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フューチャーリテラシー :「可能性の未来」を読み解くために

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本マガジンでは、2022/12/12に出版した、『フューチャーリテラシー Futures Literacy :過去から未来へ,「可能性の未来」を読み解くために』についての情報を掲…
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書籍『フューチャーリテラシー 』関連情報リスト

Futures Literacy :過去から未来へ,「可能性の未来」を読み解くために 本マガジンは、2022年12月12日に出版を契機にリスタートいたしました。 書籍『フューチャーリテラシー Futures Literacy 過去から未来へ,「可能性の未来」を読み解くために』に関連する情報を掲載していきます。 【記事】1)『フューチャーリテラシー』出版記念トークイベント開催(12/20) 【読書のポイント】1月)宇宙・生命・脳の進化に見る、ネットワーク連鎖の入れ子構造

「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデル

 まず、「部分」があり、それらが相互に作用しあって「全体」の情報が作られ、それが再び「部分」に影響をあたえる。部分と全体との創発的な関係を通じて自在に変化しつつ、全体の秩序を形成してゆく。  今回は、「未来を読み解く」ために、筆者が使っている思考モデルである、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルを解説する。モデルの使い方については、別章にて紹介する。 ●「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルの概要◯構成要素とネットワーク特性 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」は、未来の物

アイデアを紡ぐアイデア・プロセッシング: シナリオ・物語編集

------------------------------------- アイデア・プロセッシング: -------------------------------------- Step1: 課題抽出・課題設定 Step2: 情報散策 ・情報散策 ・本の散策 ・本に意見を求める読書 Step3: グループ編集:情報の素材化、分類と階層化 Step4: シナリオ・物語編集 アイデア・プロセッシング用語解説: ・情報素材: 段落などのを単位とする文章で文節、区分けしたテキス

アイデアを紡ぐアイデア・プロセッシング:課題抽出と情報散策

 ここから、5回にわたって、アイデア・プロセッシング実施方法について解説する。 アイデア・プロセッシング: Step1: 課題抽出・課題設定 Step2: 情報散策 ・情報散策 ・本の散策 ・本に意見を求める読書 Step3: グループ編集、離合集散、分類と階層化 Step4: シナリオ・物語編集 アイデア・プロセッシング用語解説: ・ノート: ノートツール ・ページ: ノートツール上のページ、分類の単位 ・階層構造: アウトライン構造、分類を階層的に表示 ・情報素材: 

アイデアを生むためのアイデア・プロセッシング

 アイデア・プロセッシングは、「情報素材」からアイデアを得るための手続き、「脳の外化」であり、脳の外に記述したテキストやコンテキスト、構造を含めて脳の一部として連携し、思考をまとめるプロセス。  「脳」は「断片化された情報」と関連するものどうしを関係づけし、「意味ネットワーク」を構築する基本的な機構をもつ。このヒトエンジンの能力を活用して、情報を関連づけ、編集することにより「意味ネットワーク」を構築し、アイデアを整理する。このプロセスを通じて我々の脳は、情報間に関係とパターン

「ミクロ・マクロ・ネットワーク」で考えるトマトの未来

 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」は、未来のサービスや技術を読み解くときに「喩え」て考える際に利用するモデルだ。「トマト」への適用事例で使い方を概観する。  「トマト」生産は今後どのように変わっていくのだろうか、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」を使ったコンセプト発案の例を簡単に紹介する。アウトプットはサービス・コンセプトだ。 ●トマトは誰とどんな話しをしたいのか? 【ミクロなコミュニケーション】  トマトは誰と話しをしたいのか?  ・同じ畑の仲間のトマト  ・野菜たち

未来を読み解くための類推

 「類推」とは、「類似」にもとづく思考であり、知っていることを知らないことに「喩えて」考えることだ。それ以前には全く気づかれることのなかった構造を創発する認知メカニズムであり、創造的活動の源泉となる。 ●類推 類推を形式的に説明すると次のようになる。  そして、脳内での「類推」のプロセスは次のように進められる。  「類推」は、ヒトの生活のさまざまな場面で、経験を再利用することにより、新たな知識の獲得や発見、仮説の生成、物事の再吟味などにおいて、強力なパワーを持つメカニズ

