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シリーズ:コロナと激動の消費者心理【4-6月期調査③】3回目の緊急事態宣言が「ココロ」と「おサイフ」に与えた影響と、今後への期待

企画・製作 株式会社矢野経済研究所 未来企画室

このシリーズでは、WEBアンケート定点観測調査(年4回実施)をもとに、日本の消費者の消費・心理・生活がコロナ禍でどのように変化したのかについて、気になるトピックを調査ごとにお届けしています。

当シリーズ投稿の趣旨や出典元の消費者調査につきましては、初回の記事でご紹介しておりますのでご覧ください。

<シリーズ説明>

調査概要

3回目の緊急事態宣言が「ココロ」と「おサイフ」に与えた影響

四半期前(3か月前)と比較して、回答者自身が感じる幸福感と家計状況がどのように変化したかを、「改善した」「やや改善した」「変わらない」「やや悪化した」「悪化した」の5段階で質問し、幸福感と家計状況の動向指数(DI値)を算出した。下図は、その全体の結果を示したものである。

幸福感と家計状況DI【全体】(n=3600)

「幸福感」と「家計状況」ともに、昨年4-6月期からずっと、基準となる50の値を下回って推移している。幸福感と家計状況のどちらも、新型コロナウイルス感染症の発生以降、悪化傾向が続いていることを示している。そんな中、今回の4-6月期調査では、ともに大きく改善する傾向がみられた。まだ依然として50を下回っており、悪化傾向が続いていることには変わりないが、その程度が弱まってきている。さらなる改善に向けた兆しが見え始めているのだ。

 幸福感DIは今年1-3月期に、昨年7-9月期と同程度まで低下した。これは1-3月期に出された2回目の緊急事態宣言の影響によるものだ。緊急事態宣言が出され、外出やその他の人と接触を伴う活動が制限されることによって、人生の活力が失われ、幸福感が減退したものと考えられる。このとき、家計状況DIの低下は、1回目の緊急事態宣言が出された昨年4-6月期のころと比べると、かなり軽微な低下にとどまっている。2回目が家計状況に与えた影響は1回目に比べて随分と小さくなったのだ。したがって、幸福感の減退は、家計の困窮というよりも、人と会えないといった、心理的な側面からくる影響が特に強かったと考えられる。

 そして、今回調査の4-6月期は、3回目の緊急事態宣言が出されている状況下にもかかわらず、幸福感DIと家計状況DIがともに上昇する結果となった。2回目の緊急事態宣言の影響下にあった1-3月期と比較して、3回目の影響下にある今回の方が、幸福感も家計状況も、ともに回復傾向が強いということを示している。緊急事態宣言が与える、幸福感や家計状況への影響が、2回目より3回目のときの方が、「幾分マシになった」と感じているということである。

Withコロナの生活様式の定着

 ところで、本調査の他の項目では、今回の4-6月期、外出している時間や国内旅行の実施率は、1-3月期と比較しても、わずかな増加にとどまっているという結果となっている。すなわち、緊急事態宣言によって、外出等は依然として制限下にあったのだ。しかしそんな中で、人々は幸福感DIを改善させた。つまり、人々は外出が制限されるという抑圧を、それほど窮屈に感じなくなってきているのではないだろうか。まさにこれは、緊急事態宣言実施中の状況に、人々が慣れ始めてきている証と言えるだろう。Withコロナの生活様式が、ここにきてついに、定着してしまったのだ。

 既に3回目の緊急事態宣言が解除され、東京オリンピック・パラリンピックの開催まで残り約1か月となった。定着してしまったWithコロナの生活様式が、2019年以前の状態に戻るのか、それとも、このまま未来永劫続くのか、それは誰にもわからない。ただ一つ言えることは、今回、緊急事態宣言影響下であっても、幸福感と家計状況はともに、回復する傾向がみられたということである。したがって、今後第5波や4回目の緊急事態宣言があろうとも、これ以上のさらなる悪化は、考えづらいのではないだろうか。

 さらに、ワクチンの接種が想定よりも速いペースで進んでいる。最後は、ワクチン接種に対し、忌避感を覚える人々への対応が課題として残ることになるだろう。しかしそれでも、高齢者の接種率が高まるだけで、医療提供体制への安心感は格段に違ってくるだろう。

 そうした中で、外出への機運が高まり、withコロナの生活様式を抜け出せる日が、この夏、訪れるかもしれない。昨年4-6月期以降、悪化傾向が続いている幸福感も家計状況もともに、7-9月期以降、更なる回復が視野に入ってくるだろう。この回復期待の中で、しっかりとその兆しを見失わないよう、調査を継続していきたい。

出典:「コロナ禍の消費者心理・消費・生活を捉える定点調査2021」

※本シリーズの投稿内容はすべて執筆者の個人的な見解を示すものであり、執筆者が所属する団体等を代表する意見ではありません。また、投稿内容はいかなる投資を勧誘もしくは誘引するものではなく、また、一切の投資の助言あるいはその代替をするものではなく、また、資格を要する助言を行うものではありません。

今春、矢野経済研究所 未来企画室は新プロジェクトを始動しました。 『未来を数字に』をコンセプトに、独自の切り口で、今はまだ数値化されていない未来の価値や潜在価値などを、あれこれ数字で表現していきます。