白い女・黒い女-02(小説)

 今日子はさっきと反対側へ首をこてん、と倒して上目遣いに早央里を見つめてくる。なぜだか早央里は妙に――ぎくりとしたけれど、それがどうしてかを見つける前に今日子の目はストーブの火へと向いて、手をかざし続けることに切り替えたらしかった。二人きりは妙に気まずく、どうしていつもみたいに早く来ちゃったんだろう、この雪だもの、遅れても構わなかったのにと早央里は自分の習慣を恨んだ。
 四月の中旬、今日子は入部したての女子生徒で、なんだったら一年生の半数はまだ所属先を決めかねていた。新学期が始まってまだ三日か四日ほどの頃に、見学者の受付に早央里が立っていた日、立ち寄ったのが花井今日子だ。もともと見学するつもりで、というわけではなく、本当にふらりと通りがかりに、といったふうだった。彼女の通った鼻筋は光を照り返して透けて見え、今日子が見学者名簿へ名前を書き込む間、早央里はその白い肌を何気なく目でなぞったものだ。やけに、はかなげで透けるような子だった。なにが決め手になったものだか、翌日も訪れた今日子はその場で入部を決めて帰っていった。

(続く)

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