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ビートルズで人生は輝く

私のお師匠さんはビートルズです。
音楽的な師ということではなく、人生を明るく楽しく生きるためのお師匠さんです。
もちろん会ったことはないので、私が勝手にそう思っているだけなんですけどね(笑)。

今日本人は、何を土台に生きていったらいいのかがとても見えにくい、そんな状況に置かれています。
そのため、とても不自由に感じている人が多いように思います。
ビートルズは、そんな私たちにとって土台になり指針にもなる歌詞を残してくれています。
ビートルズの音楽、そしてメンバーたちは、最高に自由で楽しい人たちでした。
それは、彼ら個人が豊かすぎる才能を持っていたことに加えて、才能を発揮できる確固たる土台があったからだと、私は考えています。
この文章では、ビートルズの2つの曲から、その「土台」を探ってみたいと思います。

「Hey Jude」で輝く

はじめて買ったCDは、ビートルズの『パスト・マスターズ2』でした。

当時私は小学6年生。少ない小遣いをはたいてCDを買うなんていうのは一大事です。ですから、人生最初のCDは中古品で買いました。

もともとビートルズは、幼い頃から私の日常にさりげなくありました。私の家には電子ピアノがあり、たまに母親がビートルズの曲を弾いていて、私は子ども心に「いいメロディだな~」と感じていたものです。
なかなかいい家で育ったでしょう?(笑)

母が弾いていた曲の中でも特に印象に残ったのが、「Let It Be」、「Don't Let Me Down」、「Hey Jude」、「Yesterday」でした。なるべく知っている曲が多く入っているCDを買おう、と思ってCDを一枚一枚棚から引き出して見ていたら、『パスト・マスターズ2』にはそのうち3曲が収録されていたので、「よしこれだ!」と決めてレジに持って行ったのです。

でも、小学6年生だったら当時流行りの曲・・・例えば「モーニング娘。」とかでもよかったのに、どうしてあえてビートルズにしたのでしょうか。
その頃の私は、周囲の友達が好きな「芸能界」に対してほとんど関心がありませんでした。
関心がないなら関心がないでいいと思うのですが、その「関心がない」ということをもとにして「オレは周りとは一味ちがうんだぜ」なんていう気分に浸っていたのです。そんな自分をちょっとカッコいい・イケてる、なんて勘違いしておりました。
私なりに、世間に対して一生懸命突っ張っていたんですね。今思えばかわいいもんです。
何せ私、幼稚園の時には、周囲の大人が腕を振って歩くのを見て、「よし、ならぼくは腕を振らないで歩くゾ」なんて思うような子どもでした。周りと違うことが大好きだったんですね(笑)。

そんなこんなで、私がビートルズに導かれたのは、運命だったのかもしれません。

CDを買ってからというもの、毎日のように聴きました。
歌詞カードを読むのも好きでした。歌詞カードを見ながら何度も歌ったので、すぐに歌詞は暗記しました。宿題をやりながら(エラいでしょ?)ビートルズの歌を歌っているような小・中学生時代でした。

ありがたいことに、小学生の頃には、好きな友達と遊んで、好きなアニメを見て、勉強も特に苦労せず、そしてビートルズを聴いて幸せな日々を送っていた私ですが、中学生になるとイヤなことや大変なこともときに降りかかってきます。

そのとき私は、人生で初めて、「不幸」というか、気力が萎えてくるような、そんな感覚を味わいました。
そうはいっても、運の良いことに私は本当に友達に恵まれていましたので、友達といるときには元気になったり、また気力が萎えたりということを繰り返していました。

「気力が萎えたときには音楽だ」。そう思って、初めて買ったCDの『パスト・マスターズ2』を歌詞カードを読みながら聴いていますと、「Hey Jude」でポール・マッカートニーがこう歌っているのが、耳と目と胸にどーんと飛び込んできました。

きみだって 十分わかっているだろう?
自分の世界を冷えびえしたものにして
やたらクールぶってる奴が
どんなにバカげているか・・・・・・
(For well you know that it's fool
   Who plays it cool
   By making his world a little colder)

