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雷の恐怖を克服する ~余談⑫~ 外の仕事は無理です

はじめに

 前回は自己嫌悪について書きました。

 自己嫌悪に陥らず、怖がってしまう自分も受け止める、とか恰好の良い事を書きましたが、今回は自己嫌悪になった話です。

 過去の話なので大目に見てください。

外仕事は怖い

 雷の恐怖を克服するにも書きましたが、雷恐怖症の私にとってずっと屋外でする仕事はちょっと厳しいです。

 雨の中で車を誘導している方を見ると「大変だなぁ」と思うと同時に、誘導員の方には大変申し訳ないですが「雷が鳴るかもしれないのに私には無理」と思ってしまうのです。

 だって、屋内にいる時でさえ、雷が鳴りだした途端にオロオロして全然仕事に集中できなくなり席を外してしまうような私が、雷が鳴っている外で仕事が出来るわけないじゃないですか。

 たしかに今、暴露療法を通じて恐怖を克服しようとしています。

 でも、それは屋内や車といった比較的安全なところにいるという条件付きであって、生身で雷がどかどか落ちている屋外にずっといられる程の強心臓にはなれるとは思っていません。

 まず将来の事はわかりませんので、暴露療法の過程で、もしかしたらそのような強心臓を手に入れているかもしれません。しかし、今の段階ではそれは高望みというものでしょう。

雷のせいで事故った話

 忘れもしません、あれは11月の少し暖かい日でした。私ひとりで、車を運転して取引先のところへ製品を受け取りに行った帰りの事です。

 製品を受け取った帰り道、私は高速道路を走っていました。

 すると、前方の遠くに黒い雲が現れだしたのです。そして、その雲からは稲妻や閃光が何発も見えました。

 会社に帰るためには、そちらの方角に向かわなければいけませんでした。

 黒い雲はどんどん近づいてきて、稲妻も激しくなり、ゴロゴロという雷鳴もはっきり聞こえてきました。

 私は恐怖のあまり、車を路肩に止めました。

 そして、シートを倒して閃光を見ないようにうつ伏せに寝てぎゅっと目を閉じ、耳を両手で押さえました。

 雷をやり過ごそうとしたのです。

 でも雷は、頭上にいてなかなか去ってくれませんでした。

 耳を手で塞いでいても轟音は聞こえてきます。

 あまりよく憶えていませんが、たぶん私は奇声を上げながら、悶えていたと思います。

 しばらくすると、高速警備隊の人が私の車にやってきて「大丈夫ですか?」と声をかけてきました。

 ずっと路肩に停めたままだったので気になったようです。

 私は「お腹が…」と言ってお腹が痛いという嘘のジェスチャーをしました。「雷が怖くて運転できない」と言うのがとても恥ずかしかったのです。

 なぜそこで正直に「雷が怖い」と言わなかったのでしょうか。悔やまれます。

 警備隊の人達は「何かあったら救急車呼んでくださいね」と言って帰っていきました。なんとか誤魔化せたものの、このまま同じところにいればまた彼らがやってくると思って焦りました。

 意を決して運転を再開したのです。

 先程よりはおさまったものの、ときどき閃光が視界に入ります。

 私は、なるべく視界に入れないように、目をパチパチと瞬きを多くしたり、薄目で運転していました。

 短いトンネルを抜けて、すぐ緩やか右カーブに差しかかった時でした。

 トンネルを抜ける瞬間にまた怖くなり、大きく瞬きをしました。もしかしたら目をつぶってしまっていたかもしれません。

 カーブに気づくのが遅れ、左側の壁にぶつかってしましました。

雷でも運転できるようになりたい

 車のバンパーからフェンダーにかけて激しく衝突した跡が残り、前輪のタイヤのバランスが狂ってしまいました。

 スピンしたりして後続の車に迷惑をかけなかったのが唯一の救いでした。

 しかし、なぜ恥ずかしがらずに高速警備隊の人達に助けを求めなかったのか、そして焦らずに雷が完全に過ぎ去ってから運転を再開しなかったのか、とても悔やまれました。

 そうすればこの事故は起こらなかったはずです。

 
 でも、一番は雷が怖いせいです。

 車の中にいれば雷の危険は無いと頭ではわかっていました。

 しかし、私は雷が怖くてまともに運転できる状態にありませんでした。

 スピードは落としていたものの、高速道路の運転中に目をつぶるなんて、とんでもなく恐ろしい事をしてしまいました。今思い返してもぞっとします。

 だから私は、雷の恐怖を克服して、雷の中でも普通に運転できるようになりたいのです。


最後まで読んでくださいましてありがとうございます。
また別のnoteでお会いしましょう。


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