#7　それなら、いつか

3ヶ月経てば、元彼のことは忘れるよ。
ネットの記事でそう見かけて、私もそうなるのかな、寂しいなと思って。
でも、1日だって忘れたことはない。気持ちだけはあの頃のまま、何も変わらないまま、どんどん時間は過ぎていく。

朝、出勤すると、染み付いた習慣のように、彼がいたはずの駐車場を見てしまう。彼が気に入っていた黒い車はもうないとわかっているのに、またどこかで会えないかなと探している。

別れてしまったから、「彼」は過去の人になってしまった。心の奥ではまだ好きなのに、友人の「早く忘れなよ」の一言で、思い出すことさえいけない気がした。

「早く忘れなよ。もっと他にいい人がいるから。」

そんな簡単に言われても。
忘れたくても忘れられないの。

「好きだったら別れないよ。諦めたほうがいい。」

友人は慰めようとしてくれているのかもしれない。でも、私の気持ちを無視されているようで、嫌だ。勝手に腹が立って、そんな自分に悲しくなる。

私はまだ好きなんだ。
この気持ちを否定されたくない。

ある時、職場の先輩に「彼氏いないの？いい人紹介するから」と話しかけられて、秒でお断りした。一瞬、彼のことを思い出して、その次の一瞬で、他の人は違うと思っていた。まだ心の中に彼がいる限り、彼を好きな気持ちが消えない限り、また誰かを好きにならないと思う。まだ、彼を好きでいたいんだ。

彼に出会う前も、誰かと付き合いたいと思わなかった。誰かを好きになるなんて、どこかのおとぎ話だと思っていたのに。恋をしたら世界が変わると言うけれど、彼と出会ってから一変に変わって、気持ちが追いつけないまま変わり続けている。

ちょうどその頃に戻ったように、今は誰も好きになれないと思っている。こっそり彼のことを隠し持ってはいるけれど。

私の恋はまだ終わっていないことにする。

最後に送ったラインは未読のままで、たぶんブロックされたのだろう。(しつこく連絡したわけでなく、別れてから連絡していないのだが。)

離れてから数カ月、連絡は取れていないし、どこかでばったり会うこともない。それなのに、私の気持ちは変わらないまま残っている。

忘れようと思うほど、忘れたくない気持ちが強くなっていく。本当は忘れたくないんだ。彼からもらった愛情も思い出も全部消えてしまいそうで。

それでもいいと思いたい。
彼を好きになったのは私で、忘れたくないのも私だから。

それならいっそ、いつか忘れてしまうまで。この気持ちを大切に抱きしめていたい。

*この物語には続きがあります。

*物語の始まりはここから。