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アートについて学生と語ったこと。

先週まで理学療法士養成校の学生さんが実習にきており、久しぶりに実習バイザーとして、実習指導にあたりました。

その中でアートについて話したことをが自分の中で少し腑に落ちたのでここに記録しておきます。

私の理学療法士として大切にしている言葉に「臨床とは適度な科学性とアートを許容するものである」というのがあります。

私の臨床の師匠である先生から頂いた言葉ですが、若いときはあまりその意味をわかっていませんでした。

今年もは瀬戸内国際芸術祭への参加など特別アートに触れることが多かった年だったこともあり、アートについて考えることが多かったように思います。

現代アートの本質は「現在の人間像について多角的に考えて、未来に向けて、さらなる可能性を持つ新たな人間像を求め、人間の概念を拡大することに挑戦する試み」であるとアート思考の著者、秋元 雄史 氏は言います。

もっと端的に言えば、新たな「価値観」の創出です。

医療はエビデンス(科学的根拠)を元に提供されますが、まだ人間のすべてがわかっているわけではないのでエビデンスには限界があります。

もちろんエビデンスは重要ですが、それだけでは目の前の患者さんを治すことができないのも事実です。

そこで必要になるのが、発想を飛躍させ考える「アート思考」であり、アイデアです。

つまり、アートは「凝り固まった価値観や考え方、生き方」から自由に逸脱するための手段であり、方法でもあるのです。

哲学者スピノザはこのように凝り固まった「モード」である受動的な生き方、それらを客観的に捉え、そこから逸脱することを「自由」だと定義しました。

理学療法の分野にも様々な宗派や分派があり、それらを深く学んでいくことで「凝り固まったモード」が作られていき、自由に発想することができなくなった人をたくさんみかけます。

一つのことを追求すればするほど「自由」がなくなるとは、技術職である私たちにとってなかなか歯がゆい問題でもありますが、1つとして同じ疾患に出会うことのない臨床医学の世界では多様性の理解が必須でもあります。

また、新しいエビデンスもこうした「自由な発想」から生まれることも真であり、その科学性と論理の逸脱といった両輪を回していくことが医学を発展させていくことなんだと思います。

ものや自然に関する捉え方、地球上さまざまある問題の捉え方、現代アートの作者は自分の感性でそれを表現し、多種多様な考え方や感覚を私たちに与えてくれます。

それによる「自分自身の価値観のゆらぎ」こそが自由になれるチャンスであり、発想を飛躍させる時間になるのだと思います。

学生にはもっとライトな形でこんな話をしていましたが、備忘録としてここに記録しておきたいと思います。

#日記  #備忘録 #アートの役割 #医学 #理学療法士 #リハビリテーション

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