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『フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?』

高級ブランドのロゴはなぜ高そうにみえるのか?そんな文字にまつわる素朴な疑問に答えてくれる本である。デザインに少しでも興味ある人なら、装丁を含めて中をパラパラとめくれば興味が湧くはずだ。

中を覗けば美しい文字の組み合わせと、フォントのサンプルであるブランドショップの例や欧米で展開するブランドの写真がフルカラーで掲載されている。フォントの本は数多く販売されているが、本書はラグジュアリー感満載なので見ているだけでも楽しい。

著者はドイツ在住の日本人、欧文フォントデザイナーだ。書体の専門家が、欧米の街中で撮影した写真を元に、目からウロコのフォントの不思議について語ってくれる。まるで専属ガイドと共に世界の街角を散歩している気分で、フォントについての知識が旅行感覚で身につく。BVLGARIやGODIVAなど世界の街角で撮影されたお店の看板やパッケージ、チラシ達はとても華やかだ。

第一章の「高級ブランドはなぜ高級に見える?」では、「LOUIS VUITTON」や「Dior」など、高級ファッションブランドのロゴにまつわるトリビアが満載だ。実はブランドの美しい書体は、できるだけフォント自体を飾ったり変化させず、そのままの形を使っている場合が多い。ポイントはどうも字間の「スペース」にあるようだ。その作業は本当に微細な感覚で、スペース1つにここまでこだわるか!と感心せざるを得ない。(職人気質の方は嬉しくなるだろう)

またフランス、イギリス、ドイツそれぞれの街の雰囲気を作り上げている特徴的な文字も掲載している。文字を見ているだけなのに、その街へ旅した感覚になってしまう。本書は約70のコラムから構成されており、銅版印刷から生まれた「Copperplate Gothic」や、世界を駆けめぐる「Helvetica」など、興味あるフォント項目から自由に読んでいってもらいたい。

この本を読んだ後、読者は普段目にする文字をまったく別の角度から見る事になるはずだ。そして文字デザインの世界に、少なからず興味を持つだろう。日本でも多くの書体が存在するが、そんな時「形が目立つのは、字に邪魔な要素があるからだ」という著者の言葉が浮かんでくる。

デザインに関連する人にとって必読の一冊だが、そうでない人も眺めているだけで楽しくなる良本。

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著者による、欧文の美しさの基礎を学べる一冊。それにしても教科書としては面白すぎる内容。


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