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シリーズ:コロナと激動の消費者心理【7-9月期調査④】女性の転職率が上昇!コロナ禍が「転職」に与えた影響とは?

企画・製作 株式会社矢野経済研究所 未来企画室

このシリーズでは、WEBアンケート定点観測調査(年4回実施)をもとに、日本の消費者の消費・心理・生活がコロナ禍でどのように変化したのかについて、気になるトピックを調査ごとにお届けしています。

当シリーズ投稿の趣旨や出典元の消費者調査につきましては、初回の記事でご紹介しておりますのでご覧ください。

<シリーズ説明>

調査概要

コロナ禍の転職、男女別

「転職」の実施率を調査した。下図は、性別の結果を示している。コロナ禍が転職活動にどのような影響を与えたのかに注目したい。

転職(会社命令等の出向や転籍は除く)を実施した人の割合【性別】(n=3600)

男性は、昨年7-9月期に転職の実施率が2.3%と高くなっており、今年7-9月期の1.4%と比べても1.5倍以上の実施率だった。昨年4-6月期の実施率は今年も同じ値となっていることから、4-6月期に実施された転職については、コロナ禍が始まる以前から転職活動を開始し、計画されていたものが実施されたものと考えられる。したがって、7-9月期の急激な上昇は、コロナ禍を要因とする転職需要の高まりがあったと考えられる。対面接触を伴うサービス業やテレワークが難しい仕事などで、休廃業等の影響を受け、転職の必要に迫られた男性が多く転職したものとみられる。また、4-6月期に予定されていたものが、コロナ禍によって延期となり、7-9月期に実施がずれ込んだことも要因として考えられるだろう。

その後、男性の転職率の推移は1.5%-1.9%のレンジで推移し、比較的安定している。コロナ禍の影響を受けたのは、昨年7-9月期前後が特に顕著だったと考えられる。

一方、女性の転職率の推移は、今年に入ってからこれまでの推移からレベルが一段上がったように見える。昨年7-9月期に実施率が高まった傾向は男性と同じだが、その実施率は男性から約1ポイント低い。その後、今年に入り、1-3月期から4-6月期にかけて急激に上昇している。

なぜ女性の転職実施率は今年に入って上昇し始めたのか?

なぜ、女性の転職率は今年に入って急激に上昇し始めたのだろうか。そこには、昨年の10-12月期から今年1-3月期にかけての、「希望の喪失」があったと考えられる。

昨年の10-12月期はGoToキャンペーンなどが実施され、今のところコロナ禍で最も外出が活発となった時期だった。このとき、飲食店など、対面接触を伴うサービス業などでも営業が再開され、就業機会が大きく増加したと考えられる。こうしたサービス業では女性従業員の割合が高く、そのような女性の転職の必要性が薄れ、転職率が低下したものとみられる。しかしその後、感染拡大第3波と、それによる2回目の緊急事態宣言で、年末から年明けにかけ、こうした業種の営業は一段と制限されることとなってしまった。一度、コロナ禍は終わったという希望を胸に、就業を再開させたものの、再び裏切られる結果となってしまったのである。失意のままに、こうした職種での就業機会の再開がもはや見通せなくなったために、4-6月期にかけて転職が進んだのではないだろうか。

出典:「コロナ禍の消費者心理・消費・生活を捉える定点調査2021」

※本シリーズの投稿内容はすべて執筆者の個人的な見解を示すものであり、執筆者が所属する団体等を代表する意見ではありません。また、投稿内容はいかなる投資を勧誘もしくは誘引するものではなく、また、一切の投資の助言あるいはその代替をするものではなく、また、資格を要する助言を行うものではありません。

今春、矢野経済研究所 未来企画室は新プロジェクトを始動しました。 『未来を数字に』をコンセプトに、独自の切り口で、今はまだ数値化されていない未来の価値や潜在価値などを、あれこれ数字で表現していきます。