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料理をしながら妄想す⑥

「…静かね」
「…静かだね」

「越してきて何年?」
「4年?…5年かな?
 急にどうした?」

「すっかりこっちの生活に、
 慣れちゃったなあって」
「ああ。最初は猛反対してた。
 何もないとこになんでわざわざ、
 行かなきゃいけないのって…
 1ヶ月ぐらいずっと喧嘩したっけ」

「あの時はそう思ってたから…
 でも、今はもうそんなこと思ってないよ」
「ほんと?」

「ほんとだよ。ひどい」
「いや、まだ心のどこかで、
 後悔してるんじゃないかと思って」

「そんことないよ。
 私に必要なものは、
 ここに全部あるから」
「……」

「……」
「……そう?」

「……うん」
「……」

「……」
「……」

「……素敵」
「……?」

「……今日もキレイ」
「……ああ……青く輝いてるね」

「……」
「……」

「……ほんとよかった」
「……」

「コンビニ1号店ができて」
「そっち?」

「そうよ。だって今まで、
 必要なものは全部郵送でしょ」
「まあ確かに」

「それに届くのも1週間に1回だけ。
 今欲しいと思ったものが1週間後よ。
 届いた時にはすっかり熱も冷めてるわよ」
「仕方ないじゃないか。この環境だし」

「だから最初に言ったのよ。
 なんで火星なのって?」
「待って待って。
 もうその件は解決済みじゃなかった?」

「ごめん。苦労思い出したら…つい」
「こっちもごめん。苦労かけたね。
 でも、なんで付いてきてくれたの?」

「それは……」
「……それは?」

「火星から……」
「……」

「……ラブレターが届いたから」
「……」

「……」
「……地球、キレイだね」

「……ええ」
 

キリンジを聴き、
ラピュタパンを作りながら…そんなことを考える。


お疲れ様でした。