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本人の預金を家族が引き出しても「罪」には問われません

黄色いクレジットカード


本人に代わって預金を引き出しているご家族の方へ



こんにちは。

名古屋で社会保障制度の調査代行をしている社会福祉士の稲山です。

10km程度であれば移動手段は「自転車」です。





認知症や障害を持つ方の預金を家族が引き出してもいいのか?


結論は「罪には問われない」です。


実際に認知症や障害を持つ方の預金を家族が引き出しているということはよくあります。そこで家族の預金を引き出してもいいですか?と銀行に聞いてみると


「本人を代理する権限がないと、預金を引き出すことはできません」


という答えが返ってきました。


本人を代理する権限がないのに行うことを「無権代理」と言い、民法上、原則無効となります。しかし、この「無権代理」(民法)に罰則があるわけではありません。


銀行としては無権代理(民法)というルールがあるので、「本人を代理する権限がないと預金を引き出すことはできません」、という体制をとらざるをえないのです。





家族の預金を引き出しても「刑法」にも問われません。


弊所の相談者が銀行の窓口で、「家族でも勝手に本人の預金を引き出すと捕まります」と言われたことがあるそうですが、そんなことはありません。


本人を代理をする権限がない家族が、本人の預金を引き出しても刑法に問われることもありません。これは刑法244条の「親族相盗例(しんぞくそうとうれい)」を根拠にしています。


親族相盗例とは「一定の親族間で、特定の罪を犯した場合に、その刑が免除される」というものです。


※一定の親族とは配偶者、直系家族、同居の親族を指します。


※特定の罪には「窃盗罪(他人の口座から勝手にお金を引き出す)」も含まれます。





結論


銀行は「家族でも本人じゃなければ預金を引き出せません」と言うけれど、本人は認知症や障害を抱えていて自分でお金をおろせないし、特に罪に問われることもないので、家族が本人に代わってお金をおろしている、というのが現状です。





Q&A



Q
.銀行が言う「本人を代理する権限がないと、預金を引き出すことはできません」という、本人を代理する権限とはなんでしょうか?


A.「成年後見制度」です。



成年後見制度を利用すれば、銀行も納得して本人以外(後見人)の預金の引き出しに応じてくれます。しかし、成年後見制度は申し立ての手続きが複雑だったり、利用料が発生するなど、利用するにあたり多少の負担が発生します。現状家族が預金の引き出しができているのに、わざわざ手間と時間をかけて※成年後見制度の申込みをする方は多くありません。


※預金を引き出すだけのために、成年後見制度の申込みをする方は多くありません。認知症を患っていたり、障害をお持ちの方の生活を支えるための成年後見制度の申込みは、増加をしています。





Q
.「親族相盗例」があるなら家族間で罪を犯しても捕まらないの?


A.傷害罪など親族相盗例が適用されない犯罪もあります。


また、窃盗罪など親族相盗例が適用されるものもありますが、あくまで「刑法」においてであり、民法の「損害賠償請求」は別です。


民法に罰則はないため、それ自体を犯しても罪に問われることはありません。しかし、訴えられた場合は民法に則って裁かれることがあります。例えば、親の預金を勝手に引き出しても罪には問われませんが、それを知ったきょうだいから「勝手に引き出した」と訴えらることがあります。


介護費用や葬式費用など正当な理由があったとしても、本人の口座から預金を引き出す時はトラブルを避けるため、他の家族にはあらかじめ相談をしておいたほうがよいでしょう。





※今回の記事は、弊所と取引のある銀行と弁護士に確認の上、作成をしました。



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