ミーコの木魚(ネコクインテット)
亡くなった猫のミーコの一周忌の法要でのこと。
ミーコそっくりの猫型にデザインされた特別な木魚を使用してもらうこととなった。法要が始まり木魚が叩かれる度に、様々な声色でにゃうん、にゃうんと鳴いている。
ミーコは感情の起伏を鳴き声で表現する猫で、喜怒哀楽に加え、落ち込んでいる状態の時にも声にならないようなちいさな声で鳴くその様相はひとり(一匹)クインテット奏者だった。
この木魚はまさにミーコのような声色で鳴っていた。
ミーコ型の木魚は最初こそ丸く固まっていたが、長いお経に飽きたのか少しずつ手足を伸ばし仏様の前で寛ぎはじめた。
そのうち何度叩いても鳴かなくなり、終には部屋の隅に移動したので、皆は笑い僕は恥ずかしいやら可笑しいやらで赤面するばかりだった。
そして読経が終わるとお坊さんが仰った。
「今回のお布施はこの木魚でいいですよ。これを使うと、他の法事でも皆さん飽きずに聞いてくれそうで」
そう言うとにゃっと笑った。
(了)
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