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シリーズ:コロナと激動の消費者心理【7-9月期調査①】感染拡大局面でも家計状況の改善は持続。一方幸福感は緊急事態宣言の延長で停滞

企画・製作 株式会社矢野経済研究所 未来企画室

このシリーズでは、WEBアンケート定点観測調査(年4回実施)をもとに、日本の消費者の消費・心理・生活がコロナ禍でどのように変化したのかについて、気になるトピックを調査ごとにお届けしています。

当シリーズ投稿の趣旨や出典元の消費者調査につきましては、初回の記事でご紹介しておりますのでご覧ください。

<シリーズ説明>

調査概要

感染拡大局面でも家計状況の改善は持続

四半期前(3か月前)と比較して、回答者自身が感じる幸福感と家計状況がどのように変化したかを、「改善した」「やや改善した」「変わらない」「やや悪化した」「悪化した」の5段階で質問し、幸福感と家計状況の動向指数(DI値)を算出した。下図は、その全体の結果を示したものである。

幸福感と家計状況DI【全体】(n=3600)

幸福感DIは前回4-6月期調査と同様の値となり、幸福感の改善には進展が見られない状況だ。一方、家計状況DI の改善は、今回7-9月期調査でも継続し、コロナ禍が始まって観測を開始して以来、最高値を再び更新した。家計状況の改善が続いている。

 今回の調査は、感染拡大第5波の拡大局面にあたる時期の実施となった。緊急事態宣言が延長、対象地域が拡大されるなど、感染拡大や医療体制の逼迫などへの危機感が高まる時期にあった。そのため、幸福感DIについては改善の進展がなかったとみられる。幸福感DIは、これまで、感染拡大局面で下方圧力を受けてきた。今回はさらに改善するポテンシャルがあったものの、感染拡大局面に際し、上昇が抑えられた格好だ。

一方、家計状況DIは順調な回復基調にある。今年1-3月期の2回目の緊急事態宣言による一時的な停滞はあったが、その後は今回にかけて着実に回復している。

前回の4-6月期や今回の7-9月期にも緊急事態宣言等、感染拡大防止のための措置は実施されていた。しかし、それらが家計状況の改善に与えた影響はほとんどなかったようだ。

原因は?

これには、感染拡大防止措置が実施されている状況にもかかわらず、人々の外出が増加し、日常の消費が回復していることが影響していると考えられる。消費の回復に伴い、労働需要も堅調となり、これまで回復が遅れていたサービス業などでも、就業機会の増加や所得の増加が生じ、経済の好循環が回り始めていると考えられる。

感染拡大の状況にかかわらず、家計状況DIが改善している背景には、こうした経済の堅調な回復が大きな影響を与えている。

しかし、これまでのように感染状況が悪化すれば経済状況も悪化するといった単純な関係性ではもはやなくなってしまっている。そのため、どういった消費がどのような心理から回復していくのか、感染状況に依らない視点からも注視していく必要がある。

 出典:「コロナ禍の消費者心理・消費・生活を捉える定点調査2021」

※本シリーズの投稿内容はすべて執筆者の個人的な見解を示すものであり、執筆者が所属する団体等を代表する意見ではありません。また、投稿内容はいかなる投資を勧誘もしくは誘引するものではなく、また、一切の投資の助言あるいはその代替をするものではなく、また、資格を要する助言を行うものではありません。


今春、矢野経済研究所 未来企画室は新プロジェクトを始動しました。 『未来を数字に』をコンセプトに、独自の切り口で、今はまだ数値化されていない未来の価値や潜在価値などを、あれこれ数字で表現していきます。