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シリーズ:コロナと激動の消費者心理【4-6月期調査⑥】コロナ禍で「守」の気持ちを高めた世代と、そうでない世代の境目はどこに?

企画・製作 株式会社矢野経済研究所 未来企画室

このシリーズでは、WEBアンケート定点観測調査(年4回実施)をもとに、日本の消費者の消費・心理・生活がコロナ禍でどのように変化したのかについて、気になるトピックを調査ごとにお届けしています。

当シリーズ投稿の趣旨や出典元の消費者調査につきましては、初回の記事でご紹介しておりますのでご覧ください。

<シリーズ説明>

調査概要
世代区分

コロナ禍で「守」の気持ちを高めた世代

下記の各「守」系の気持ちについて、四半期前(3か月前)から強まった人の割合を調査した。各気持ちが強まった人の割合の平均値を、「守」系メンタルの強まりとして、その推移をまとめた。下図は世代別の結果を示している。

「守」系の気持ち
「守」系メンタルの強まり(系統平均値)【世代別】(n=3600)

「守」系のメンタルの強まりとは、その名の通り、「安心を求める気持ち」や「人とのつながりを求める気持ち」などの「防御的」な気持ちが強まった場合を示す。世代別に、コロナの感染状況が、この「守」系の気持ちの強まりに与えた影響をみていきたい。

 まず、全体的に高年齢層ほど、「守」系のメンタルが強まった人の割合が高く推移している。特にしらけ世代とバブル世代の割合が目立って高い。高年齢層ほど、コロナに感染した場合に重症化するリスクが高いとされており、感染状況に対し、「守」系のメンタルが強まる程度が大きかったのだろう。反対に、比較的リスクが低いとされる、ゆとり世代やプレッシャー世代の若年世代は、低く推移している。リスクが低いため、感染状況の拡大を受けても、直接的な影響を感じにくく、「守」系のメンタルの強まった人の割合が低くなったと考えられる。

 このように、感染状況に対して「守」系の気持ちが強まるか否かは、世代によって変化する。世代によって、感染拡大に対して感じる危機感の大きさが変わってくることに、応じているのだろう。では一体、感染状況に対する危機感が変化する境目は、どの世代の間なのだろうか。これについて、詳しく見ていく。

 1回目の緊急事態宣言が出された昨年4-6月期、しらけ世代とバブル世代が突出して割合が高くなり、また、その他若年世代も比較的高い値を示した。どの世代もその後、右肩下がりにその割合が低下している。コロナ禍という劇的な状況変化に直面して、4-6月期に「防御的」になる気持ちが大きく増加したと考えられる。その後徐々に低下しているのは、その状況に慣れていく過程を示しているとみられる。世代間の差は、この低下の過程に表れている。

 大別すると、低下の過程で割合が大きく上下に変動している、団塊ジュニア世代以上の高年3世代と、ほぼ一直線に割合が低下している、ポスト団塊ジュニア世代以下の若年3世代に分けられるように見える。

 高年世代については、1-3月期に割合が再び上昇していることが特徴的だ。2回目の緊急事態宣言が出されることにより、再び感染拡大の影響を懸念し、「守」系の気持ちが強まったとみられる。感染リスクに対し「守」の気持ちを強め、防御態勢をとる反応は、今後も変わらないものと考えられる。

 それに比べ、若年3世代は、時期が進むにつれ、どんどんとその割合を低下させている。2回目の緊急事態宣言が出された1-3月期は、ゆとり世代のみ、若干割合が増加しているが、プレッシャー世代とポスト団塊ジュニア世代は、減少の勢いをやや弱めただけだ。感染や感染後の重症化リスクに対しての危機感や恐怖といった感情が、徐々に薄まってきていることの表れだと捉えられる。これら世代にとっては、緊急事態宣言が出されても、「守」の気持ちを強めることはもはやないのかもしれない。

コロナ禍で「守」の気持ちを高めた世代とそうでない世代の境目

 ここで、高年3世代と、若年3世代の境目となる、団塊ジュニア世代とポスト団塊ジュニア世代の推移について着目したい。この二つの世代は、昨年の4-6月期や10-12月期には、ほとんど同じ割合を示しているのに対し、7-9月期や、今年の1-3月期以降に大きな差が開いている。7-9月期には、感染拡大の第2波があり、今年の1-3月期と4-6月期には、それぞれ緊急事態宣言の2回目と3回目があった。すなわち、団塊ジュニア世代はこうした感染状況に応じて「守」系の気持ちを再度強めているのに対し、ポスト団塊ジュニア世代は、勢い衰えず、その割合を低下させ続けている。したがって、感染状況に対する見方が異なるのは、やはり、この世代の間であるといえるだろう。

 ちなみに、ゆとり世代の推移についても、高年世代同様に、昨年7-9月期の第2波や、今年1-3月期の2回目の緊急事態宣言の影響を受け、割合の低下が下げ止まっていることが確認できる。ゆとり世代は、しらけ世代やバブル世代の子の世代にあたり、親世代の影響を受けた可能性が考えられる。また、報道などの情報の影響を受けやすいということも考えられるだろう。プレッシャー世代やポスト団塊ジュニア世代の先輩社会人と比較すれば、まだまだ社会経験に乏しく、自律した状況判断が比較的難しく、社会的な空気を尊重しがちである可能性がある、ということだ。ただし、最も割合が低いのはゆとり世代であり、最も感染拡大等の影響を受けていない事実は見過ごせない。

 出典:「コロナ禍の消費者心理・消費・生活を捉える定点調査2021」

※本シリーズの投稿内容はすべて執筆者の個人的な見解を示すものであり、執筆者が所属する団体等を代表する意見ではありません。また、投稿内容はいかなる投資を勧誘もしくは誘引するものではなく、また、一切の投資の助言あるいはその代替をするものではなく、また、資格を要する助言を行うものではありません。

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