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シリーズ:コロナと激動の消費者心理【4-6月期調査④】緊急事態宣言が「結婚」と「離婚」に与えた影響とは?

企画・製作 株式会社矢野経済研究所 未来企画室

このシリーズでは、WEBアンケート定点観測調査(年4回実施)をもとに、日本の消費者の消費・心理・生活がコロナ禍でどのように変化したのかについて、気になるトピックを調査ごとにお届けしています。

当シリーズ投稿の趣旨や出典元の消費者調査につきましては、初回の記事でご紹介しておりますのでご覧ください。

<シリーズ説明>

調査概要

緊急事態宣言が「結婚」と「離婚」に与えた影響とは?

「結婚」と「離婚」のそれぞれの実施率を調査した。下図は、全体の結果について示している。緊急事態宣言からどのような影響を受けたのかに注目してみていきたい。

結婚と離婚の実施率と実施の見通し【全体】(n=3600)

「結婚」に与えた影響


赤色で示した「結婚」の実施率は、昨年10-12月期に大きく増加した。この時期は、感染拡大の波も、緊急事態宣言もなかった時期であり、またGoToトラベルキャンペーンが実施されるなど、人々の外出が活発になった時期だ。この時期には、結婚式が比較的行いやすかったと考えられる。また、そもそも結婚式の実施は例年9,10月ごろが最も多い時期であり、その影響も大きいだろう。コロナが発生した春以降、結婚式を実施できなかった人々が、感染状況の合間を見計らって、この時期に一気に実施したのではないだろうか。そうして、結婚式が行いやすくなった時期に合わせ、結婚そのものの実施割合も大きく増加したものと考えられる。

 その後、1-3月期は実施率が低下、4-6月期はさらにその割合を低下させている。1-3月期、4-6月期はともに2回目と3回目の緊急事態宣言が出されていた時期であり、緊急事態宣言によって、結婚の実施率が低下する影響があることが推察される。緊急事態宣言中の結婚は、すぐに結婚式が実施できない状況であることや、その他の準備において、外出を伴う様々な活動が制限されることから、結婚を延期する人が増えるものとみられる。

 ただし、緊急事態宣言だけが、結婚の実施率低下の要因ではないことに注意が必要だ。1回目の緊急事態宣言の影響下にあった昨年4-6月期の実施率は0.50%、今回の4-6月期の実施率は0.39%となっており、1年前と比較して実施率が低下している。緊急事態宣言による外出等がしづらくなった影響は、昨年の4-6月期の方が強かったと考えられる。しかし、今回の方が、実施率が低下していることから、長期的な傾向として、実施率自体が低下してきていることも考えられる。これについてはさらに継続した調査が必要だ。

「離婚」に与えた影響

結婚と離婚の実施率と実施の見通し【全体】(n=3600)

 一方、青色で示した「離婚」の実施率は昨年、外出が活発になった10-12月期に低下し、それ以外の時期は、0.5%~0.6%程度で推移した。もともと離婚の実施は年度末の3月に突出して多くなる傾向にあるが、昨年については、4-6月期や7-9月期も、1-3月期と同程度となっている。この3つの時期は、特にコロナ禍による行動の制限や、生活の変化を強く感じた時期だ。この影響により、離婚の実施率が高くなったものとみられる。

 緊急事態宣言や感染拡大によって、夜の飲み会が減ったり、テレワークが普及したりして、在宅時間が長時間化した。これによって、夫婦で共有する時間が増加したために、これまで目をつむってこられた相手の欠点が浮き彫りになり、離婚へと踏み切るきっかけとなったと考えられる。単純に、夫婦の会話が増加することにより、売り言葉に買い言葉ではないが、どちらかが「離婚」を口にした瞬間、それが現実化するまでの時間が早まる影響もあっただろう。

 今回4-6月期調査では、離婚の実施率が0.19%と大幅に低下した。3回目の緊急事態宣言の影響下ではあったものの、昨年のどの期間よりも実施率が低下している。コロナ禍の影響による離婚については、その実施が今年1-3月期までにひとまず一巡したのだと考えられる。すなわち、今後、感染拡大や緊急事態宣言があったとしても、離婚の実施率への影響は、もうそれほど出てこないのではないだろうか。

 以上をまとめると、一般的に、緊急事態宣言や感染拡大は、外出制限の影響等を通じて、結婚の実施率を低下させ、離婚の実施率を上昇させる影響があったと考えられる。今後、結婚の実施率は、全体的な減少傾向が続き、離婚の実施率については、コロナ禍の影響がみられなくなっていくものとみられる。

出典:「コロナ禍の消費者心理・消費・生活を捉える定点調査2021」

※本シリーズの投稿内容はすべて執筆者の個人的な見解を示すものであり、執筆者が所属する団体等を代表する意見ではありません。また、投稿内容はいかなる投資を勧誘もしくは誘引するものではなく、また、一切の投資の助言あるいはその代替をするものではなく、また、資格を要する助言を行うものではありません。

今春、矢野経済研究所 未来企画室は新プロジェクトを始動しました。 『未来を数字に』をコンセプトに、独自の切り口で、今はまだ数値化されていない未来の価値や潜在価値などを、あれこれ数字で表現していきます。