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子どもの人生は親の人生の一部ではない

僕が強烈に覚えている母の口癖は、前回の記事で紹介した「こうあるべき」という”べき論”や「あなたが心配だ」というもののほかに、「私の気持ちはどうなるの!」というものがある。

僕が、人生においてこうしたいとか、ああしたいとか、いろんな希望を言うよね。例えば、あの学校に行きたいとか、こういう仕事がしたいとか、そういう話。

そんな時に、母は自分が気に入らない道を僕が選択しようとしたときには、かならず鬼の形相で「私の気持ちはどうなるの!」と怒鳴りつけてきた。

この言葉からわかるように、僕の人生は彼女の人生の一部であると考えていたのだ。
僕は、彼女の気持ちを大切にして、忖度しながら生きていかなければいけない状況にあったということだ。

こういう親は世の中には結構多くて、子育てが自分の人生の集大成であるかのように思っている。

例えば、自分の仕事を子供に継がせようとしている人、子どもに自分が果たせなかった夢を託そうとする人、自分に自信がないからせめて子どもは自慢できる人間に育てようとする人など、そういう人は多いよね。

僕の母親は、まさしくそういう人であった。
自分の人生に満足がいっていなかった(と僕は思っている)その思いを、子育てにぶつけてくるような感じだった。

そう、うまくいかなかった自分の人生を、子育てでリベンジしようとしている。
そんな感じだったのだ。

職業に貴賎なしといいながら

僕の母親は、「職業に貴賎なし」といいながら、明らかに差別しているところがあった。

言葉と現実が一致していない。
こういう状態をダブルバインドといって、親の言行が一致しないので子どもはどうしていいのわからず、結局、親の顔色をうかがいなから自分の人生を決めていくということをせざるを得なくなる。

結局、自分が納得のいく職業であれば、そこに貴賎はなかったのだろうけれど、子どもがその範囲外に行くことは許さなかった。

もちろん、心配性なので、心配をしたくなかったというのもあるだろう。
それは親心としてはよくわかるのだけれど、それにしても、「私の気持ちはどうなるの!」という言葉は、結局、「私の気持ちを考えて行動しなさい。」と要求していることであって、それ以外の何ものでもない。

僕はそれに対して、「俺の気持ちはどうなるんだ!」と反抗してはいた。
しかし、母はキレると何をしでかすかわからないところもあったので、その意向を完全に無視して実力行使に出るようなことはできなかった。

それに、小さな子どものころに、母親の側につくと決めてしまったので、実力行使に出れば母親を苦しめることになると思い、できないという思いもあった。

そういう状態だったので、常に、母親の意向を気にしながら自分の将来を考えるということをするような癖がついてしまった。

母親の許容する範囲を出られないと思い込むようになった

こういうことが癖になっていたので、何をするにも母親の顔色をうかがうようになった。

僕は昭和生まれだから、まだまだ、長男が両親の面倒を見るのが当たり前だと思い込んでいた。

こんな母親の面倒を見なければいけなくなる僕の将来の嫁さんは本当に大変だろうなと思ったし、この母親とうまくやっていけるような人ではなければいけないと、漠然と思うようになっていた。

そう思うだけで、結婚に対して積極的にはなれなかった。

当然のことながら、進学も、就職も、母親がキレないようなものでなければいけないと考えるようになった。

そんな狭い世界観の中で、僕は若い頃を過ごしていたのだ。
そして、その範囲内で、精いっぱいの妥協を繰り返しながら、人生の選択を重ねてきたのだ。

母親の顔色を気にしすぎて、自分の気持ちときちんと向き合うことをしてこなかった。
それが、僕の人生を狂わせてしまったのだと思う。

子どもの人生は親の人生の一部ではない

人生は親のものではない。
子ども自身のものだ。

自分の人生を一生背負っていくのは自分自身であって親ではない。
自分の気持ちが納得する生き方をするべきなのだ。

親の意向を汲む必要なんてない。

もちろん、親に喜んでもらいたいと思う気持ちもわからなくはない。
もし、万が一、親が喜んでくれなくても、子どもの人生は子どものものであることには変わりはない。

自分の気持ちと向き合い、自分が納得する生き方とはどういう生き方なのか、ということを真剣に考える必要がある。

親は親で、子どもを自分の思った通りに育てようとしてはいけない。
親が考えなければいけないことは、子どもが生き生きと生きていくこと。

自分の価値観を押し付けることで、子どもが苦しむようであれば、それは本末転倒なのだ。
親の意向に反して子どもが歩き始めても、子どもの意向を尊重しなければいけない。
僕はそう考えている。

(つづく)





自分がうつ状態に陥って、そこから這い上がってくる過程で考えたことなどを書いています。自分の思考を記録しておくことと、同じような苦しみを抱えている人の参考になればうれしいです。フォローとスキと、できればサポートをよろしくお願いします!