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【DAY94】生命を落としかねない〝ダイエットドラッグ〟について

きのうちょっとつぶやいて予告しましたが、今日この記事で採り上げたいのは、「GLP-1」と「やせるゼリー」というものです。
「やせるゼリー」というのは「シブトラミン」(sibutramine)を含む商品ですね。〝ダイエットドラッグ〟と呼んでもいいような代物だと思います(この「シブトラミン」というのは、医薬品成分ではあります)。

また、「GLP-1」は、正確には「GLP-1  受容体作動薬」という真っ当な糖尿病治療薬ですが、糖尿病を罹患してない普通の若い女性などがダイエット目的で使用してるわけです。

「GLP-1」低血糖に陥って生命の危険も…

ちゃんと言っておきますが、医師の処方が必要なまともな薬です。
でも、「食事制限や運動なしにみるみる痩せる」だの「おなかに(注射を)打つだけで痩せる」だの、こんな感じの謳い文句で、「GLP-1 受容体作動薬」を使ったダイエットのさまざまな広告が出稿されてます。

で、出してるのは、少なからぬクリニックなど。これらはれっきとした医療機関ですよ。
私も糖尿病を患ってた人間なので(今は完治してます)この手の薬のことはそれなりに知ってます。実際に使ったことはありませんが…。
糖尿病患者じゃない方が安易に手を出すべきじゃない薬だと思いますが、クリニックが糖尿病患者じゃない方に出してるということです。個人的にはかなり驚きました。

この薬、本来必要とされる患者さん以外が使用するのは、かなり危険でしょうね。生命の危険さえあると聞きます。

「GLP-1 受容体作動薬」とは何なのか?

「GLP-1」は、もともと体の中にあるホルモンのひとつで、血糖値を下げる働きがあります。この働きを補助できるのが「GLP-1 受容体作動薬」と呼ばれるものです。
食欲を低下させる働き、消化管の運動を抑制する働きもあるため、海外では肥満の治療薬としても承認されてたりはします。

それだけ聞くと「いいじゃん」と思われそうですが、副作用があります。血糖値が下がりすぎると、低血糖状態になり、倦怠感や意識消失といった症状を引き起こします。

深刻な副作用が出る場合も…

糖尿病薬の中では、比較的低血糖を起こしにくいとされてるものではあるんですが、当然、絶対低血糖にならないというわけではないです。

実際に「GLP-1 受容体作動薬」を用いたダイエットをされてる方が低血糖発作を起こして、意識障害で救急搬送となった例があります。
この方は、適切な治療によって意識を回復したものの、ひとり暮らしなどで誰にも気づかれない場所で意識を消失、救急搬送されなかった場合は、生命を落としていた可能性も、もちろんあります。

低血糖は最悪の結果につながりかねない重篤な状態だということを、きちんと理解する必要があるでしょうね。
こうしたリスクを考えたら、「GLP-1 受容体作動薬」を使うダイエットは、少なくとも食事や運動によるベーシックなダイエットよりも先に行うようなものではないと言えるでしょう。

どうしても、個々に事情等があって、医療により体重を落としたいという方がいらっしゃったら、糖尿病専門医や肥満症専門医がいるクリニックなどを受診して、相談してみてはいかがかなと思います。

各自治体へ健康被害の相談が相次ぐゼリー

「食べたらやせることができる」と、そのカンタンさを謳って、SNSなどを通じて販売されたゼリーをめぐって、各自治体へ健康被害の相談が相次いでいるといいます。
この商品には、日本国内では未承認の「シブトラミン」という医薬品成分が含まれてまして、この成分を摂取後に死亡した例も米国では報告されています。

「シブトラミン」は、1997年に肥満抑制薬として米国FDA(食品医薬品局)の認可を受けましたが、日本では医薬品として承認されてません。
副作用として血圧の上昇や心拍数増加などが報告されていて、特に心臓病患者は服用を避けたほうがよいとされています。

米国でもヨーロッパでも日本でも…

米国内においては、認可されてから2003年8月までの間に54件の死亡例が報告されているそうです。
2005年8月、米国FDAは「シブトラミン」の使用停止に関する消費者団体の請願書に対して、その使用に細心の注意を呼びかけ、安全性を監視することによって、引き続き医薬品として承認していくことを公表しました。

日本では、エーザイによって2007年に医薬品製造販売承認が申請されましたが、2009年9月26日に却下されました。

重篤な健康被害がいくつも報告されるに至り、2010年には米国・ヨーロッパにおいても販売が中止されることとなりました。

なぜ、日本で入手できるのか…

個人輸入や輸入代行で購入してる方もいらっしゃるようですが、先日摘発された例は、日本に住むベトナム人コミュニティの間で、ベトナムで製造された「やせるゼリー」の商品がマルチ商法のように取り引きされ、SNSなどを通じて日本人の手に渡っていったようです。

大阪府警が事件捜査で押収したゼリー=2023年1月18日、朝日新聞サイトより

具体的な容疑は、「シブトラミン」などの医薬品成分が含まれた、この商品を930本、販売目的で所持した「医薬品医療機器法違反」の疑いだそうです。

「ラクしてやせたい」とか「どうしてもやせられないから」とか、動機はさまざまでしょうけど、いずれにせよ、カラダを壊してしまったら何にもなりません。
死なないまでも、低血糖発作を起こして意識障害で救急搬送されたり、激しい動悸や頭痛が突然襲ってきたり、「慣れるまで時間がかかる」と言われ、無理して飲み続けた結果、ますます体調を悪化させたり…。泣き寝入りしたり、明るみにならないことも山ほどあるでしょう。ニュースなどでみんなが知り得る健康被害は、「氷山の一角」に過ぎないはずです。

本当に心から気をつけてほしいと思います。

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