盆とはこんなものかしら(日記)

 休日ダイヤの電車に乗る。
 と言ったって、普段乗っている電車(始業時間ぴったり五分前に職場の自席へ滑り込むための)の前と後ろが一本ずつ少ないのであって、私の生活ルーティンは変わらない。厳密には、僅かばかり早く家を出たのだけれど、僅かすぎたために、二本前の電車に乗れるほどではなかったのだ。雨も降っていたし。
 そう、雨。
 しとしと、しと、ひたり、と幾日か分の日中夜、ひっきりなし続いている真夏の雨である。
 およそ、入道雲からびたびたと降り注ぐ、バケツをひっくり返したような豪雨とは似つかない。少なくともこの町で、この朝の雨はさながら梅雨の様相だ。はたまた秋口の長雨。暑くて鬱陶しい、じりじりいのちを削る夏は突如、過ぎ去ってしまったのかしら。
 そんなことはない。きっと、そんなことはないのだろう。どうせまた数日もすれば、かつて台風だったものの気配が鳴りを潜めたならば、うだるような茹だるような、端から溶けてしまいそうな夏が暴力を振るうのだろう。暴力、ですって。それは私の、人間の勝手な感想であって、夏のほうにそんなつもりは毛頭ない。夏はただ夏というだけのことだ。冬将軍、だとか呼ぶけれど、意思なきはずのものにヒトめいた意思を見出したいのは人間の都合かもしれない。
 そんなことを考えているうち、いつもの電車が来る。
 ぐらぐら暑い夏に読むつもりで買った本はいつ、開こうか、やがて来る休日の如何を考えている。

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