#9　ちゃんと恋で、愛だった

忘れられないものはどうしようもなくて、いつか忘れてしまうまで放っておこうと決めたけれど、別れて1年を過ぎても、あの頃の彼を抱き締めたまま、何も変わっていない。

彼にまた会えたら…と何度想像したことだろう。手を繋いで歩きたい。海を見に行きたい。やりたいことはいくつかある。でも、どうありたいかなんて、

「一緒にいたい」

それ以上の答えは出てこない。

もともと私には恋愛も結婚願望もなかったものだから、彼と出会って恋を知った後も、恋愛→結婚という思考ができないようだ。今も結婚願望はない。

彼にまた会いたいと願うのは、本心から。でも、彼と恋愛したいわけじゃなくて、結婚して家庭を持ちたいわけではなくて。

ただそばにいたい、それしかない。

また恋人になれたらいいなと思うけれど、彼の隣は心地よくて家族のような存在でもあったけれど、どんな形であれ、彼のそばにいられたらいいのに。

彼がいなくても生きていけるのに、何度もこうして願うのは私のわがままだろうか。

あの新作の映画が公開されたよ。
あそのパンケーキ食べに行こうよ。

そんな日常のひとコマに彼がいてくれるだけで、私の心は満たされるから。一人で過ごしても誰かと一緒でも、毎日がつまらないわけではないけれど、彼の表情や声をそばで感じられたら、どれだけ幸せか。

あの頃は「一緒にいると楽しいから」が恋の理由だと思っていた。それも確かな理由だったけれど「そばにいたい」が本物だったんだ。

彼に恋をしていたし、彼のことをちゃんと愛せていたんだと、この1年を通してようやく気づけた。私にも誰かを愛することができたんだ。よるくんを愛せてよかった。

彼とまた会えたら、伝えようと思う。ここに書いた胸のうちを。彼と出会えて知った、たくさんの温かい感情を。出会ってくれてありがとう。

でも、やっぱり、またそばにいれたらいいのにな。

*この物語には続きがあります。

*物語の始まりはここから。