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女雪と男雪

雪は、降る月によって女性の雪、男性の雪とその表情を変える。

11月の初雪から12月にかけての雪は、女性の雪だ。
ふわりふわりと舞い落ちる雪は、なにかこの街に住む人々に微笑み掛けてくれているようだ。
子供たちがはしゃいで外に駆け出せば、ニコニコと見守る母親のように。
時に、寂しげな男の肩に優しく舞い落ち、そっと癒してくれる。楽しげに着飾る女性には、連れだった友達のように楽しげに舞い落ちるのだ。

今年のクリスマスにも、聖母のように慈しみに満ちた雪が、子供たちを優しく包んでくれるはずだ。

12月の真夜中、遠い空から止めどなく舞い落ちる雪を見ていると、その静謐に吸い込まれそうになる。まさにサイレントナイトそのものだ。
本当に音が無いのだ。
その音の無い世界は、どこか女性が持つ神秘性を感じるし、慈愛に満ちている気がしたりする。

だが時に、12月にも大荒れの天候に見舞われることもある。そんな時は、さながらナーバスになった女性が、感情的にその時の怒りに任せて暴れているかのようだ。
少し理不尽に感じたりもする。
人は、怒らせちゃったかな…と少し距離を置き見守るだけ。

年が明けて、1月、2月の雪は男性だ。

それは、1月1日、元旦からガラリと変わる。
基本、荒れるにしても、穏やかにしても、お天気屋の不機嫌な男性の幼さや粗暴さが垣間見える。
年明けの吹雪は、大の男がイライラに任せ怒りを爆発させて暴れまくっている感じだ。それは、気持ちが収まるまで止むことはない。
人は、ただただジッと通り過ぎるのを待つしかない。
ただこの時期の機嫌がいい時の雪は、子供達にとっては最高の遊び相手だ。
光の中を舞う雪は、真夏の日差し以上にキラキラして、無邪気なくらいに明るい。澄んだ空気がどこまでも続いて行くようだ。

3月の雪は男性、女性が一緒にいる感じ。
その季節が終えようとする事に、駄々をこねるように吹き荒れる男雪。それをなだめるように女雪が優しく舞い落ちる。そんな女性の雪に諭されるようにして、少しづつ春を迎えて行くのだ。

その雪たちのキラキラと光る雪解け水は、どこまでも優しく、新しい季節の訪れをゆっくりと人々に知らせてくれるのだ。

まもなく女雪が静かに降り始めるだろう。

#エッセイ #雪 #冬 #男 #女 #詩 #クリスマス

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