本を読むこと。 ~ エンド オブ ライフ 理想的な死に方を考える ~
理想的な死に方とはなんだろう。
私は年齢の割に親しい人の死を目の当たりにして、それなりに自分の「エンド オブ ライフ」について考えている方だと思います。
私の祖父は私の運動会を見に来て、その後夕食をともにし、大好きなお酒をたらふく飲んで、酔って帰り、一人老人マンションの一室で倒れてそのまま逝きました。
家族からしたらさっきまで一緒に元気に過ごしていた人を突然失った悲しみはありましたが、誰にも迷惑をかけず、最後まで楽しい時間を過ごせた祖父にとっては幸せな死に方だったのではないかと思います。
母は祖母、叔父と同じ病気が見つかり、その病気が原因で先に亡くなった二人をみてきて自分の死に方がある程度わかっていました。
その母が選んだのは在宅医療で、延命は望まず、介護保険を使いながらできる限り一人での生活を維持して、私たちには最低限の介護(朝・夕食の支度、家事)だけをお願いしました。
自分のエンディングをどのように迎えるか、ちゃんと家族で話合い、納得して自分の死を受け入れ、そして逝きました。
誰もが自分の望んだように死を迎えることはできないと思いますが、そんな二人の死に方は私にとって非常に理想的であり、モデルとなるものでした。
ちょっと古いお話ですが、2021年、はじめて買った本はノンフィクションライターである佐々 涼子 著の「エンド・オブ・ライフ」でした。
これは在宅医療の現場取材で著者が見てきた多くの人達の生々しいエンディングの物語であり、命の閉じ方の教科書ともいえる本です。
著者はこの本の他にも東日本大震災を題材にした本を書いたり、多くの死の現場と真剣に向きあってきた人であまりにも生々しい現実を目の当たりにして著者自身も身体を壊している。
そんな著者が再び在宅医療の現場で死と向きあい、多くの患者やその家族から学んだのは「命の閉じ方」についてではなく「生き方」でした。
命の尽きるギリギリまで家族で潮干狩りをするという約束を果たした患者、大好きなディズニーランドに酸素をつけ、車椅子で回った家族。
私とそんなに歳の変わらない家族の物語に心が震え、涙が止まりません。
そこには確かに、どのように「死にたいか」ではなくどのように「生きたいか」が明確に示されています。
こちらの引用は本書の取材現場である訪問医療施設の院長の言葉で、本当にそのとおりだと思いました。
「エンド・オブ・ライフ」・・死について考えるということは自分の生き方を考えると同義語なのかもしれません。
死を決してタブーにしてはいけないこと、一日一日を自分らしく生きることの大切さを本書は教えてくれます。
2021年のノンフィクション大賞を受賞した作品にふさわしい、すばらしい本でした。
今回の紹介図書
佐々 涼子 「エンド・オブ・ライフ」
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