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「中間管理職の限界」と「マネジメント民主化モデル」について


中間管理職は限界なのか?

本記事は、本日2024年7月1日21:00にNewsPickで放映される【2Sides:中間管理職は不要か?】という番組に関連した記事となります。

動画については、『罰ゲーム化する管理職』など、数々の名著を生み出していらっしゃる、パーソル総合研究所の小林祐児さんとMCの加藤浩次さんとのセッションであり、最終的には明るい内容でまとまっています。

本記事については、本動画で提唱している「マネジメント民主化モデル」について解説しつつ、坂井の会社でエンジニア採用を開始することに伴い、「なぜ坂井が本事業をやっているのか?」についても触れていきたいと考えています。(※採用情報は末尾となります)

形骸化する管理職研修

昨今、小林祐児さんの『罰ゲーム化する管理職』に代表されるように、「管理職の過剰負荷問題」が騒がれるようになりました。

実際に、坂井も企業のマネジメント基盤の支援をする中で、「マネージャーが理論や実践方法を理解したとして、実行しきれない」という問題を見てきています。

踏まえて、いわゆる「管理職研修」は内容などの質以前に、「その層にだけ焦点をあてても特に機能しない」という状況になっているのかもしれませんが、なぜか毎年儀式的に行われているものも数多くあることでしょう。

人事機能の歴史と管理職への負荷集中

「なぜ本問題が発生しているか?」を人事機能の歴史の観点で考えると、下記のような潮流が存在していると考えられます。

つまりは、日本の人事機能については、①元々は「人事部に集約」されていたが、②バブル崩壊以降は「事業部門に分権化」がなされ、③2015年以降の「多様な働き方への対応」に伴い、難易度と複雑性が向上した。④加えて、現場マネージャーは、元々の業務に加えて、人事施策の運用の担い手を引き受けることになってしまい、「マネージャーの過剰負荷問題」が深刻化した、という経緯となります。

それにも関わらず、「エンゲージメント向上」が最たるものですが、曖昧な目標/手法が渡され、結局現場マネージャーとしても何をしていいのか分からず、そもそも、すぐに辞めるかもしれない社員に対して、どこまでケア工数を割けばいいのか?という疑問/もやもやを抱えたまま「マネジメントを任される」という状況と捉えています。

なぜ本問題は解決されないのか?

本問題について、現場マネージャー以外のステークホルダーである、A:人事サイド、B:経営サイドから、問題の複雑さを解説していきます。

A:人事サイド⇒人事施策のリーダーシップ難易度が高すぎる

「うちの人事は機能していない」という話を聞くことがありますが、課題視されている「人材育成/マネジメント領域」は、ステークホルダーが多く、成果説明がしにくいこともあり、高度なリーダーシップが求められます。

そうなると、下記の図のように、「組織の機能不全」を加速させる人事のリーダーシップの喪失問題が発生し、「組織施策の人事パッシング=人事を通さずに事業部が個別でプログラムを導入する等」の流れも生じていきます。

この流れの中で、当たり障りのない施策として「社長対話会」「マネージャー対話会」などを導入したとて、「また人事がわけのわからないことをやっているよ」で白けが発生し、さらに人事施策の巻き込み難易度が上がっていきます。

また、「情報収集だけは無限に行っているが、特に施策を決断・実行しない人事」というのは、よく見る光景かもしれませんが、そもそも人材育成・マネジメント領域の課題は、巻き込み難易度が高いために、並大抵のリーダーシップでは挑みにくい課題になっている、という話なのだろうと推察しています。

ただし、この領域に果敢に挑めるかどうかで、「人事の価値」や「キャリア」が大きく変わっていると感じており、その点について、2024年7月10日登壇予定のHR SUCCESS SUMMIT1にて話す予定です。

ただ、イベントに先んじて言いたいこととしては、「葛藤なき改革」など意味があるのか?ということです。

何かの改革にあたり、一時的な摩擦や高い壁があるのは当然のことであり、施策の推進において、簡単に諦めてしまう人に一体何ができるのだろう?と思うことがあります。(ただし、長年培われた「学習性無気力」があるのかもしれません)

「解きやすい課題」ではなく、「みんなが解きたいと考えているけど、なかなか解決できずにいる課題を、覚悟を持って推進する」という経験のほうが、よっぽど自己効力感も上がりますし、この経験をせずに年次だけ上がっていく方が恐ろしいと恐ろしいと思います。