『パスト・マスターズ Vol.2』(1998年版)歌詞カードより 対訳:山本安見

「Hey Jude」には、当時離婚寸前だったジョン・レノンとシンシアの息子ジュリアンを励ますという作曲の意図があったそうです(でも、ジョンは離婚して新たにオノ・ヨーコとの生活に踏み出そうとしている自分への応援歌と受け取ったそう)。

そういった応援の意図が私にも伝わったのでしょう。この歌詞を読んだとき、「辛いことがあるからといって、人の前で冷めた態度を取ったら、人生が馬鹿げたものになっちゃうな」と、強力に納得しました。中学1年生のことでした。
それ以来、私は友達といるときには、いい友達と一緒にいられることに感謝し、その状況を楽しむようにすることに決めました。
そうすれば、不幸なんて忘れられるし、「楽しもう、明るく振舞おう」と思うことで、腹の底から活力も湧き上がってきます。
結果、中学校の生活も幸せで楽しいものにすることができました(ときには10人くらいで神社に集まって大笑いしていたものだから、ご近所さんには迷惑をおかけしたと思いますが・・・)。

ネガティブな状況ではなく、その時その場所で自分に与えられているものにフォーカスすること。それによって、自分を救うことができました。
でもそれは自分の力のおかげだけではなく、間違いなくビートルズの後押しがあったからです。

これが私の、ビートルズで人生が輝いた経験の一つ目です。

この章のまとめ:土台①・・・情熱を燃やす

「The End」で輝く

『パスト・マスターズ2』を買った後、私はお小遣いを溜めました。お金が溜まったら、次に「Yesterday」が入っている『4人はアイドル』を買い、その次には、これまた母親が好きだと言っていた「Here There and Everywhere」が入っている『リボルバー』を買いました。もちろん中古です。「お目当ての曲以外の曲もめっちゃいい!」と、どんどんビートルズの世界に深く入っていく私。ビートルズの曲は中学生の私に、弾けるような楽しさと自由を示してくれました。

ビートルズの曲のメロディは、音が自然な起伏で流れていくように感じます。人がつくっているはずなのに、人工的だと感じません。
もちろんクイーンやオアシスだって人工的だとは感じないのですが、ビートルズはもっと自然なように感じます。
だから、何回聴いても気持ちがいいのだと思います。
木々の自然な緑の色が、いつ見ても目に優しいのと同じようなことなのかもしれません。
私はビートルズの曲の、そんなところが好きです。

こんな風に、主にビートルズのメロディを楽しんでいた私ですが、歌詞カードを読むのも好きなので、歌詞を見ながら一緒に歌ったりもしていました。
そのおかげで、「Let It Be」で"agree"という単語の意味を覚えたり、『Paperback Writer』でリスニングのコツをつかんだりと、特に努力をすることなく英語が得意になっていったのもベリーラッキーなポイントです。

そのような点にありがたみを感じつつ、他のいろいろな曲の歌詞を読んでいると、特に中期から後期の曲の歌詞の中に、かなりの頻度で「( ゚д゚)ハッ!」とさせられる言葉を見つけました。

例えば、『パスト・マスターズ2』に入っている「The Inner Light」。その中にこんな歌詞があります。

遠くへ旅すればするほど
人は真実を識ることができなくなる
真実を学ぶことができなくなる
(The farther one travels
    The less one knows
    The less one learns)

『パスト・マスターズ Vol.2』(1998年版)歌詞カードより 対訳:山本安見

「何か深い・・・」。ええ、あなたが思った通り、確かに浅い感想です笑。
でも、こんな歌詞、テレビでは見たことがない。「今・ここ」を大切にしようと呼びかける歌はたくさんありますが、「The Inner Light」のように観点が個性的で、それでいて人生の本質を突いた言葉はそうしょっちゅう見ることができないと、なんとなく思っていたのでした。

