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『スモールワールズ』 身近でありつつも、綺麗で残酷な世界【読書感想文】

一穂ミチさんの『スモールワールズ』を読んだ。
一気に読んだ。
恐らく、トータル5時間もかからずに読めてしまった…


本屋でスモールワールズの前を何度も通り過ぎては手に取り、帯を見ては「本当?」って疑って。
3度目に出逢った時にやっと買う決心がついて、お持ち帰りしたんだ〜。

帯に書いてある、最終話に仕掛けられたもの。
それは紛れもなくホンモノだったし、なんなら、すべての章を読み終わったからこそ、胸にストンと落ちていく事実もあった。

1回読んでの個人的な感想…

綺麗に塗り固めているけれど、残酷な世界って身近にあるんだよな。って。


ままならない感情を押し殺して、生きてはみるものの食い違ってしまった歯車。
それに乗って、元に戻って。でも完全に元のまま戻ることはできなくて。

忘却と排除を繰り返しながら生きていく。

自分の思う通りの世界になんて、ならない。

同じ道を繰り返して、それを日常として生きていくしかない人たち。

どこからやり直したら良い?
なんて思うけれど、どこに戻っても結局同じ道を辿ってしまうかもしれないんだ。

小さな世界を同じ道筋を何度も回っている。もがいている。

bad endがわかっていても、どうか納得のいく終わりを迎えられますように。
同じ景色を見ることができますように。

ひとつひとつのお話の終わりが近づくにつれて、鳥肌が立ち、
1冊の終わりが近づくにつれて、苦しくて胸が痛くなる。
なんて窮屈な場所にいるんだろう。
所詮、水槽の中で飼われている熱帯魚にしかすぎない。
光のない場所では、全く輝くことなんてできないネオンテトラ。暗闇の中では、苔が生える一方で、そのまま朽ちていってしまうんだろうな…なんて。

世界中だれだって ほめあえば なかよしさ
みんな輪になり 手をつなごう 小さな世界
世界はせまい 世界は同じ
世界はまるい ただひとつ

『It's a small world』和訳歌詞

あぁ、こんなところにも小さな繋がりが。
なんて狭いんだろう。

みんな輪になって、やさしく手を繋いでいるはずなのに、どこか孤独で残酷で。
なんて小さな世界でもがいているんだろう。

勝手にそんな思いを抱いてしまった作品。


個人的に、『ピクニック』がすごく怖くてゾッとした。

わたしにも起こり得た話。

共感してしまった自分も恐ろしくて、ページをめくる手を止めることができなかった。

怖いのに、「なんで?」「どうして?」って思う気持ちが強くて、そして悲しくて…。

『誰も悪くない』なんて簡単な言葉で言えなかった。

きっと、この物語の終わり方が1番良い終わり方がなのかな?って錯覚させられてしまう。

わたしもまた、何かの暗示にかかってしまったような気持ちにさせられてしまった。


なんていうか。
綺麗でゾッとするお話は好きなんだけど。

最後に向けてぐぐぐ〜っと恐ろしさが増す『ピクニック』が特に逸脱だなって思った。

物語の終盤に向けて駆け足で進んでいって、最後の最後に、まぁるい着地点に話を置いていくような『花うた』も好き。

わたし的には、最終章の『式日』がまだ納得のいかない点があって…。
シューンって萎んでいく感じが不思議で、「まだ読み解いていない部分があるのかな?」って気持ちになった。

また最初に戻って、新しい気持ちで読んでみようかな。

あっという間に読める小説でした。
ありがとうございました。おやすみなさい。


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