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最後の出社日、今更寂しくなった話

 1月14日が最後の出社日だった。とは言っても休業中の為、社長面談とオフィスの片付けの為に会社へ向かった。

 2020年4月から今まで、休業が開けることはなかった。そして、そのまま希望退職に応募し、社長面談と最後の出社。前に1日だけ研修で会社に行ったけど、最後まで支店全員がそろって会う事も出来なかった。

 勤務先は、旅行会社である。コロナ禍で苦境に立たされている。もちろん、旅行会社だけが大変な訳じゃない事も分かっているけれど。gotoの力を持ってしても、雇用は保証すると頑張っていた社長が、仕事を作れなくて申し訳ない、と言って謝った。

 支店も閉める事になるので、荷物の整理をした。ずっと使い続けていた3レターが書き込まれた地図帳とか、大量のガイドブックとか、CRSのコマンド表とか、色々な物が机の引き出しにぎっしり詰まっていた。中を見たら片付けが進まないと思い、そのまま鞄に詰め込んだ。お土産で貰った石鹸とか、航空会社のノベルティーも沢山。意外と思い出がいっぱいだ。

 最後に、お世話になった取引先へ退職の挨拶メールを送っていると、とても良くして下さった方から直ぐに折り返しの電話が来た。熊谷さんにはいつもお世話になってありがとう、と言われて、今更ながら寂しさが込み上げ、迂闊にも泣きそうになった。

 あぁ、私、本当に辞めるんだ。

 ここまで辞める現実味が全く無く、出社していた先輩と話していてもどこかふわふわしていた。でも、お客さんとの電話や、退職メールへの返信を見ていると、10ヶ月前まで確かに私はここで仕事をしていて、そして辞めるのだ。

 親の介護でUターンした際に、介護がある事を知った上で採用してくれた。東北で落ち着くのには、大変ありがたかった。慣れない出張手配や法人営業にあたふたもしたけれど、仕事が出来ることがなんて幸せだったのか、今なら分かる。

 それから5年10ヶ月、ラスト10ヶ月は休業だったけれど、明日、仙台の家の荷物を運び出す。荷造りはまだ終わっていない。会社は辞めても、新しい仕事を始めて私はまだまだ働いて行くのだ。明日は風が収まるといいなと思いながら、重い腰を上げ、段ボールに荷物を詰め込んで行く。

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