この他にも「Across The Universe」で宇宙の果てに誘われ、「Let It Be」で無常と無執着の境地があることを知るなど、ビートルズの歌詞にはとても深くて高い世界がありました。
本当はこういったことは、日本の伝統文化から知ることができればいいですが、日本の伝統文化をわかりやすくかつ魅力的に中高生に伝えている人は、まだまだ少ないですからね・・・。

さておき、そういった高い境地の歌詞の中でも特に私の心に残ったのが、名盤『アビイ・ロード』の最後の曲、「The End」の歌詞でした。

そして最後に、きみの受ける愛は
きみがもたらす愛と等しくなる
(And in the end the love you take
    Is equal to the love you make)

『アビイ・ロード』(2009年版)歌詞カードより 対訳:奥田祐士

あっぱれ。悟ってますねぇ。

うろ覚えですが、おそらく当時私が読んだ歌詞カードでは、「結局、君が受け取る愛は、君が与える愛と等しい・・・」といった感じで訳されていたような気がします。

愛を受け取るために自分が取るべき行動について、考えたことがあるでしょうか?この歌詞を見たときに、「そっか、愛を得るためには"欲しい"と思っているだけじゃダメで、自分から与えないといけないんだ」と、心の目が啓かれた感じがしたことをよく覚えています。

先ほど「Hey Jude」のエピソードのときにもお話ししましたが、私の人生が苦しいとき、それでも友達がいるおかげで楽しい時間を過ごすことができました。
もちろんそれは、私の友達が、彼らのそれまでの人生で、人格をステキに磨いてきてくれたおかげです。彼らのお母さんお父さんにも感謝しないといけません。
ですが、私の友達が彼らの中にある魅力的な面を私に出してくれたのは、私が「友達の前では明るく振舞おう」としていたからこそでもあるのです。
これがもし、「オレは苦しい思いをしているのだから、友達からは助けてもらって当然だ」とずっと暗い表情で気遣ってほしげな雰囲気を醸し出していたらどうでしょう。
きっと友人たちも、「めんどくさ(笑)」という感じで、私のことを遠巻きに眺めるような距離感になったのではないかと思います。

この歌詞を見て以来、私はその前にどんな嫌なことがあっても「オレにあった嫌なことは、オレの友達とは関係ない。オレの大切な友達が楽しい気分でいられるように、前向きな気持ちで友達の顔を見よう」と、気持ちを切り替えるようにしました。
具体的には、友達が話していることをよく聞いたり、みんなでしている楽しい話がもっと楽しくなるように言葉を添えたりと、自分にできることをしました。
だからこそ、不幸なことを乗り越えて、最後はみんなで笑って中学校を卒業することができたのでした。
卒業式の日の帰り道、ちょっぴりしんみりした気持ちになった私たちは、みんなで友人の家の駐車場の車止めに座って、3月のちょっと湿った青空を見上げたのでした。

今考えてみれば、これらの素敵な思い出をつくることができたのも、"愛の力”が働いていたからなのかもしれません。
また、ビートルズで人生が輝いちゃいましたね。

さて、私の人生をステキに輝かせてくれた「The End」の歌詞ですが、一体ビートルズ(この曲の作詞はポール・マッカートニーですね)は、なぜこのような歌詞が書けたのでしょうか?

「The End」にあるような「与えたら与えられる」といった教えは、キリスト教の中にも見ることができます。

与えなさい。そうすれば、あなたがたにも与えられる。押し入れ、揺すり入れ、あふれるほどに量りをよくして、ふところに入れてもらえる。

『新約聖書』「ルカによる福音書」新共同訳

また仏教にも、「善行を積めば善いことが起こる」という教えがあるように、この教えは世界中の様々な宗教に見られるものなのでしょう。

ビートルズのメンバーはイギリス人ですから、キリスト教の影響は当然大きいと思います。でもビートルズを語る上で忘れてはならないのは、やっぱりインドです。
1967年、ビートルズのメンバーは5、000年の歴史を持つインド伝統の知恵の体系「ヴェーダ」のマスターであるマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーから"超越瞑想"を学びます。続く1968年には、マハリシの教えをより詳しく学ぶために、インドのリシケシュに行きました。

