寒い季節に聞きたいタイの音楽
こんにちはONONです。
私は昔モンゴルに在住してたことがあるのですが
モンゴルの厳しい寒さと環境に耐えてきたご褒美として
毎年長い休みが取れると暖かいタイに旅行していました。
そのせいかこの時期になると11月タイ全土で行われる
ロイクラトンとその時出会った友人達を思い出します。
ロイクラトンとは、タイ陰暦12月の満月の夜に開催される灯籠に願いを込めて川に流すタイの人々の間で古くから続いていた風習です。
色とりどりの花で飾った灯籠にロウソクを立てて願いと共に川に流すその風景は神秘的で神への信仰やその土地の風習、人々と川の深い関わりを表しています。
また地域によって灯籠の形も変わり最近日本でも有名な、
空に放つコムローイも幻想的でとても綺麗です。
そんなロイクラトンを見に行った時、出会った現地のレコードショップの友人が酔っ払った時に私に身の上話を語ってくれたことがありました。
彼の田舎は娯楽も少なく、夜になると真っ暗になるような外灯も少ない場所だったそうです。もちろん治安も悪く村には酒、ドラッグ、ギャンブルが蔓延していました。貧しい生活の中、彼にとっては音楽だけが唯一の救いだったそうです。
しかし村の人々は毎日の貧困生活の中、音楽に価値を見出してはいませんでした。
初めてバンコクに出た時彼が驚いたのは立ち並ぶ高層ビルやスカイトレインではなく、金と暴力とセックス以外に色々な物に価値があり
それぞれが尊重されていることでした。それが文化というものでした。
そう語る彼の言葉が後に私がタイの音楽や旅先の国に根付く文化に興味を持つことになるきっかけになりました。
私が所属しているオンラインサロン THE FUTURE CLUB 内でも「今日の一曲」としてサロンメンバーが曲を紹介してくれているのですが、その番外編として今回はタイの音楽を紹介しようと思います。
タイの音楽といえば日本ではタタヤンやパーミーやボディースラムなどの
ポップアーティストが有名ですが今回は少しマニアックな
モーラムシン(以後モーラム)、ルクトゥンを紹介したいと思います。
モーラム、ルクトゥンこれは日本でいう演歌のようなもので田舎の歌謡曲と思ってください。ルクトゥンがタイ全土、モーラムがイーサン(東北地方)という感じでモーラムはわかりやすく例えると日本で言うところの吉幾三みたいなものです。
クラシックなところで有名なのはダオバンドン、アンカナーン・クンチャイなどがいます。
また去年フジロックにも出演したDJ Maft Saiプロデュースの
PARADAISE BANGKOK Molam International Band
もモーラムにカテゴライズされます。
そのモーラムの中でもまず聞いていただきたいのが欧米人に人気のある
Charawan(チャラワン)です。
チャラワンとはタイに伝わる昔話に出てくる、人の姿に化ける女好きな巨大なワニの名前でグライトーンという村の英雄に退治される話です。この曲ではそれを軽快なギターのリズムに乗せて面白おかしく歌っています。
またチャラワンといえば、英国ロンドンで開催されるワールドビアアワードのペールエール部門で、金賞を受賞したチャラワン ペールエールという
プーケットのビールのモデルにもなっています。プーケットの本店では出来立てのクラフトビールが楽しめるので興味がある方は是非行ってみてください。
近年モーラムが進化して様々なジャンルと融合しています。
タイのHIPHOPアーティストといえば日本ではJuu & G. Jeeが有名でしょうか
そんなタイのHIPHOPもモーラムと融合しています。
モーラム×HIPHOP
แร็พอีสาน RAP ESANといいます。すべてパサー・イーサン(東北弁)でRAPしているのも特徴的でタイの縦笛(クルーイ)の音色がサリカ(鳥の名前)が飛び交う広大な田舎の情景を浮かび上がらせてくれます。
昔はモーラム=演歌なので必然的にアーティストの年齢層も高めでしたが近年海外でのモーラムの流行により若者のアーティストも出てきました。
モーラム×若者
その代表が、เต๊ะ ตระกูลตอ Tae Trakooltorです。伸びのある声に早口イーサン弁が特徴です。女の子のことを天使みたいだなんて言っちゃう所もたまりません。今年のタイのMost Popular Male Country Singerにも
選ばれるほど現地では人気のアーティストです。
最後にモーラム×テクノ×モジュラーシンセを紹介します。
今年7月にアルバムを出したばかりのプロデューサー兼ミュージシャンであるpistakunがモーラムにモジュラーシンセ、フィールドレコーディングを掛け合わせるという斬新な組み合わせでトラックを構築しています。タイの民主記念塔で今年の8月に行われたプレイも最高でした。
イーサンにはリアン(奢る)・タマチャー(自然)という言葉があります。
お金がなくても自然が食べさせてくれるという意味です。
そんな牧歌的な思想の中で生まれたモーラムシンという
音楽に触れると懐かしい感じと共に都市部に住む私たちはどこか意図的に自然から引き離されているのではないかとすら思ってしまいます。
今年のロイクラトンの時期に冒頭の友人が
「私達の命の裏には、誰かの命があり、死ぬかもしれないし殺すかもしれないという事がこんなにもあからさまになった時代だからこそ音楽によって心を救いたい」
と言っていました。
自粛ムードのタイで彼はどんな願いを込めて灯籠を流したのかはわかりませんが、音楽によって人々が救われる。音楽が溢れる。
そんな微笑みの国でまた友人達とお酒を飲み交わす日が来ることを
私は心待ちにしています。
いつかタイの他のジャンル(プレーン・プア・チーヴィ、サイヨー)
やモンゴルのホーミー、アフリカのGQOM、Amapiano、Singeli
などの他の国の音楽も機会がありましたら紹介したいと思います。
他にも記事を書いているのでよかったら見てください。
この記事を書いた人
ONON(オノン)♀
環境のお医者さんを目指す、自然環境・民族の研究者。
遊牧民の行動様式を調査しながら、モンゴルに3年在住してました。
現在、自由な生き方を模索中。
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