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キャッチ&後悔

会議室。
 
「あっ、佐藤くん」
「はい」
 
「前回の君の案は、素晴らしかった」
「ありがとうございます、部長」
 
「あれをすぐリリースしたら、
 翌月売上が3%アップだよ。
 あれは常人じょうじんには思いつかんよ。
 流石さすがだよ、佐藤くん」
「あ、ありがとうございます」
 
「よし。
 では会議始めようか。
 
 前回の案はそのまま継続けいぞくするとして、
 また新しい手法を、
 みんなに提案して欲しい。
 
 前回の案は市場で、
 いい動きをしてくれているが、
 そろそろ対策され始めてる。
 
 早めに次の手を打っておきたい。
 誰か意見のある者は?」
 
「…」 「…」 「…」 「…」
 
「ふぅ~。
 どうだ、佐藤くん?」
 
「はい。では私から。
 
 前回のアプリ広告を閉じるための、
 ☒ボタンをステータスバーで、
 半分隠すという手法
は、
 もう少し使えると思います。
 
 そしてそれを理解している人に対して、
 新たな手法を用いたいと思います」
「それはどんな?」
 
「ステータスバーで隠すのはそのままに、
 右上にはいつも通り、
 ☒ボタンを目立つように出します。

 そこで反対側の左上にも☒ボタンを、
 じんわりと浮かび上がらせ、
 目立たぬよう出そうと思います。
 
 実は正しい☒ボタンは、
 右ではなく左にあったという
 トラップです」
「では右の☒ボタンを押しても、
 通常画面には戻らないんだな?」
 
「はい。
 広告サイトへ飛ばします。
 
 恐らく消費者も何が起きたか、
 わからないはずです。
 
 多分、何回目か、
 もしくはネットで情報を得ないと、
 わからずそういう仕様なのだと、
 思う人も多いと思います」
「素晴らしい!!
 さすが佐藤くんだ」
 
「あっ、部長。
 もうひとついいですか?」
「佐藤くん、
 まだあるのかね?」
 
「はい。
 もうひとつ提案があります
「聞こう」
 
「もうひとつの提案は、
 消費者がCMを見てる間に、
 Wi-Fiワイファイを強制的に切ってしまう方法です。
 
 これにより広告を最低2回は、
 見てもらうことが出来ます」
 
ザワザワザワザワ
 
「消費者は自宅のWi-Fi環境、
 もしくはフリーWi-Fiの回線状況が
 悪い
と思うでしょう。
 
 もしそれを言及げんきゅうされても、
 OSのバージョンが古いからとか、
 アプリのアップデートの問題で、
 誤魔化ごまかせると思います」
「凄い!ほんとに素晴らしい!
 これは即採用しよう!
 みんなすぐに、
 佐藤くん中心にチームを組んで、
 実装を急いでもらいたい!
 
「はい」 「はい」 「はい」 「はい」
 
そしてプログラムは完成。
 
たった1週間でリリース公開された。
 
佐藤の自宅。
 
「パパ」
「何だい?」
 
「これ何回やっても、
 ポイントもらえないよ。
 ネット切れたって出て」
「あ~、これはね。
 切れたように見せて、
 切れてはいないんだよ

 
「え?そうなの?」
「この画面はね、
 切れたように思わせて、
 タップをすると回線が切れちゃうんだ。
 だからこの画面が出ても、
 しばらくそのままにしててごらん」
 
「うん……
 ……
 ……あっ!
 ☒ボタンが出てきた!
「そっちじゃない。
 左にもあるだろ?
 
「あっ!ほんとだ!
 全然、気付かなかった!」
「それを押すと、
 ポイントがもらえるよ」
 
「パパありがとう!
 さすがだねパパ!
 パパ何でも知ってるね!」
 
(すまない…息子よ。
 もうパパは引き返せない所まで、
 来てしまったみたいだ…。
 ごめんよ)


 このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。

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