ビートルズについての解説をいくつか読むと、インドへの旅とそこでの瞑想によって、ビートルズのメンバーはより創造的になったと言われています。
実際、ジョージ・ハリスンはそれから自身が持っていた素晴らしい作曲の才能をますます開花させていくことになりますし、ポール・マッカートニーも「Let It Be」「Get Back」「The Long And Winding Road」など次々と大傑作を生みだしていきます。
ジョン・レノンも作曲数が増え、リシケシュでの合宿を経てつくられたアルバムの『ザ・ビートルズ』(通称”ホワイト・アルバム”)はグループ初の2枚組アルバムとなります。一方リンゴはミュージシャンとしてだけでなく俳優としての活躍も増えていきました。

このインドの旅は彼らにとっても、また彼らの作品を受け取る私たちにとっても素晴らしいものになりました。2022年にはインド滞在中のビートルズを撮影したポール・サルツマン監督による『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』も公開されましたが、インドのリシケシュでの生活はいたってシンプル。瞑想して、マハリシの講義を聴き、自由時間にはおしゃべりしたり曲をつくったりするというものだったそうです。

そのときのマハリシの講義がどのような内容だったかは具体的にはわかりませんが、マハリシの教えは書籍や映像として残っています。その中には以下のようなものがあります。

だれかの愛を得たいと思ったら、その人に愛を与えることです。

『超越瞑想―存在の科学と生きる技術―』マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー 2011年(初版1963年) p121

受けるためにはまず与えるという、この原則によって導かれるならば、受けるものは、与えたものに等しいか、あるいはそれ以上になります。

『超越瞑想―存在の科学と生きる技術―』マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー 2011年(初版1963年) p125

マハリシの教えは、すべて5000年の歴史の蓄積があるヴェーダの教えにもとづいています。ヴェーダは宇宙の法則をはじめとても多くの内容を扱っています。マハリシはそれらの法則をわかりやすく嚙み砕いて伝えていました。

マハリシは、愛を「受ける」ためには、まず「与える」必要があると説きます。これは宇宙の原則だとも。その原則によって、「受けるものは、与えたものに等しいか、あるいはそれ以上になります」と語っています。
特に、この教えの「等しい」という言い回しは、マハリシに独特のものであるように思います。
おそらくポールは、マハリシの講義でこのような内容を聞いたか、1963年に出版されたこの本を読み、自分の作品に活かしたのだろう、私はそのように考えています。

もちろん、厳密な考証はしていないので、私の考えは間違っているかもしれません。ポールと話す機会があればぜひ直接質問してみたいです。でも、本人と話せなくとも、このように事実を元に想像を膨らませて楽しむのも、ビートルズのひとつの楽しみ方ですし、ビートルズがくれる輝きの一部分だと思います。

こう考えたとき、後期のビートルズの土台には古代からの叡智があって、私たちはビートルズの楽曲を通してその輝きを受け取っているのだということが見えてきます。

もともと才能豊かな彼らが、そのような伝統を身につけたら、まさに鬼に金棒。無敵です。
そんな無敵の輝きがあるからこそ、解散から半世紀以上たっても、私たちはビートルズに魅了されるのかもしれません。

みなさんもぜひ、「The End」を聴いて、この輝きを感じてみてください。
目指せ1億回再生!(笑)。

(もう1回貼っときますね)

まとめ:土台②・・・受け取るためには、まず与える

マハリシの「ゆるし」for The Beatles

 このシングルは、メンバーが超越瞑想を学びにインドへ行っているあいだに発売された。

『パスト・マスターズ Vol.2』(1998年版)歌詞カードp13

私が最初に買ったCDが、この『パスト・マスターズ Vol.2』だということは、すでにお伝えしたとおりです。
そのとき私は小学6年生でしたが、ライナーノーツを読んでいて、「超越瞑想」という言葉に出会ったとき、かなりビックリしました。
まずその文字面が強烈です。「超越」という言葉の強烈さ!(笑)。正直言って、「怪し~」と思っていました。

