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しくじり人生のパイセンを連れてきた。 「ナナメの夕暮れ」 若林正恭

 幼稚園のお遊戯が嫌で嫌で仕方がなくて、図書室に隠れて本を読んで時間を潰してるような子供だった。
小学校で皆で声を揃えて「ありがとうございました」と言ったり、社会科見学をさせてくれた大人に向けて原稿用紙を広げてこれっぽっちも心のこもってないお礼の作文を書かされるのも読まされるのも嫌だった。代表に選ばれたくないと思った。選ばれてしまった。嫌々読んだ。
中学では文化祭のステージを1人だけ見に行かなかった。運動会の二人三脚を合わせることができなかった。
高校の寒中訓練という三日間行われる朝の長距離走ではスタートから全力ダッシュして大外からクラス単位でごぼう抜きして1人空気を読まずに先頭を走った。皆と並んで走るなんてまっぴらごめんだった。
大学でもある時期まで飲み会の誘いを断り1人家で鍋をしてTVを見ながら缶ビールを開けた。
社会人になってからも「何でこんな事しないといけないんだろう?」と同期とこれまでの人生を否定される研修を受けながら思ってしまった。朝6時(!)からの早朝ジョギングでは皆に並んで列を乱さないように走った。本当は高校時代のように自分のペースで先頭を走りたかった。
自分が感受性の鋭い人間だなどと言いたいのではない。
周りが鈍感だなどと言いたいのではない。
むしろ私が生き方をしくじっている、生き方下手な人間なのだ。


あなたの周りにもいなかっただろうか。
クラスで1人だけ浮いている人間が。
そいつは常に無表情か不機嫌な表情をしていて、
大体休み時間や昼休みは1人で行動していて、
飲み会や合コンでは一言もしゃべらず飲み食いしていて、
仲のいい友達となら普通に話せるが集団行動になると途端に無口になり非協力的で、
あるいは頑張って関わろうとして盛大にスベるタイプの人間だ。
バイト先で誰とも話さず、いつの間にか辞めちゃってるタイプの人間だ。私だ。
そして『めちゃイケ』という番組の「歌がへたな王座決定戦」という企画で、不機嫌な表情で棒立ちのまま本家のISSAの前でDA PUMPの曲を歌い切るという荒業をやってのけたオードリーの若林正恭さんのような人間だ。

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