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脳腫瘍と診断された話2

検査の結果、僕の左脳には腫瘍があることがほぼ決定した。

医者曰く、危険度はそこまで高くないものの、悪性腫瘍(グリオーマ)の可能性が高いとのことだった。
より詳しい検査をしないことには確定はできないが、現状のMRIの結果を見る限りはそこまで深刻なものではないらしい。グレードでいうとIIか悪くてもⅢだと…。

ちなみに脳腫瘍とはいわゆる脳の癌という立ち位置になるらしい。
ただ、他の癌とは違い、進行度(ステージ)ではなく悪性度(グレード)で分けられる。
グレードが低ければ、そのまま放置していても、症状すらでない場合もある。
逆に、一番最悪のグレードIVだったときは、余命は一年半とかなり短い…。

いや、一年半て。ドラマか!

先生の話を聞きながら心の中でつっこんだ。
つっこめるくらいなのだから、精神的にはまだ余裕はあるようだ。
もしくは、ただの現実逃避だったのかもしれない。


とりあえず、一番ヤバイやつではないだろう、という診断にホッとした。
しかしながら、今の病院でこのまま見ることはできないから…ということで、大学病院を紹介してもらうことになった。

ちなみにここまでで、初めて病院を訪れてから1ヶ月くらいだ。

危険な病気な割には、意外とまったり進んでいく。

それだけ、緊急性がないレベルの腫瘍なのだろうか?といい方向に考えることにする。

診察室を出て、会計までの間、再度グリオーマについて検索してみることにした。

調べると目に飛び込んで来るのは

「グリオーマ 余命」
「グリオーマ 命の危険」
「グリオーマ 助からない」

というもので、ここにきて焦りを感じる。
先生のノリは軽かったが、何だかんだでもう命のカウントダウンが始まってるんじゃないか?

会計を済ませ、奥さんにLINEを送る。
これまでのことは伝えていたので、内容はあっさりめ。脳腫瘍がほぼ確定という内容くらいだったが、書いていて心にくるものがあった。
今起きていることが現実であると認識し始めたからかもしれない。
その後、両親にも連絡した。


それから一週間後。

なかなか予約が取れないと噂されていた割に、あっさりと大学病院の予約を取ることができた。

ちなみに勧められたのは、国内でも脳腫瘍の手術件数が多く、手術後の生存年数が長いJ病院だった。

数年前に医療ミスを起こしたり、最近では医者や看護師の大量退職など、頭痛外来の先生自身も「黒い噂の絶えない病院」と言っていたが、それでも今なお、脳腫瘍に関しては世界的に見てトップクラスとのこと。
先生の腕も確かだし、手術の機材も整っている。

いろいろ考えはしたが、気に入らなければ別の病院も紹介できるという言葉に勇気づけられ、まずはJ病院でみてもらうことにした。


6月上旬。初めてJ病院を訪れて持った感想は、駅前に飲食店がほぼないということと、建物がデカイということだった。
道を挟んで病院が存在している。さらには、コロナ禍というのに、人も多い。
もしコロナ禍でなければいったいどれくらいの人で溢れていたのだろうか。

受付で頭痛の病院でもらった紹介状と、今までのMRIのデータなどを渡してしばらく待つ。

すると、それらをまとめたファイルを渡されて、今度は上の階の脳神経外科へ行き、再度受付をするように言われる。

ゲームのクエストみたいだな、と思った。

脳神経外科の待合所でまた暫く待つと、急に名前を呼ばれた。
先にモニターで自分の番号が表示される仕組みと聞かされていたので、少し慌てた。

診察室に入ると、紹介してもらった先生ではない、若い先生がいた。
どうやらここでは、本命の先生に会う前に症状などの問診をするようだ。
慢性的な頭痛であることと、数年前のMRIでは腫瘍はなかったということを伝えた。


数年前のMRI…。


そう、僕にとって、今回がはじめてのMRIではなかった。

人生2度目だ。

というのも、数年前、僕は突発的な顔面麻痺を引き起こした。
左側の顔の筋肉がうまく動かなくなったのだ。
口を閉じようとしても隙間が開いてしまい、飲み物などをこぼしたりもした。

口を閉じて、ほっぺをぷうっと膨らませることが出来なくなった、と言えばイメージが沸くだろうか。

幸い、病院で出された薬を飲むことで、一週間ほどで回復したが、そのとき念のためにということで、MRIを撮っていたのだ。

そして当時の担当医からは、MRIでは脳に異常は見当たらなかった、と言われていた。

この出来事が、良くも悪くも今回の腫瘍に大きくかかわることになる。

もし、数年前に腫瘍がなかったとしたら、今回見つかった腫瘍はこの数年間で出現したことになる。

今の大きさが21㎜程度。

前回の検査後にすぐ出来たのか、ここ最近出来たのかで話は変わるが、少なくともある程度の成長速度で大きくなっていっていることだけは確かだ。

つまり、数年前のMRIで腫瘍がなかったという事実は、その間にで腫瘍が出来たという事実に結び付くことになるのだ。


ここで、一般的な脳腫瘍について説明しておこう。

脳腫瘍とはいわゆる、脳の癌だ。

しかし、脳腫瘍は普通の癌とは違い、進行度ではなく悪性度でランク付けされる。

癌がステージなのに対して、脳腫瘍はグレードだ。

グレードの数字が大きくなるにつれて、進行スピードが上がったり、再発しやすくなったり、転移しやすいということになる。

つまりは、助かる確率は下がり、余命も短くなる。
ちなみに一番低いのがグレード1でほとんどが良性腫瘍。
グレード2以上は悪性腫瘍で摘出する方向で話が進む。
一番悪いのがグレード4で余命は1年半となる。

そして、今回自分が疑われているのが神経膠腫(グリオーマ)というもので、悪性腫瘍の確率がとても高い腫瘍である。



さらに今回の自分の腫瘍は、脳の場所的に言語を左右する部分に近いらしい。
若い先生から、日常で言語に関して気になることはないかを聞かれる。

「言われてみればなんですが…」と、ここ数年、少しだけ吃りがちであることを伝える。

一通りの問診が終わり、また暫くロビーで待つと、今度は説明の通り、自分の番号がモニターに表示された。

先程とは違う部屋に入ると、そこには紹介してもらったS先生がいた。


そこでは、やはり脳腫瘍であるということと、今後の対応を決めるため、より詳しい検査をする必要があるということが説明された。

そして精密検査を行うため、僕は岐阜の病院へ行く事になった。


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