第一印象は「怪しい」と思ったこの「超越瞑想」ですが、やっぱりビートルズがやっているだけあって、実はすごいものなんじゃないか、いや、きっとすごいものなんだろう、ということも思っていました。

とはいえ、やがて私は超越瞑想についてはすっかり忘れてしまい、そのまま時が経ちました。
ですが大人になっていろいろな縁があり、また超越瞑想に出会うことになったのです。

この瞑想、実はかなり多くの人から愛されているものだということがわかってきました。
超越瞑想の実践者は世界中にいます。
ビートルズと同じミュージシャンだと、ビーチ・ボーイズのマイク・ラブ、レディ・ガガ、ケイティ・ペリー。意外にも・・・といったら本人たちに失礼かもしれませんがレッド・ホット・チリ・ペッパーズのメンバー全員もやっているそうです。
日本では『笑っていいとも!』のテーマソング「ウキウキWatching」を作曲したギタリストの伊藤銀次さんも実践しています。

俳優では、『アヴェンジャーズ』シリーズに、アイアンマンのパートナーであるペッパー・ポッツ役で出演していたグウィネス・パルトロウ。ヒュー・ジャックマン、トム・ハンクスなどなど。
俳優であり映画監督でもあるクリント・イーストウッドは、軍人のPTSD軽減に効果があるため、退役軍人に瞑想を教えるプログラムを支援しています。さらに、『マルホランド・ドライブ』などの奇抜な映画を撮ることで有名なデヴィッド・リンチ監督は、デヴィッド・リンチ財団をつくり、超越瞑想の普及に努めています。
加えて、『スター・ウォーズ』シリーズの生みの親ジョージ・ルーカスも超越瞑想を実践しており、マハリシの教えを作品の中に活かしています。
日本人では、京セラやKDDIを創業した稲盛和夫さんをはじめ経営者で実践している人がいます。ソニーなどは一時期会社全体で導入していたそうです。
こんな感じで、挙げていけばキリがないほどたくさんの著名人が実践しています。世界中の瞑想実践者を合わせると1000万人以上になるといいます。
あ、そうそう。忘れちゃいけないこの人も超越瞑想を実践しています。
それは私です(笑)。私も超越瞑想を10年以上実践しています。
ちなみに、私が瞑想をはじめたときにはマハリシはすでに亡くなっていたので、マハリシが確立した指導方法をマスターした教師から習いました。今は超越瞑想を指導できる教師が世界中にいて、その教師が瞑想を教えています(超越瞑想を実践するには、資格を持った教師から直接教わる必要があります。気になる方は、最後に公式ホームページのリンクを載せておきますのでご覧ください)。

ビートルズのポール・マッカートニーとリンゴ・スターも、デヴィッド・リンチ財団が超越瞑想を普及する活動を支援しています。関連するインタビュー動画が超越瞑想の公式YouTubeチャンネルにアップされています。

またリンゴは以前自分の誕生日に自身のYouTubeチャンネルのライブ配信で、財団が医療従事者のストレスを超越瞑想で和らげる支援をしている様子を紹介していました(アーカイブは残っていません)。

このようにビートルズのメンバーは、今に至るまで超越瞑想と深く関わっています。ですが一般的には、ジョンが書いた「Sexy Sadie」によって、マハリシや超越瞑想に良くない印象を持っている人も多いのではないかと思います。

しかし、ジョンに「Sexy Sadie」を書かせたマハリシに関する噂は、実は間違いだったということがわかっています。

ポールとリンゴが今なお超越瞑想の普及に熱心であるということがその何よりの証拠だと考えられますが、ここでは当時リシケシュに行っていた、ビートルズではない人の証言をみなさんに報告したいと思います。

