部長の3つのスピーチ
結婚式場。
司会者。
「では続きまして、
新郎の直属の上司に当たる、
株式会社トライアンドエラー、
伊集院三太郎様、
よろしくお願いします」
「え~ご紹介に預かりました、
伊集院と申します。
甚だせいえつではございますが、
ご挨拶させて頂きます。
新郎の高橋君とは、
彼が入社して、
かれこれ5年ですかね。
私の在籍する部署に配属され、
共に終わりなき仕事に、
深夜遅くまで挑み続けました。
上司と部下というよりは、
いわば戦友のような存在ですね。
何度倒れても立ち上がり、
飲みすぎたエナジードリンクで、
ぶっ倒れるまで頑張ったのは、
いい思い出です。
彼はとてもタフで粘り強く、
相手を思いやれる人物です。
新婦のマミさんにはそんなところを、
見初められたのかと思います。
私事ですが、
うちは今年、結婚15年目になります。
そこで人生の先輩として、
気を付けなければいけない3か条を、
高橋君に伝えたいと思います。
人生には気を付けなければいけない、
3つの坂があります」
(ええ~!!
ド定番のやつじゃ~ん!)
(うわ~知ってるし。
本当にスピーチする人いたよ!)
(オチ知ってるし!
上り坂、下り坂、まさかでしょ)
「3つの坂とは…
………
………
日向坂、乃木坂、櫻坂ですね。
これは有名ですよね」
(?!) (?!) (!!)
「もしファンであるならば、
気を付けて下さい。
私は全部の箱推しだったんですけど、
後で妻にバレまして、
離婚一歩手前まで行きました。
全国すべてのライブを遠征し…
挙げ句にグッズを大量購入…。
買い過ぎたんです…はい。
なので私からのアドバイスは、
坂はせめてひとつに絞る。
これが結婚生活を、
長く続ける秘訣です」
(?!) (?!) (?!)
「あともうひとつありました。
人生には大切な3つの袋が」
(おいおい、またかよ!
またド定番で来たぞ!)
(お袋、給料袋、堪忍袋か?!)
(いや。
福袋…知恵袋とか、
言うんじゃねえの?)
「3つの袋のうちのひとつは、
レジ袋です」
(?!) (!!) (レジ袋?!)
「結婚すれば、
よく買い物を頼まれると思います。
そんな時、軽い気持ちで、
夜食にカップラーメンをひとつ、
買ったりしたらどうなるか?
何よ、これは?!
こんなの頼んでないでしょ?!
何で自分の分だけ買ってくるの?!
それは自腹だかね!
……。
こうなる前に、
家に帰る前にレジ袋から、
カップラーメンを抜き取ることを、
忘れないように。
レジ袋の中を確認。
これはとても大事なことです」
(ん?) (は?) (へ?)
「あとふたつめは…買い物袋です。
これは結婚すれば、
よく買い物を頼まれると…
あれ?
これさっきと同じ話だな。
ということでみっつめは…袋麺です」
(グダグダなんだけど)
(袋麺ってなんだ?)
(先が読めん!)
「この袋麺は命に関わります。
よく聞いて下さい。
もし妻が実家に帰ってしまった時、
この袋麺は何ものにも代えがたい、
仕事をしてくれます。
料理のできない私には、
神のような存在なのです。
何よりリーズナブル。
カップラーメンの3分の1の値段で、
お腹を満たしてくれます。
覚えておいて下さい、袋麺。
袋麺は財布と胃袋を助けてくれます。
以上です。
本日はおめでとうございました」
(あんたの話かい!)✕3