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金が無くても食っていける

無職なのに、「お嬢さんとの結婚をお許しください。」と嫁さんの実家に挨拶に行って、「本人が決めることですから。」と言われたという話を書いた。

彼女の実家は、長野県の木島平村というところ。
長野県の北部に位置していて、あの野沢温泉村の隣になる。
冬は雪がたくさん降って、スキー場がある。
スキーブームだったころには、たくさんのスキー客がやってきたので、民宿を経営する人が多い。
嫁さんの実家も民宿を経営している。

山にたくさん降った雪が、冷たい雪解け水として豊富に流れてくるので、米を育てるにはとても適している場所で、農業を営む人も多い土地柄だ。

僕は、嫁さんと知り合うまでは木島平村というところは知らなかった。

というか、そもそも、東京生まれ東京育ちの僕にとって、農村で育った女性と知り合うということがそれまでなかったことだった。

東京生まれの僕にとっては、いい意味で木島平村は本当に何もない素晴らしいところで、特に、心が疲れ果てた僕にはとても癒される場所だった。

お義父さんの言葉に驚いた

東京から遠く離れているので、当然その日は泊めてもらうことになった。
それで、当然の流れで、お義父さんと一杯やりましょうという話になった。

場所柄、美味しい日本酒をコップに注いでしこたま飲んだ。

お義父さんは、普段は口数が少ない人だけど、お酒が入ると別人のようによくしゃべった。

その中で、お義父さんが何気なく発した言葉に、僕は深く考えされられることになった。

お義父さんは何と言ったのか。
僕が無職であることは話してあったので、それを思っての発言だったのだろう。

「まあ、食えなくなったら、うちに来ればいい。
ここは、金はなくても食い物はあるから。」

僕はこの言葉に深く考えされらたのだ。

食い物があれば食っていける

お義父さんは、「ここなら金はなくても食べ物があるから食っていける」と言っているのだ。

「そうか、金が無くても食い物があれば食っていけるのか。」
それは、都会で育った人間、サラリーマン家庭に育った人間には、まったくない発想だと思った。
そんなこと、考えたこともなかった。

食っていくためには金は絶対に必要で、食うために金を稼ぐしか方法がないと思い込んでいた。
だから、「金を稼ぐ=食う」だと思っていた。

でも、食うためには食い物が必要で、それを手に入れる手段として金が必要なだけであって、別の方法で食べ物を手に入れることができるなら、金は必要ないんだ。
つまり、必ずしも「金を稼ぐ」と「食う」はイコールじゃないということだ。

そうだよな、都会では食べ物を手に入れるために金が必要なんだけど、ここでは、食べ物を生産して、それを売って金に換えるんだもんな。
順番が逆なんだ!

食べ物を生産するって凄いことだな!
その凄さを思い知った。

こんな感覚は、東京にずっといたらわからなかった。
だって、食うために稼ぐのは常識だから。
東京では。

でも、違う感覚の人たちがいるんだよ。
常識が違う人たちがいるんだ。
常識なんて本当にいい加減なものだと、改めて感じた。

環境が人を育てる

お金よりも先に食べ物がある。
そういう場所で育ったから、そういう土地で生きてきたから、彼女の感覚は僕とは違ったのかもしれない。

無職なのに結婚する気になったり、会社を辞める時にも「飢え死にしなければいい」みたいなことを言ってみたり。
ずっと家でゴロゴロしていても、何も言わなかったり。

お義父さんにしてもそうだ。
僕が無職だってことをあまり気にしていないようだったのも、「うちに来ればいいじゃないかって」本気で思っていたんだと思う。
だから気にならなかったんだ。

実際、結婚してからも何度もうちに来ないかって誘われたし(笑)。

それに、本当に食材が豊富なんだよね。
特に野菜がすごい。
食べきれないくらい出てくるし、食べきるなんてことはないんだよね。

彼女の醸し出す、それまで出会った女性たちとの誰とも似ていないあの雰囲気は、この環境が育てたものだったのかもしれない。

お金に対する考え方が変わった

これをきっかけに、僕はお金に対する考え方が変わったような気がする。

金を稼ぐのは目的ではなくて手段だってこと。
もし、目的を達成するための手段としてお金が必要ない方法があるのであれば、お金は無くてもよい、ということなんだ。

にもかかわらず、生きていくためにはお金は絶対に必要である、というイメージを持っているのは、ちょっと違うような気がする。

もちろん、現実的にはお金は必要なんだけれども、お金の有る無しが幸せを左右したり、年収がその人の価値を測る物差しにはならない、と思うようになった。

一言でいうと、お金を絶対視しなくなったということだ。

(つづく)

自分がうつ状態に陥って、そこから這い上がってくる過程で考えたことなどを書いています。自分の思考を記録しておくことと、同じような苦しみを抱えている人の参考になればうれしいです。フォローとスキと、できればサポートをよろしくお願いします!