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ブッダは、女性でも悟ることができると説いたが、現代的解釈での男女平等を意味しない。【ブッダという男/清水俊史】より

古代インドの社会において、ブッダの男女観は一般的な価値観に沿っていた。ブッダが男女平等を唱えたとする見解は、一部の仏教学者による拡大解釈の結果だ。ブッダは女性も悟りを得られると説いたが、これは男女平等を意味するものではない。
仏教教団内では、女性は男性に従属する立場にあった。例えば、女性出家者は「八つの掟」と呼ばれる厳しい規則を守らなければならなかった。これらの掟は、女性に対して不利な条件を課している。一部の学者は、これらの規則がブッダの死後に弟子たちによって追加されたものと考えている。
しかし、ブッダが男女平等主義者だったとするのは、現代的な観点からの解釈であり、必ずしも客観的な見方ではない。ブッダの教えは、女性も悟りを得ることができるという点に留まり、現代的な男女平等の概念とは異なるものだった。

①女性出家者は、どれだけ長老であっても、すべての男性出家者を敬わなければならない。(同性ならば、出家した順に席次が決まる)②女性出家者は、男性出家者のいない場所で雨安居(うあんご/雨期の三カ月間、移動せずにじっとして暮らすこと)を過ごしてはならない。
③女性出家者は、半月ごとに男性出家者のもとで反省会を行い、教誠を請わねばならない。
④女性出家者は、雨安居が終わったら男性・女性の両僧団の両所においては批判会を行わねばならない。(男性出家者の場合は、男性僧団においてのみ批判会をすればよい)
⑤女性出家者が僧残罪(謹慎の罪が科せられる重罪を犯した場合、男性・女性の両僧団においてそれぞれ一四日間ずつの謹慎を経なければならない。(男性出家者の場合は、男性僧団において七日間の謹慎で済む)
⑥男性の場合は見習いから出家者に直接なれるが、女性の場合は、見習いから出家者に直接なることはできず、正学女と呼ばれる二年間の観察期間を経なければならず、しかも男性・女性の両僧団それぞれで受戒の儀式を受けなければならない。
⑦女性出家者は、いかなる場合においても男性出家者を罵倒したり非難したりしてはならない。
⑧女性出家者は、男性出家者の戒律違反を指摘できない。男性出家者は、女性出家者の戒律違反を指摘できる。


この『八つの掟』について植木雅俊は、仏滅後に弟子たちが「釈尊の言葉を装って男性中心の『八つの条件』を付加し」て、「女性たちに負い目をもたせた」と述べている(『仏教のなかの男女観』)。
しかし、この『八つの掟』を後代の付加であると決めつけるのは客観的ではなく、「ブッダは男女平等主義者であるに違いない」という先入観に基づいた善意解釈である。すでに見てきたように、ブッダは確かに女性でも悟ることができると説いたが、それは現代的な意味での男女平等を意味するのでは決してない。

参考資料

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