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「ミクロ・マクロ・ネットワーク」で考えるトマトの未来

 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」は、未来のサービスや技術を読み解くときに「喩え」て考える際に利用するモデルだ。「トマト」への適用事例で使い方を概観する。

 「トマト」生産は今後どのように変わっていくのだろうか、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」を使ったコンセプト発案の例を簡単に紹介する。アウトプットはサービス・コンセプトだ。


●トマトは誰とどんな話しをしたいのか?

トマトネットワーク

【ミクロなコミュニケーション】
 トマトは誰と話しをしたいのか?
 ・同じ畑の仲間のトマト
 ・野菜たち
 ・生産者、消費者
  - 生産者からの水・肥料やり、その時刻
 ・ドローン、ロボット

【どんな内容を話すのか?】
 n次元のつながり、時間軸、複数ネットワークを考慮する。
 ・トマトの健康状態: 害虫、病気、腐敗、傷、葉の色
 ・トマトの栄養状態: 硝酸イオン濃度、窒素栄養状態
 ・トマトのうま味指標: 糖度、糖酸比
 ・トマトの栄養素含有量: リコピン、グルタミン酸、リノール酸、ポリフェノール、他
 ・トマトから生産者へ: 寒い、苦しい、他
 
【トマトの置かれている環境】
 トマトのおかれている状況、周囲の環境。
 ・ビニールハウス内の環境:
  - 大気; 温度、湿度、炭酸ガス濃度、酸素濃度
  - 土壌の状態; 灌水、栄養、菌土
 ・ビニールハウス外の環境:
  - 天候、季節
  - 害虫、病気
 ・販売関連:
  - 販売ルート、ターゲット顧客
  - 全国のトマト生産量
  - 市場状況、経済状況、国内情勢、グローバル情勢

【マクロ:トマトが集まると】
 トマトのコミュニケーションから出現するものを俯瞰。

 ・トマトが植えられているビニールハウス
 ・生産者が管理する他のビニールハウス
 ・地域・全国のビニールハウス
 ・トマトがつくる国、経済、進化に「喩え」てみる

【メタ・ネットワーク】
 ・トマトの品質・特性のコミュニケーション
 ・トマトの育成ノウハウのネットワーク
 ・トマトの植付け、生産、宅配、調理家電、レシピ連携

 ・ビニールハウスのネットワーク
 ・トマトの品種群のネットワーク
 ・トマト生産地のネットワーク

【フィードバック・ループ、動的特性】
 ビニールハウス、生産者、消費者の動的な情報を集約して各々にフィードバックし、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」に動的に適応。
 最適な育成方法、出荷状況、品種改良のための情報共有、分析結果の共有によるノウハウ情報のフィードバック・ループを形成し、環境条件、顧客要望の変化に動的に適応。

【可塑性・学習】
 ビニールハウス内外の環境と育成方法、トマトの健康状態、栄養、うま味、栄養素、出荷状況のデータを収集、対応関係と課題を分析し、集約、共有する。

【技術的背景】
・使えそうな技術:
 - 通信装:WiFi、ブルートゥース、インターネット、携帯
 - マイクロコンピュータ: 各種スモールPCボード
・道具・機械(詳細な調査要):
 - 防雨、防湿、防寒
 - ビニールハウス管理システム
 - ドローン、カメラ搭載ロボット
 - AI、ビッグデータ分析ソフト
 - インターネットに接続された調理家電

【社会的背景】
・人口減少
・自動化コストが小規模農家には高額

●サービス・コンセプト例

 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルから導く、サービス・コンセプトを例示する。

1)生産管理自動化、遠隔管理(生産者向け)
 複数の生産者が集まり集中管理センターを設け、トマトのビニールハウスの状況変化をモニタして、リアルタイムに酸素濃度、二酸化炭素濃度、温度、湿度をコントロールする。
・調査要:トマトの健康状況をリアルタイムに検査する技術、遠隔コントロールできる環境条件

2)ロボット、ドローンにより観察、作業の自動化(生産者向け)
・ 規格化された栽培ロボットネットワークによるノウハウの共有、集団学習

3)ノウハウネットワーク(生産者や品種改良者向け)
 全国のビニールハウスの出荷履歴、トマトの品質(健康、品質、旨味、栄養素)などと連動して、最適な環境コントロール条件をフィードバック。生産者間で共有、分析した結果を共有する。
・出荷情報:製品品質のサンプリング調査・葉による品質調査、販売状況(価格、出荷数、など)

4)仮想的な生存競争の導入(品種改良者向け)
 品質や人気、購買力が高い「トマト」が生き残れるという仮想的な生存競争を設定し、生き残った「トマト」のグループのフィードバック・ループ、AI分析、品種改良の自動化

5)顧客とのコミュニケーション(顧客向け)
 顧客(個人・スーパー)の満足状況をモニタし、顧客毎に適当な「トマト」を提案、生産情報とともにおすすめ度をスマートフォンに表示

6)生産から調理までのワンストップ化
 トマト生産をロボット制御工場化し、植付け⇒生産⇒収穫・出荷⇒宅配⇒調理家電までの流れ、支払いをワンストップ化、ネットによるコントロールの他、顧客の好み(価格x品質)、調理のレシピなどのユーザ向けのノウハウもサポート。

7)プラットフォーム化⇒バーチャル化(顧客向け)
・バーチャル家庭菜園:
 遠隔で栽培するトマトを決め、栽培方法を相談・指定しながら育て、収穫する。自分では育てないが、育てた気分を味わいつつ、新鮮なトマトをゲット(購入)できる。
・ゲーム内収穫:
 ゲーム内で収穫すると実物が送付される。育てる過程すらバイパスして、ゲーム感覚で育てた気になって、トマトを収穫(購入)する。
・バーチャル販売:
 バーチャル世界で収穫したトマトを、バーチャルで取引して実際のトマトを販売する。

 「ミクロ・マクロ・ネットワーク」で考えるということは、情報の流れを明確にし、記憶・学習し、循環させて環境変化に動的に適応させるシステムを組む方法を考えるということだ。新しいサービス・コンセプトは、既存のネットワークをプラットフォームとして利用し、メタ・ネットワークを構築する方向に進んでいく。


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