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シリーズ:コロナと激動の消費者心理【1-3月期調査⑤】若者世代は金余り?

企画・製作 株式会社矢野経済研究所 未来企画室

このシリーズでは、WEBアンケート定点観測調査(年4回実施)をもとに、日本の消費者の消費・心理・生活がコロナ禍でどのように変化したのかについて、気になるトピックを調査ごとにお届けしています。

当シリーズ投稿の趣旨や出典元の消費者調査につきましては、初回の記事でご紹介しておりますのでご覧ください。

<シリーズ説明>

調査概要
世代区分

若者世代は金余り?

「貯蓄(金融商品への投資含む)に回すお金」の金額が、前の四半期(3か月前)と比較して最近どうなったかを、「増えた」「変わらない」「減った」の3段階で調査し、DI値を計算した。DI値は基準となる50のとき、「増えた」と「減った」の割合が拮抗しており、50を上回ると、「増えた」が優勢に、50を下回ると「減った」が優勢であることを示す。下図は世代別の結果を示している。

貯蓄(金融商品への投資含む)に回すお金(DI値)【世代別】(n=3600)

1-3月期の「貯蓄(金融商品への投資含む)に回すお金」のDI値は、ゆとり世代とプレッシャー世代の若年2世代のみ、50ポイントを上回った。貯蓄に回すお金がこの2世代で全体的に、増加傾向にあることを示している。プレッシャー世代は今回、1-3月期に50ポイントを上回り、それまでの減少傾向から、増加傾向へと反転した。ゆとり世代は、2021年の7-9月期に増加傾向に反転し、それ以来一貫して増加傾向を強めている。一方、ポスト団塊ジュニア世代以上の世代では、団塊ジュニア世代以外ではDI値が低下し、依然として50ポイントを下回り続けており、減少傾向だ。

プレッシャー世代の貯蓄増加へ反転した原因は?

なぜ、今回のプレッシャー世代では、貯蓄に回す額、すなわち、剰余資金が増加傾向に転じたのだろうか。剰余資金は、収入が増加し、支出が減少する場合に増える。まず初めに、コロナ禍で減少を強いられていた収入が、景気回復に伴って全体的に回復してきていることが原因として考えられる。輸出系の企業では、特に決算もよく、その可能性は高い。次に、支出が減少したことが大きな要因となっていると考えられる。若年2世代は外出が少なくなった時期に、外出に伴う飲食費や服飾費等が減少するため、剰余資金が生まれやすい構造になっていると考えられる。一方で、使えなくなったお金を、家電や家具などのいわゆる巣ごもり消費に回していたことも考えられる。今回のプレッシャー世代では、この巣ごもり需要が一回りし、もはや家中で消費できる場面がなくなったところに、第6波が到来し、外食などの外出に伴う支出が減少したことで、剰余資金が増加したと考えられる。

若者の余剰資金が生まれやすい傾向

もともと若年世代は単身者も多く、貯蓄がたまりやすい傾向にあるといえる。コロナ禍の影響で、減少の影響を受けていた若者の貯蓄額が、直近で増加傾向に転じた。若者向けのビジネスにおいては、朗報かもしれない。

出典:「コロナ禍の消費者心理・消費・生活を捉える定点調査2021」

※本シリーズの投稿内容はすべて執筆者の個人的な見解を示すものであり、執筆者が所属する団体等を代表する意見ではありません。また、投稿内容はいかなる投資を勧誘もしくは誘引するものではなく、また、一切の投資の助言あるいはその代替をするものではなく、また、資格を要する助言を行うものではありません。

今春、矢野経済研究所 未来企画室は新プロジェクトを始動しました。 『未来を数字に』をコンセプトに、独自の切り口で、今はまだ数値化されていない未来の価値や潜在価値などを、あれこれ数字で表現していきます。