見出し画像

あの子と上手くお別れできなかった日曜日

土曜の夜、僕はすでに友人と何杯かお酒を飲んでいたのだが、「飲み足りない気がする」という気分に任せてBARへと足を運び、気がつくと明け方近くになっていた。

土砂降りの中を千鳥足でなんとか家へとたどり着いたが、エアコンをつけたところで力尽き、目を覚ませば完全に二日酔いだった。

夕方から美容院を予約していたのだが、回復する気配のないまま無情にも時は過ぎ、気持ちの悪さと夏の暑さで僕のHPはゼロに近かった。しかしそれでも美容院に向かわなくてはならない理由があった。

担当してくれていた美容師さんとお会いする最後の日だったからだ。

美容院はそれなりのお金がかかるので、見た目への優先度が低いのも相まり4ヶ月くらい(酷い時は半年)に一度切れば良いやという感じでいた。

しかしここ1年半ほどは2、3ヶ月に一度のペースで切ってもらっていた。理由は担当してくれてる美容師さんが可愛かったからというのとストレスを感じないところだった。

しかし、その美容師さんが訳あって退職されるというハガキが届き、僕はたいそう落ち込んだ。

美容師さんという職業はお客さんとの距離が必然的に近くなる。だからこそある程度は苦にならない距離で接してくれる人というのが自分にとっては大切で、担当してくれていた方はそこら辺が絶妙だったので毎回指名していた。

以前住んでいたところではピンと来る美容師さんと巡り会えず、今の部屋に引っ越してから久々に「この人ならお任せできる」という方を見つけることができた。いや、おっさんのくせに偉そうなこと言ってないで誰でも有り難く切ってもらえよという意見もあるだろう。しかし、ここは譲れない。長時間タイプの合わない人と接するのは精神が疲弊してしまう。

そんな僕の価値観はさておき、最後の断髪式(?)を日曜の夕方に迎えた。退職理由は聞いちゃダメなやつだなと感じ取ったので触れず、いつも通り他愛ない話をしながら「相変わらず可愛いぜ」などと思っていた。

カットが終わり、別に予定もないがセットまでしてもらった。そして会計を済ませた僕は店外までエスコートされる。なにか気の利いたことを言わねば…!しかし僕の口から出たのは平凡極まりないものだった。





「それじゃあ、お元気で」

いや、まじで自分の引き出しの少なさというか会話力のなさというか…ロクな言葉もかけることができず、もう会うことはないであろう可愛い子に見送られた。

いつだったか覚えていないのだが、BARで同席してお喋りしたお姉様から帰り際に「おやすみなさい」と声をかけてもらったことがある。なんてクールな挨拶だと思い、それ以来BARでの帰り際は「おやすみなさい」と言っている。

しかし、今回のシチュエーションで使用する挨拶ワードを所持していなかった。1日経った今も何を言うべきだったのか正解は出ていない。

三十路を越えたからにはなんかカッコイイ大人な雰囲気を出していきたい。気の利いた挨拶もしたい。高いコミュニケーション能力が欲しいですね…

それでは最後に、お別れにまつわるこの曲を。never young beachで「お別れの歌」

蛇足だけど、妹がこのMVを初めて見た時「(小松菜奈が可愛すぎて)人をおかしくさせる7分半」と表現したのは的を得すぎていて嫉妬した。

この文章をお読みになられているということは、最後まで投稿内容に目を通してくださったのですね。ありがとうございます。これからも頑張って投稿します。今後とも、あなたの心のヒモ「ファジーネーブル」をどうぞよろしくお願いします。