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ネコセトラ

今夜はネコに席を奪われながら、彼女の隣でインフュージョンの経過報告など色々とりとめもないことを綴ります。

ネコセトラ


テーマ
1:インフュージョンの経過報告
2:薦められた映画をみてきた
3:カウンターを通して寄り添う悲しみ


1:インフュージョンの経過報告

初稿”東洋一のブラッディーシーザーを”にて、あのウォッカを含めて3種類のお酒を漬け込んだと綴った。他の2つの種明かしと5日目の状況を記録したい。

まずは、ジンと電気ブランに施した調合から。


ジンはこんな感じ

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配合メニューはボンベイサファイア&レモン&伊予柑&八女茶。

ボンベイの柔らかいボタニカルのニュアンスに、レモンと伊予柑の酸味と華やかさを加え、八女茶の爽やかな和っぽいフレーバーが合わされば...ってイメージ。

日本茶とジンはかなり相性がいいから、これは絶対に期待通りには仕上がるはず。3種類の中でどちらかというと守りに入った感じ。シンプルなジンソーダがよさそうです。


そして電気ブランはこのスタイル

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配合メニューは電気ブラン&伊予柑&シナモンスティック&ミックススパイス。

ブランデーとかウイスキーとか、ブラウン系の洋酒は大抵柑橘とかシナモンとかと相性がいい気がする。

電気ブランは甘味もあるから、ロックか白湯で割ってもいけそうなイメージで漬けてみた。


5日目の今はここまで染まってきた

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こっそり空けて香りを確かめてみると、どれも結構良い感じな気がする。

何にせよ朝晩で表情を変え続けるのが愛らしくて、いつ飲み始めてしまうか迷う。


2:薦められた映画を見てきた

タイトルはフレンチ・ディスパッチ。クセのある多彩な米国人記者達が、仏国の街を舞台に様々なジャンルに切り込んだ雑誌の最終刊を作りあげる話。

映像がポスターみたいで綺麗とか、独特のキャラクター陣が織りなすストーリーがコメディの短編集っぽいとか、四畳半神話体系のようだとか、どれも僕を動かすように薦めてくれるねと思いつつ行ってきた。

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見てきた感想。本人には伝えたことが大半だけど。

スクリーンを構成する色の彩やかさとサウンドの相性がとてもよい。それぞれの短編がどれも印象的で、ストーリー全体の構成も軽やかでみていて気疲れする感覚が全くない。僕に薦めてくれる理由もわかります。

加えて、雑誌文化とかフランス文化に対する監督の憧れを感じて楽しかった。”映画”というより、そうした想いを表現するためにデザインされた”動画”っていうイメージを抱いた。

特に、衰退していく雑誌メディアの魅力にフォーカスされていたり、ゴダール作品を思わせる物語やショットで成り立っていたりというのが、美しいデザインに溶け込んでいていいじゃんってなった。

たった2時間で感性の幅が拡張した気がするから、よければ見に行ってみてほしい。


3:カウンターを通して寄り添う悲しみ

バーカウンターの内側に立っていると、お客さまには何らかの”ネガの感情”を抱えていらっしゃる方も多いなと感じる。

この感情には2種類あると思う。口に出して表現できる想いと、中々できない想い。

豊富な読書量から雄弁に豆知識を語ってくださるお客さまも、一見冷え切った関係に見えるカップルも、軽く酔ってはしゃいでいらっしゃるおじさまも、カウンターを挟んで静かに向き合うと普段の僕では視野の届かない表情が垣間見えたりする。

人間、誰しもが感情と言語表現の行き来をスムースに行えるわけではなく、まして言いたいことを全て口にできる大人はほとんど存在していない。


歳若く経験の少ない僕にとって、表現しえないお客さまの感情を癒すことは難しい。

だから、1つだけ仕事中に必ず心掛けていることがある。それは、言葉と行動に現れる僕のメッセージを削ぎ落とし、彼らの心情に耳を傾けること。これで心は寄せていることだけを僕なりに表現するようにしている。

一杯のグラスとカウンター越しの言動を通して人の感情を癒すバーテンダーの仕事は本当に難しいと思う。今の僕には到底できそうにない。

こういうことを学ばせてもらえる今のバイトはとてもやりがいがある。とてもとても難しいけれど。



手元のグラスが空になったので、今日はここまで。

今夜は曇っていて冬の星空が見えないね。



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