そもそも、人事のリーダーシップがなければ、組織のリーダーシップが底上げされることはないはずです。

B:経営サイド⇒アウトプットプロセスに無関心

ただし、経営サイドにも問題があり、「うちはマネージャーも人事も機能していない」という話は、すなわち「経営が機能してない」にほぼ等しいので、ブーメランだなと思います。

私自身も経験したことがあり、申し訳ない気持ちもありますが、「最終成果物が問題なく上がってきているうちは、生産プロセスの異常を途中まで検知できない」という問題が発生します。

「は?社員の愚痴なんて聞いてられるかよ?」と言って、意見を切り捨てるのは違うと思います。何かしらのアラートと捉える方が健全です。

加えて、下記のように本当に変わらないといけないのは「経営者自身」であるにも関わらず、「マネージャーが変わって欲しい」と言っている状態も、たまに見ますが、これでは何も変わりません。

経営者の率先垂範の重要性

先週、楽天の三木谷社長がインタビュー動画で年間1000社営業をしているという動画を観ましたが、とても素晴らしいなと思いました。過去に読んでいた組織変革の論文においても、下記が成功要因として記載されていましたが、全くその通りだと思います。

経営トップはその時点で「まったく現実味のない」高い希求水準を
掲げ,組織メンバーの挑戦や自律を促す一方で,自らは全力で収入の確保に努め,挑戦の基盤を固めていた。

『変わり続ける組織の「遠投経営」』(安藤史江 著 · 2022)

自分で泥臭く利益を作れない経営トップの元では、同じように行動するリーダー陣や社員は出てこないはずです。

坂井自身、楽天さんの一部署をご支援していた経験がありますが、プログラム終了後に「楽天モバイル」の紹介をしてくださり、これが組織文化か…!と思いました。(実際、とても満足しています)

つまり、「経営トップがかける範囲での恥や汗しかかかない」という状況では、泥臭く実行する文化など生まれるわけがないという話です

なぜ企業がエリート化すると失速するのだろう?と考えた時に、「恥と汗をかける範囲」が狭まっていくからだと考えております。メガベンチャーで堅実に伸び続けている企業は、ここの部分で躊躇がないので、こりゃ強いわと感じます。

実際に、坂井のプログラムでも経営陣の方々が一緒に受講し、一番学んでくださる姿勢を出している企業が何社もいらっしゃいますが、「経営者が組織文化を他人事にしない」が大事だと思います。

両サイドの課題から思うこと

踏まえて、「人事サイド」「経営サイド」の両方に思うことですが、「リーダーシップ研修を企画する前に、まずは自分が泥臭く決断と実行の姿勢を見せる」が大事なのではと思います。

前職でコーチングが過剰流行していた時も、「涼しい場所から左団扇で問いかけてくるなよ…」「経営者・事業家育成の前に、まずは自分が事業をやろうよ…」と正直思っていました。

そもそも、時たま見かける「コーチング絶対化現象」に対しては違和感を覚えており、①どういう課題に対して⇒②どういう理論を元に⇒③どうコミュニケーションをとって⇒④どういう状態にするのか?という全体設計の方が重要だと考えており、「銀の弾丸」ほど危ないものはありません。個人的に「硬派で骨太なものを徹底的に追求したい」という想いがあるために、ここには過剰反応している可能性があります。

マネジメント民主化モデルについて

上記の課題を踏まえて、坂井が最近提唱しているものが「マネジメント民主化モデル」というアプローチになります。

簡単に言えば、「人材育成・組織マネジメント理論を、マネージャー・メンバー・人事のみんなが使えるようにすることで、みんなで良い職場・良いチームを作ろう」という話となります。「マネージャーだけがマネジメントする」というのは、もう限界なのだと考えております。

実際、下記のカプコン社の記事にある通り、『新人も受けるカプコンのピープルマネジメント研修 その狙いと裏側にある人事の泥臭い取り組みとは』がサンプルとなりますが、坂井の感触としても「このモデルでいけそうだな」と思っています。

というのも、新卒1-2年目の方が坂井のプログラムを受講することがありましたが、柔軟に取り入れて、自分に使う&チームに使う行動を積極的に取ってくれていました。人材育成理論は自己成長理論の裏返しであり、より良いチームを作るマネジメント活動は、誰でもできることです。