 わたしたちがインドを離れるまであと数週間というときに、マジック・アレックスが、マハリシが弟子のひとりの若いアメリカ人女性に不適切なふるまいをしたとして、騒ぎ立てた。マハリシに釈明の余地も与えず、ジョンとジョージはアレックスの言うことを鵜吞みにして、残りのビートルズ一行でインドを引き上げることにしてしまった。
 驚いた。わたしはアレックスがそのアメリカ人女性といっしょにいるところを目撃していた。若くて感受性の強い女性だ。不純なのはむしろアレックスのほうではないかと思った。インドにいるあいだ、アレックスが瞑想しているところを、わたしは一度も見たことがない。驚いたのは、ジョンとジョージのふたりとも、師のマハリシではなく、アレックスのほうを信じたということだった。

『ジョン・レノンに恋して』(原題『John』)シンシア・レノン著 2007年 p267
太字はわたくし、だいじょうぶ国師による

マハリシやその弟子たちからあれほど親切や好意を受けて楽しく過ごしてきたのに、軋轢や不信感を残したままインドを去らなければならなかったことを、わたしは心苦しく感じていた。

同著p268

こちらは、ジョン・レノンの最初の妻であるシンシアによる証言です。
この中ではっきりと明言しているわけではありませんが、不誠実だったのはマハリシではなく「マジック・アレックス」だった、と言いたいことは明白です。

このマジック・アレックスという人を知っていますか?熱心なビートルズファンの方なら知っているでしょう。そう、2021年にディズニープラスで配信された映画『GET BACK』にて、ネックが回転する謎のギター兼ベースをつくってメンバーに失笑の渦を巻き起こしていた、あのマジック・アレックスです!

この人はどうやら自分のことを天才発明家だと信じていたようで、そんな触れ込みでビートルズに近づいたのでした。
ですが実際は、『GET BACK』でも観たように、ビートルズの新しいスタジオの機材をつくったところ、許容できない量のノイズが検出されてしまい、結局他のところから機材を持ってこざるを得ない状況にしてしまったという単なるおさわがせ男でした。

しかも、インドに行ったにも関わらず、シンシアの証言では一度も瞑想していないと(笑)。
超越瞑想はかなり気持ちがいいものなので、やれと言われなくても自然とやりたくなってしまいます。それでもやらないのだから、アレックスはよっぽど落ち着かない心の持ち主だったのでしょう。

実は、ジョンが「Sexy Sadie」を書くきっかけになったマハリシの噂も、マジック・アレックスがビートルズをマハリシから引き離そうとして流したものだったのです。

そのことを知ってか知らずか、リシケシュから帰ってのち、ジョージ・ハリスンは『ホワイト・アルバム』のセッションで「Not Guilty」という曲を書いています。
 「ジョン、ポール、アップル、リシケシュのインド人」たちに向けられたというジョージらしい雰囲気のこの曲は、自身とインドとの関わりの正当性を多生の皮肉を込めて歌っています。

特にこの曲の

I'm really sorry that you've been misled…
(誤解される君がかわいそうだと思うよ)

「Not Guilty」アルバム『慈愛の輝き』1979年 対訳:山本さゆり

という部分における「君」はマハリシを指していると思われ、マハリシを擁護したい気持ちが伝わります。

この曲は結局『ホワイト・アルバム』には収録されませんでした(その11年後に発表される『慈愛の輝き』に収録)が、100回以上のテイクを重ねているところに、ジョージのこの曲にかける執念ともいえる強い想いがあると推測されます。

さらに、1969年の時点ですでにインドでの体験を前向きに捉えなおしていると思われる様子もあります。

先ほどから再三触れている『GET BACK』のパート2において、アップルのスタジオでリシケシュでの体験についてメンバーでおしゃべりするシーンを見ることができます(2:16:46あたりから)。

少し長いですが、資料としての価値も高いと思われますので、その様子を書いておきます。
以下のおしゃべりは、ポールが、「この前、リシケシュに行ったときに撮影した映像を見返して、それが素晴らしかったんだ」と話題を振るところからはじまります。

