ保安庁の久下沼長官から、「まるでゆきりんじゃないですか!」というコメントが来た。

そう、栗原はAKB48のゆきりんこと柏木由紀にそっくりだ。ポスターの写真を見て、本物の柏木由紀だと思い込む人もいた。「ゆきりんではありません、くりりんです!」と返信した。私が栗原をくりりんと呼んだ最初だった。

後にOFR48に加入した栗原は、昔から「くりりん」というあだ名で呼ばれることがあったのか、どういう経緯かわからないが、「くりりん」という名前を採用した。当時は「くりりん」という言葉を聞けば、私はあのドラゴンボールに出てくるツルッパゲの「クリリン」を連想したが、今では栗原のほうが先に思い浮かぶ。

私が最近、この月刊サウナの中でも散々語り尽くしている「体癖」という考え方に照らし合わせれば、くりりんは4種体癖だ。

華奢で直線的で骨が目立つ、やや右重心で右下がりのいかり肩。胃腸にエネルギーが集中しやすい胃腸型の陰性タイプ。控えめで儚げな印象。自分のことはよくわからないが他人のことはよくわかる。物事の一番重要な価値判断基準は好きか嫌いか。

計算と天然、おそらく両方なのだけど、くりりんは他人の気持ち、望むこと、何をどうして欲しいのか、どうして欲しくないのかを、察して汲み取る能力が人よりも高いと思っている。リラクゼーションの仕事をする上ではとても有用な資質だと思う。

さらに、アイドルと呼ばれる人には、同じ胃腸型の陽性タイプの3種と、この4種が多いと言われている。ざっくり言うと、明るくてキャピキャピしたアイドルが3種で、おとなしくて控えめなアイドルは4種というイメージだ。3種、4種は左右の動きが目立ち、女性的な印象を受ける人が多い。子供っぽく見える部分もある。

くりりんは少女趣味な印象がある。いつまでも少女の心を大切に持っている人だと思う。アイドルと名乗るからには、明るくキャピキャピして然るべきだと考えているかもしれないが、他人にいくら褒められても、自分が納得しなければそうとは思えず、「いや私なんて……。」と、落ちるときは落ちて行く暗さも持っている。

私は本人に向かって、「くりりんは、陽気か陰気かって言ったら陰気やん。」とか、「謙虚を通り越して卑屈やん。」とか言う。くりりんはその度に「えー……!」とショックを受けるのだけれど、これはディスっているのではなく、私は陰気で卑屈なくりりんが好きなのだ。

10種類の体癖のうち、1種、3種、5種、7種、9種が陽性タイプ、2種、4種、6種、8種、10種が陰性タイプで、今のケアケアには、陰性の体癖の特徴が強く出ているメンバーが多く、しかも全員共通して多少4種っぽい傾向を持っている気がする。店が4種的だ。受動的で、積極性に欠けるけど、共感性は高い。

9月から、栗原はケアケアでの仕事をしばらく休業することになった。

店に栗原が常に居ることは、私にとって自慢だった。おそらく収入に満足したことは一度もないだろう。それでもケアケアが好きだと言って、4年間毎日来てくれた。非常勤になってもケアケアに籍を残したいと言ってくれた。「そう言ってくれることが嬉しいよね。」と私が喜んでいると、誰かが「店長チョロいね。」と言った。

希少になるくりりんのケアケア出勤、継続するOFR48としての活動も、皆様今後ともどうぞお見逃しなく。

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