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「ブルーピリオド」が刺さり過ぎて重傷を負った。

アニメ「ブルーピリオド」を見た。

作中の台詞や言葉に、感じたことを書きたいと思う。ストーリーそのものについては触れない。無菌室にしか住めないくらいネタバレが気になる人は、あとで読んでください。

ざっくり言うと、器用に生きてきた男子高校生が芸大合格を目指すというストーリー。

やりたいことに出会って、もがきながらもそれに向き合う姿が眩し過ぎて、食らった。

私は、これまで「やりたい」と言うより、「やるべき」で選んできたから。本当はやりたいことがあるのに我慢している、わけではない。やりたいことがないから、とりあえずやるべきことを選んできた。そのくせ、浪人し、親に学費や生活費を出してもらい、大学院まで卒業させてもらった。図々しい奴だな。

世間的な価値じゃなくて、あなたにとって価値があるものを知りたいんです。
第1話

小学生の頃、本を読むのが大好きだった。休み時間のたびに図書室に行って本を読んでいた。読みたい本を片っ端から読んで、図書室の本を読み尽くす勢いだった。

中学、高校時代は勉強と部活がそれなりに忙しく、ほとんど本を読まなくなった。

大学生になって、時間ができたので本を読もうと思い、図書館に行った。手に取った本は、賞を取った話題作、最近ドラマ化された作品、芸能人の作家デビュー作。
あれ?流行ってるからこの本読みたいのかな?
小学生の頃は表紙とタイトルだけで、読みたいか、読みたくないかすぐに判断できたのに。
私はもう自分で読みたい本を選べなくなっていた。

人気のジェラート屋さんに行って、注文する時、一緒にいた友達がインスタで"食べるべきジェラート"を調べていた。目の前においしそうなジェラートがたくさん並んでいるのに。

ハイブランドだから、良いものなのか?
トレンドだから、かわいいのか?
食べログの点数が高いから、おいしいのか?

クラフトビールが好きだ。
でも全然詳しくない。短い紹介文を読んで、パッケージがかわいいとか、それくらいの理由でビールを注文する時、自分が飲みたいものを飲んでいる。と思った。

好きなものを好きって言うのって怖いんだな。
第1話

思春期くらいから好きなものを他人に言えなくなった。大人になったら治るのかと思ったら、今も全然言えない。みんなの前で趣味を聞かれると困る。

ついこの間も、会社の同期50人くらいが参加するオンライン飲み会で、趣味の話題になった。仕方ないので当たり障りなく「youtube見たりNetflix見たりしてます!」と答えてしまった。実際見てはいるし。でも、そのあとおすすめの映画を聞かれて困った。だって本当は映画より読書とラジオが好きだし、人に勧められるほど詳しくない。

文章を書くのが好きなのも、noteにこうやって投稿し始めたことも、友達には言えない。自分が書いたnoteのリンクをTwitterに貼れる人はすごい。

好きなものを好きと言うのが怖いのは、特別な自分を演出していると思われるのが怖いから。本当に好きなものを好きな自分を笑われるのが怖いから。
もう大人なんだし、何を好きでも笑われることはないとわかっているのに。
きっと自分の中に、他人の好きを嘲笑する目がある。他人への視線が自分に刺さって身動きが取れないのだ。

俺の好きだけが自分を守ってくれるんじゃないのかな。
第3話

私には人生を賭けるほど好きなものがない。大好きだけど、趣味。

好きなことを仕事にしたり、好きなことに人生を捧げられる人が眩しい。

生活するために、できない可能性が低い仕事を選んで働いている。今のところやりがいは感じてないし、向いてるとは思わないけど、それで良いと思っている。忙し過ぎるということはないし、給料も今の働きに見合う程度にはもらっている。たぶんものすごく恵まれているのだろう。

仕事を辞めて、海外に行くことにした。
やりたいことができて、転職した。
いつかは起業したい。

そんな友達の話を聞いて、自分の生き方が不安になる時がある。

選択を迫られた時、やりたいことがないから、その時点でベターな方を選んできた。今までの選択を後悔したことは1度もない。
でも、それで本当に幸せになれる?と聞かれたとき、自信がなくて泣いてしまった。
ずっとリスクを取らない人生で幸せでい続けられるだろうか。今それなりに幸せだから欲張っているのだろうか。

好きなことに人生を捧げている人にとって、好きは両刃の剣。好きだから強い武器になるが、好きだからこそ傷つくこともあるだろう。
私にとっての好きは、日常生活では困らない程度の強度の盾かもしれない。日常の嫌なことから逃避させてくれる。
人生を戦っていく装備としてどちらがいいだろうか。

真面目さに価値があるのは義務教育までよ。(略)いい子でいることを評価してくれるのはそうだと楽な先生と親だけでしょ。
第7話

高校までずっと真面目ないい子だったと思う。中学校まではそれなりに成績優秀だった。真面目に勉強しているから、それなりの成績が取れるのだと信じていた。
高校は進学校に進み、成績は下がった。真面目に勉強しているつもりなのに、もっと優秀な人はいくらでもいた。私の方が真面目にやってるのに、と思うこともあったし、私よりも遥かに真面目な人もいた。
成績も勝てないし、真面目さでも勝てない。高校生活は、自分なりにできる限り真面目にやっている、という意地だけで乗り切った。その代償に自信と自己肯定感を失ったけど。

大学生になると、急に人を測るものさしが成績ではなく、フォロワーの数になった。みんな、思い思いのやりたいことを語り、仲間を見つけてそれを実現できる人が賞賛された。高校生活で自信と自己肯定感を失った私には、ハードな価値観。

待ってくれよ。高校まで1度も授業でやりたいことなんて聞かれなかったじゃん。試験問題で、あなたならどうしたいですか?なんて聞かれたことない。
就活になるとそんなことばかり聞かれる。志望動機、入社したら実現したいこと、将来なりたい自分像。

親や先生に「勉強しておいた方が選択肢が増える」と言われ、とりあえずがむしゃらに勉強してきたのに。そうしているうちに、やりたいことの見つけ方なんて思い出せなくなって、選択肢があっても選び方がわからなかった。

そうは言っても、他人や環境のせいにしても仕方ない。同じ教育を受けても、生き生きと就活をし、働いている人はいくらでもいるのだから。





刺さる言葉が多くて、つい自分のことを振り返って、考え過ぎて自傷行為みたいな文章になってしまった。私の好きは何なのか、考えることからリハビリをしていこうと思う。


私のような素人にも芸術の分かり方を教えてくれて、前向きな気持ちになれる物語でした。

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