【無料】「政策調整の時期が来た」 2024年vol.33 8月19日週振り返りと8月16日週見通し
8月19日週のハイライトはジャクソンホール会議でのパウエル氏の発言でしょう。パウエル氏はいつも冒頭に伝えたい事を言いますが、今回は「政策調整の時期が来た」と9月利下げを示唆する言葉で始まりました。
コロナ禍と戦争によって止まらなくなったインフレを金利を上昇させることで対応してきたFRBですが、やっと利下げをできる時期になりました。その道のりは簡単ではなく、銀行破綻も経験し、地政学的リスクを抱えながらも、株式市場は好調、雇用や経済は比較的安定しています。しかし地政学的リスクはまだ拭いきれず、米大統領選挙を控えており、景気後退懸念も残っており、まだまだ先行きの見通しは曇りです。
株式や米金利の推移を想定することで為替トレードにも役立つと思いますので、参考になればと思います。
米国経済
23日(金)日本時間23時にパウエル氏は会見にて、「政策調整の時が来た」と言い、9月利下げ示唆をしました。その他、「われわれは労働市場のさらなる冷え込みを求めることも歓迎することもない」「物価安定に向けてさらに前進する中、堅調な労働市場を支えるためにできることは全て行う。」と、今後の労働市場へのコメントは見届ける姿勢を示しましたが、警戒感を感じるものでもありませんでした。
利下げのタイミングとペースは、データや今後の見通し・リスクのバランス次第としており、個人的にも緩やかな利下げが誘導されると考えています。
現在利下げ見通しは来年中旬までに8回の利下げを織り込んでいます。
年末には4回分だけみても織り込みすぎ具合は分かりますが、ドットチャートを見ても2025年末4.1%、2026年末3.1%、longer run2.8%なので、織り込みすぎ水準なことが分かります。ただし失業率の上振れやPCEを見てみると、ドットチャートよりも織り込むことは正常な判断とも思います。
そして現在の米金利は2年金利3.9%、10年金利3.8%となっています。逆イールドになっていますが、しばらくの間は順イールド・逆イールドの良し悪しは気にしなくていいと思いますし、どちらかというと逆イールドが正常化と考えています。
今後は緩やかにも利下げをしていき、米金利も低下していく方向性か、ある程度の金利水準で横ばいかと思います。短期的には9月利下げが25bpの1回分なのか、2回分の50bpなのかに注目されています。しかし、その期待度は織り込みすぎな水準にまできています。よって、これ以上の米金利安を織り込んでいくには追加材料が必要であり、先月以上の雇用統計の悪化、50bp利下げ以外では、金利安材料には乏しいと考えています。
米株は高値をとらえており、何事もなければ年内にはもう一段上を目指すことは容易と考えています。NYダウをみてもセクターの偏りは解消されており、安定して経済成長することへの期待が表れています。28日にはNVIDIAエヌビディアの決算が控えており、収益よりもガイダンス(見通し)が注目され、ハイテク株への影響があると考えられます。
金利安がある程度織り込まれている中で、株はもう上値が見えているような葉話もありますが、私は利下げ期待が織り込まれても、安定した経済成長が見込まれるのであれば、株は上昇し続けると想定しています。安定した経済成長が裏切られたり、米大統領選挙で一時的な株安相場が想定されたりすることはありますので、短期的なリスクオフは念頭に、それ以上長い時間軸で株は上昇し続けるだろうと考えています。
26日週は個人消費支出PCEを控えており、今後の利下げ見通しの材料となります。予想は前回よりも少し上振れが想定されており、横ばいや上振れ時には金利高となると思われ、少し下振れ程度では金利安も金利安幅は限定的と想定します。次の重要な材料は雇用統計です。それまで重要な指標はないので、為替はとくに値幅のある方向性はないと思われます。株式相場は利下げ期待で株高、エヌビディア決算がさらにアシストとなるか注目です。
利下げによる株式市場への期待がある中、今後は株があがるんだという思いは少し危険であることも記述しておきます。それは9月がアノマリー的に地合いが悪いということ。レイバーデーといわれるアメリカの9月第1月曜日明けは、アメリカでいう新学期に値し、アメリカ人にとっては心機一転です。しかしこの9月時期は株式相場はあまり良いパフォーマンスであることは株式相場ではよくあるアノマリーとして知られ、10月ごろから買いを考えればよいとされています。しかし8月雇用統計後にプチパニックであく抜きが出来ていることを考えると急落懸念というよりも、急騰に注意というよりも「思ったよりパフォーマンスがよくない」という認識が重要かと考えています。
日本経済
ジャクソンホール会議と世界経済フォーラムが行われている中、日銀総裁は先月末に追加の利上げに踏み切ったあと株価が乱高下したことなどを受け、国会に呼ばれ、説明を求められました。植田総裁は、追加の利上げは「適切な判断だった」などと説明し、今後の利上げについても否定することはありませんでしたが、利上げしたとしても緩和的状況は変わらないと説明しました。これはその通りでありますが、わざわざジャクソンホール会議を不参加にしてまで言うことだったのかと思ってしまいました。
今後は日銀が利上げ、アメリカが利下げを段階的にするでしょうから、ドル円は下落する見通しをする方もいますが、そこまで急落することはなく、米金利差が縮まるとはいえ米金利差がある状況ですので、2022年と比べて円安がある程度継続する見通しで考えています。
日本株は日銀政策によってこれ以上下落する確率は高くないと考えており、寧ろ2026年中には5万円も突破できる見通しで考えています。
日本では9月末に総裁選挙も行われます。時期総裁への関心も高いですが、個人的にはだれがなっても日本経済政策のやることは大差ないと考えています。インフレと雇用の観点から、安定した経済成長を促すしかないので、そこに差は出ないと思います。その他注目されるのは、外交・国民へのパフォーマンスかと思います。岸田政権の政策内容は悪くなかったにもかかわらず、支持率が一向に上がらなかったのは、国民への理解がえられなかったから、説明不足だったからだと考えています。せっかく状況は好転しているにも関わらず、あまりにも理解されませんでした。石丸氏の都知事選への影響を見ていても、SNSのコントロールも全くなかったのは、問題としてほしいものです。
世論調査では小泉氏23%、石破氏18%、高市氏11%だったようですが、自民党総選挙は国民の声は反映されないので参考にならないと思います。個人的には高市氏派です。
ドル円
先週は植田総裁による追加利上げ観測やパウエル氏による利下げ示唆によりドル円は先週3円ほど下落しました。
テクニカル的には短期足では下降トレンドですが、日足レベルでは上昇トレンドとなっています。ファンダメンタルズ的には米金利安の織り込み、日銀利上げ観測も急な織り込みは難しいことを考えると、ドル円は反発しやすい環境にあると考えています。
8月26日週の日米材料は乏しく、米PCEがあるくらいです。月末週による影響、リスクオンによる円安も考慮しなければいけないので、方向性は想定しにくい週となりますので、ドル円が下げてきたときの買い戦略をメインとし、想定レンジは142.500-147.500です。
ユーロドル
今週ユーロドルは米金利安によって上昇、年初来の高値1.114を更新しています。テクニカル的にも強く、リスクオンによるユーロ高も機能しているように思えます。
しかし私は先週に引き続いてユーロドルは下落しやすい環境を想定しており、それは米金利安の織り込みが近いこと、欧州経済の先行き不透明さ、地政学的リスクを材料に考えています。
引き続き米金利中心に動くと考えていますが、8月30日には欧州HICPはユーロ高安になると思います。想定レンジは1.1100-1.1300です。
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