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ふたしき
2022年12月11日 17:04
私が異変に気付いたのは、夫の死体を運んでいるときだった。 月のない良い夜だった。 あたりは暗く、首から提げたペンダント式のライトが無ければ、まともに歩くこともできなかっただろう。十二月の夜気はどこまでも鋭く砥がれていて、夫の足首を掴む両手の感覚はとうに失われていた。 死体を引きずる私の進路上に現れたのは、青白く光る靄だった。ライトの光が届かない距離にもかかわらず、靄は神秘的な光を纏ってい