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本を飼う(しゃべる画像)

 昨今の流行りは『本を飼う』こと。
 本に愛情深く接していると、そのうち本の方から飼い主にすり寄って自分のことを色々と話してくれるようになるのだ。
 最近僕は母親にTATSUYAで買ってもらった洋書を飼い始めた。
 最初の頃はコミュニケーションが全く取れず洋ちゃんが何を求めているのか理解出来なかったが、一月経つ頃には話が聞き取れるように。まるで人間の子供が少しずつ話し始めるみたいに、洋ちゃんとの会話は散歩中にも徐々に増えていった。英語は苦手だったので自分でも驚いた。
 洋ちゃんとは三月経つ頃にはすっかり意志の疎通が出来るようになり、毎日凄く嬉しそうに僕に抱きついてくる。
 そんなある日、とある小説が映画の原作に選ばれた。途端にそれを飼い、小説の内容を頭に入れ映画を観に行く人が増えたが、ある時年配の男性に飼われていた散歩中の子が、飼い主に伝わるようにスクランブル交差点の真ん中で大声であらすじを話してしまった。
 以後、本の散歩は法律で禁止されることとなった。

                (了)


このお話はこちらの企画に参加しています❣️



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