ジョージ:行ったの後悔してる?(Do you regret…having gone there?)
ポール:してない(No, no. Oh no.)
ジョン:*日本語字幕なし(I don't regret anything ever.  **何も後悔してない)
ポール:ただあそこでの僕らは誠実じゃなかった。"学校みたいだ"なんてコソコソ言ってた(I just think, what we did there, we weren't really very truthful there. You know, things like sneaking behind his back and sort of saying, "It's a bit like school, isn't it?)
(中略)
ポール:僕らはもっと自分自身で・・・(It's that thing, we probably should have sort of just…)
ジョン:いるべきだった(Been ourselves.)
ポール:*日本語字幕なし(-Yeah, a lot more. Yeah.)
ジョージ:"自分自身でいる"ってジョークもいいろことだな 自分は何者かを探しに行ったわけだから(That is the biggest joke, to be yourselves. 'cause that was the purpose of going there, to try and find who yourself really is.)
ジョン:で見つけた(Yes. we found out, didn't we?)
ジョージ:そうなら全員今みたいになってない(And if you were really yourself, you wouldn't be any of who we are now.)
ジョン:"自然に振る舞え"か(All act naturally then.)

『GEt BACK』part2 2021年 Disney+
**は筆者の訳

このやり取りから、ジョンもポールもインドに行ったことは後悔していないことがわかりますし、もっと誠実な姿勢で臨めばよかったとさえ言っています。
もしマハリシの噂を信じているのであれば、こういった会話をするでしょうか。

私たちビートルズファンも、このあたりのことについて認識を改めておくと、さらに楽しいビートルズ観を創ることができそうです。

そしてこの出来事が最終的にどうなったかというと、ビートルズ側からマハリシに謝罪をし、それをマハリシがゆるしたのだということです。
そのとき、マハリシはこのように言ったそうです。

「ビートルズは地上の天使のようだと思った。ジョンが何を言ったか、何をやったかは大したことではない。私は天使に腹を立てることなどできない」

マハリシとビートルズとの本当の関係 - 【超越瞑想の情報サイト】メディア・レビュー・エビデンス (maharishi.or.jp)

やはりこの点、ビートルズのメンバーたちはよき師を持ったのだと言えましょう。
当時世界一の人気を誇っていたビートルズから曲を使って攻撃されるというのは、相当に名誉が傷つくことだったと思います。
それを無邪気にゆるしてしまえるというのは、よほど強くて明るい心を養っていないとできません。
そういった意味で、マハリシは「本物」でした。
本物の師を持てた彼らは幸福だったと思いますし、好きなアーティストにそんな関係があったと知ることができた私も幸福です。

マハリシはその後、2008年に91歳で亡くなりました。
ですが、その志を受け継ぐように、ポールとリンゴは超越瞑想の普及を続けています。
さらに、彼らのような生前の弟子たちだけでなく、多くの著名人からの支持を得ることになり、世界中でますます発展しています。

「ゆるす」ということは、人生を発展させる上でとても重要なことです。
私たちも、ビートルズの音楽を聴いて「これでいいんだ」と自分をゆるせた経験があると思います。
一方、そんな音楽をつくった彼らもまた「ゆるされた」存在だった。

彼らも失敗し、ゆるされたりしながら人生を歩んでいるという点で、私たちと同じです。
憧れのビートルズと同じだと思えば、多少の困難は乗り越えられそうです。
ビートルズとマハリシの関係を学んで、そんなことを思ったのでした。

おまけ
・超越瞑想の公式サイト(瞑想の効果についての科学的なデータなどが閲覧できます)

「The End」で輝く の章で引用した文章の、より長いバージョン

あなたがある人に対して心を開けば、その人もあなたに心を開きます。だれかの愛を得たいと思ったら、その人に愛を与えることです。だれかから親切で同情的な態度を得たいと思ったら、その人に親切にして同情することです。だれかに慰められたかったら、自分から慰めることが必要です。他人から称賛されたかったら、人々に対する称賛の気持ちを表すようにするべきです。真心で人に与えるなら、何倍もの報いを得ることでしょう。

(『超越瞑想―存在の科学と生きる技術―』マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー 2011年 p121)

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