愚母のぐるぐる

どうしたらいいのかな…と、思い悩んでいることがる。
息子のことなのだ。息子と言ってももう30になるので、私の出る幕などないはずなのだけど、そうは行かない状況がある。

息子の精神に異変を感じた時から10年くらいになる。診断名も付いてはいるが、それだけでは語り尽くせない特性がある。

ここ数日、体調が悪いらしく、辛そうに踞っている。下痢と頭痛が続く。
ここ10年でこんな事は初めてで、世の中を見回せば、疑う流行病があるが、ほとんど家からでない彼が感染するとも思えない。熱もないようだし…。

普通に考えると病気になりそうな生活ぶりは、数々ある。布団に寝ない、風呂に入らない、食事は一日1回、外に出ないので日に当たらないことが多い、鼻うがいは欠かさずしているようだが…。
それが良いのか悪いのかも分らない。

彼は特異な価値観で生きている。私はそれを尊重しているので、あれこれは言わないようにしている。医者にいかない、薬は吞まない、食べ物は、菜食で今風に言うなら、グルテンフリー、水以外は飲まない。乗り物(バス電車EV等)に乗らない。
これらを微塵も揺るがない掟のように守っている。
極度の恐怖症からか、新しいことに遭遇すると馴染むのに、ものすごくエネルギーを使うらしい。

さて、今回の彼の身体の状態が気になっている。私は医者に連れていきたいくらい、心配なのだ。ここで、無理矢理にでも連れて行くべきか、本人の意思を尊重して見守るか…。

彼に異変が起きた二十歳のころ、通っていた大学の診療所の医師に言われたことがある。「親なのだから、何をしてでも病院に連れて行けるだろう」
親なのだから…、私は出来なかった。親じゃないのか私は。そう思ったことを思い出す。

先日、私はおそらく初めてかもしれない、彼に命令形の言葉を発した。薄着で着替えない息子に対して、「いいから、これを着てなさい」。
言ってすぐに、不味い事を言ってしまったと思った。以前、薦める形の言葉でも、嫌がって踞ってしまったことがあったからだ。
ところが、彼は嬉しそうに、その服を纏って、それからずっと着ている。
これで良かったのか…と思ってはみたものの。
触れられることを嫌がる息子の額に手を当てて、熱の有無を観ることもままならない状態なのだ。また何かを要求すれば、大きく拒否されてしまうのだろうか。私はやっと築けてきた信頼関係が崩れるのが怖いのだ。

そんなことの繰り返しの中で、心を触れあわせてきた10年だったが…。
やっと私も本当の彼を理解し受容し始めたところだが…。
やっぱり悩む、医者に連れて行こうかと…。
「医者行かなくて大丈夫か」とは、言ってみたが、返事はなかった。

もし悪い病いだったら、このまま命を失うまで見てるしかないのか、生き方を尊重して。無理矢理にでも医者に連れてって生き長らえさせる方が、結果、彼にとって良いのか。と言いながら、自分にとってその方が良いからなのだろう、そんな思いも浮かぶ。

健常な大人なら、もちろん本人の意志を尊重すればいいのだろうけれど、特性が強くて生き辛さを抱えている人への助けはどうだろう…。不自由な身体の場合は、本人の望む助けをすれば良いのだか、精神的な病いの場合、その判断を本人に任せていいのだろうか。親はそれをどう捉えて接して行けばいいのだろうか。

良いも悪いもないのだろう。私がどうしたいのか、結局そこの決断ができないでいるのか…。自分を信じきれないのか…。自問自答して悶々とする朝なのだ。

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