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【朗読】屋根を重ねて

文月悠光
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光を愛することは、
影と生きる宿命を引き受けること。
嵐が枝葉を乱す夜明け、
手紙をひろげるように
屋根を重ねて 光が渡る。
「ありがとう」
しのぐ知恵を伝えてくれた、
尊いあなたのおかげで
朝を迎えることができた。
雨上がり、家々の窓から
こぼれて光る歌声のしずく。
憩いの影を抱いて
屋根はきらめいていた。

ドアノブに触れた手を
つめたい流水へさしだす。
不安の影に飲まれそうなとき
石鹸の泡は、まぎれもない光。
いつか摘み取られるさだめでも、
この地へ根ざし、生きるために
わたしたちは屋根を掲げた。
シンクへ白い羽を散らして
鳥のようにうたい出そうか。
ちいさな心臓で誇りたい。
屋根から屋根へ
はるかな距離を結んで
重なりあうこの歌を。

詩「屋根を重ねて」文月悠光

*「婦人之友」2020年6月号ミヨシ石鹸さん広告より。
毎月、裏表紙広告欄に詩を書き下ろしています✍☪️
写真:岩倉しおりさん

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