●生物の実験場となったカンブリア爆発はなぜ起こったのか

 宇宙と地球と生命の相互作用が大量絶滅と突然変異のうねりをつくり、数十種だった大型の生物がいっきに1万種以上に広がる「カンブリア爆発」が起こった。 ●急激な生命進化の3つのパターン  急激な環境変化に伴う生命進化には3つのパターンがある[1]。  カンブリア紀直前の1.5億年間に3つのパターンのすべてが絡み合う急激な環境変化が微生物を襲った。 ●7~6億年前: 全球凍結と超大陸の分裂が引き金となる生命の大進化 ■全球凍結  銀河衝突による超新星爆発の影響で磁場が弱体化し

●脳誕生への道:微生物のコミュニティ

 38億年前、核のない単細胞の原核生物=細菌(古細菌、真正細菌)が誕生した。最も単純な生命である細菌はコロニーをつくり、細菌間のコミュニケーションにより協調して環境に適応しながら生存競争を生きのびたのだった。 ●細胞間での最初の情報交換=遺伝子交換 生命初のコミュニケーションは、細胞間での遺伝子の交換だ。細菌は、細胞分裂により増え続ける。細胞核が存在しないため、細菌間での遺伝子の交換が発生しやすく短期間に遺伝子が伝搬する。遺伝子の交換は、細菌の接合による交換だけでなく、死に

分子生成の連鎖が、循環する地球システムをつくった

 水のないドライな地球に降り注いだ大量のウェットな隕石がきっかけとなり、化学反応の連鎖がはじまる。分子生成の連鎖はやがて、循環するダイナミックな地球システムをつくってゆく。 ●ドライな岩石惑星「地球」と月の誕生 :45億5000万年前 大気も水ない鉄とケイ酸塩を主成分とするドライな岩石惑星「地球」が誕生、その直後の微惑星との衝突により月が生成される。鉄などが重力で沈み込み表面を固い地核で覆われるが、重力的に安定した均衡状態となり磁場は発生ていない。 ●ドライな地球にウェッ

産業革命はなぜ18世紀にイギリスで始まったのか【後編】: 情報ネットワーク・黒死病・イギリス

  領土の限界という【巨大な壁】の内側であがきながら、封建制度、重商主義を基盤とする交通ネットワークが商業ネットワークを、商業ネットワークが情報貨幣ネットワークを支え、初期の情報ネットワークが各ネットワークをつなぎ、相互作用しながら拡大して、産業革命を支える統合ネットワーク・プラットフォームを準備する。 ●【巨大な壁】の内側で広がる情報ネットワーク〇膨大な利益を生む錬金術、情報貨幣ネットワーク 異なる商品価値を仲介する必要から生み出された貨幣は、重商主義を経て交換を大規模化

産業革命はなぜ18世紀にイギリスで始まったのか:封建社会の壁と交通・経済のネットワーク

 上下水道や舗装道路など進んだ技術を利用していた古代ローマが産業革命を起こさず、18世紀のイギリスでなぜ産業革命という急激な変化が起こったのだろうか。  古代ローマや18世紀のヨーロッパ諸国においても奴隷などの安価な労働力を有する国々は、機械による自動化という発想すらなかった。一方、18世紀の世界の中心だったイギリスは「高賃金の労働者」と「低コストのエネルギー(石炭)」を保有していたため、蒸気機関などを使った機械による自動化のメリットがあり、後に産業革命と呼ばれる急激な発展

国家の形成に向けた、専門分業と集落間の生存競争

 ヒトはコミュニケーションによりつながり、分業して助け合い仕事を効率化するコミュニティ=分業ネットワークの形成を生存戦略とする。仕事が複雑化するにつれて分業が進み、コミュニケーションの技術と文化を編みだし、周囲の統合と専門分業のリズムを刻みながら巨大化してゆく。 ●家族社会の形成 :440万年前~ 無毛の顔と白目により表情をゆたかにして感情と情愛を交換するコミュニケーションにより、育児と採集を分業して助け合う家族を形成する。 ●草原への進出と集団防衛 :370万年前~ や

1万年前になぜ農耕民が誕生したのか

 小規模な狩猟採集民が農耕生活に移行し、人口を巨大化していったのは、気候変動などにより定住生活に誘われ、そこから抜け出せなくなった定住化と農耕の罠にはまったためだった。 ●気候変動と農耕コミュニティの形成 【豊かな狩猟採集民】 1万5000年前までのヒトは、0~20人程度の小集団で獲物を追って移動する狩猟採集により生活していた。最終氷期の1万4000年前頃、気候が湿潤になるにつれて、森がそばにあり海・河川・湖が近く天然の動植物が豊富な地域に定住し、周囲の獲物と植物を採集す