逆に、「人材育成/マネジメント理論は、いつからマネージャーだけが覚えて実行するものになってしまったのだろうか?」と思い始めました。

というのも、坂井自身、前職の人材育成やマネジメントに違和感を覚えてから、徹底的に論文などを読み漁っていましたが、マネージャーになる前から自分でノウハウを開発して自分に使用していましたし、それが故に、仕事でうにうに悩むということは、あまりありませんでした。(たぶん、1ヶ月後には解決策を見つけていたからだと思います)

今も「この理論で考えると、こういう悩みだから、こうすればいいな」と思っているだけであり、八方塞がり状態で悩み続けることは特にありません。それはメンタルが強いとか、そういう話ではなく、「技術的な引き出しが多いから」に尽きると考えています。

理論があれば、事業に向かえる時間が増える


実際に、坂井のご支援先であり、とんでもなく社会的意義のあるプロダクトを作っているコドモンさんも、下記の記事キャプチャの通り、研修の録画・資料を全社的に展開くださっています。坂井としても、これが理想だと思っています。

出典:【後編】新たなステージに向けて。“いま“コドモンが組織基盤を強化する理由


また、そもそも導入の決め手について、下記のように「事業に集中するために組織的な課題を解決する~」と書いてくださっていますが、それこそ坂井の本意でございます。

坂井さんがこうしたプログラムを展開している理由として「事業に集中するために組織的な課題を解決する」というところを挙げている点も決め手の一つになりましたね。今回マネジメント基盤の構築に着手している背景や、コドモンらしさを維持し続ける上でも、その考え方がすごくフィットしたのではないかと思っています。

【前編】新たなステージに向けて。“いま“コドモンが組織基盤を強化する理由

坂井もDeNAという「コトに向かう」を標榜している企業出身であり、「顧客価値に向かう時間を最大化すべき」と考える傾向にあると感じます。

ただし、単純に「コトに向かえよ!」と言っても、そう簡単には上手くいかず、その威圧感によって「人や所属組織にどう思われるか?」が中心となり、あまり本質的な価値に向かわなくなるジレンマも見てきました。(ちなみに、本当にコトに向かっていたら不正は起きないです。コトに向かえ!が他者隷属化の道具に成り下がるのは危険です。この不正課題は、フォロワーシップ理論/取引コスト理論で説明できる問題だと考えています。)

ゆえに、事業価値に真っ直ぐに向かえる時間を増やすため、もしくは、特定の誰かにマネジメント負荷が寄らないために、「全社で、人材育成・組織マネジメント基盤を共通言語化しておくこと」が重要と考えています。

コドモンさんに限らずですが、社会的意義もあり、顧客に価値を提供したいと考えている企業や内部の方々が、「うちの組織ならば、この価値を実現できそうだよね!」と思ってもらえることが、坂井の事業にとって最も大切なことです。

逆に言えば、「事業はいいのに、組織が悪いからこの場を去る…」という悲しみ・諦観をなくしたいとも考えています。

※ちなみに、坂井がコドモンさんを心から応援しているのは、「子育て環境」を重視しているからであり、そもそも子供の時から「基本的自尊心」などを育んでいることが、社会人になってからの活躍・幸福にも影響してくるためです。現在、コドモンさんでは経営企画・事業企画などを採用中とのことですが、坂井としても、心からオススメできる企業様でございます。

坂井の今後とSaaS事業について


かれこれ2年ほど、研修事業を展開しておりましたが、おかげさまで、日本を代表する大企業・国立大学・官公庁・スタートアップなど、150を超える組織を支援してまいりました。

ただし、今後はSaaSプロダクトを開発し、世の中、というよりも、お客さまを、より助けられるような事業を展開していきたいと考えています。

「地に足つかないことはしない」というポリシーにより、元々BPO的に事業を構築し、顧客ニーズを見定めた上でプロダクトを開発しようと考えておりましたが、目の前のお客さまを助けられるのはこれかな?と思えるようなものが見えてきました。

ノーコードで検証をしており、デザインは作成しておりましたが、ここからは実装フェーズになってきます。

本プロダクトは、人材育成/マネジメントの歴史を変え、新しいスタンダードを作れるようなものになると考えています。

関わってくれた人が「あのプロダクトの開発に携わってよかったな」と、何年後かに誇れるものを作ることが大事なんじゃないかなと思います。

ただし、そういう壮大な大義は、ひとつひとつの顧客の喜びの積み重ねの上に成り立つものであるので、まずはそこを大切にしていきたいとも考えています。

踏まえて、ご興味のあるエンジニアの方がいらっしゃいましたら、ぜひご応募いただけますと幸いです!







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